第37話:しぇめて、あと、にしぇんち! の、ひ!
人間が、森を抜けてこちら側に来た。
そのことだけで、大騒動になった。
わたしは即座に宿泊している屋敷に戻されて、外に出るのを禁止された。
パパは広いリビングで、沢山の人に指示を出したり、報告を聞いたりして忙しそうにしてる。
まあ、こんな状況に、納得できない我侭っ子が居るわけで。
「どちて! しょと、いきたい!」
椅子に座っているパパの足を押したり引いたり。びくともしなかったけど。
「わかっておくれ。今外に出ると、危ないんじゃよ」
「あのな、嬢ちゃん。今回は人間が森を抜けてきただけじゃなくて、嬢ちゃんを見られちまったんだ。人間にとって嬢ちゃんは聖女。取り返しにくるぞ」
「わかんないもん!」
やばいな。ソラちゃんは全然いまの状況を理解してないぞ。
強制的に主導権をわたしにするか。
「ウルガ族長! アヤネ、帰還しました!」
アヤネちゃんの声を聞いて、突進をかましそうなソラちゃんを全力で抑える。
アヤネちゃんはお仕事中だからね。もうちょっと待ってようね。
――あとであしょんでくれる?
いい子で待ってたらね。
「おう! 森の中はどうだった?」
「人族の9名の負傷者を発見。ポーションで治療の後、トレンティー様の助けをかりて、人族側の領地にポイしてきました」
「強硬偵察か……。ご苦労だった。あ~、アヤネ」
「次は見回りですか?」
「いや。嬢ちゃんと遊んでやってくれ。任務ではないぞ。おもいっきり遊んでやれ」
ウルガさんナイス! わかってるね!
「は~い! ソラちゃん、スネスネっ子は、捕まえてこちょぐりの刑だ~!」
「きゃぁぁ!」
いきなり始まった追いかけっこに、全力で逃亡開始!
ポテポテ、トテトテ。ガシ!
開始10秒で捕まりましたけどね。
「こちょこちょ~」
「きゃふ……あふ! あひゃん」
脇と脇腹を擽られて、身をよじる。
「あ~、アヤネ。嬢ちゃんが妙に色っぽいから、2階で大人しく遊んでくれ」
「ジェノ~。鼻血噴き出してないで、ソラリスを2階へ連れてけ~」
約1名。出血で死に掛けてる人が居た。
2階の部屋。
ここは元々、女の子の部屋だったらしい。
今では成人して、別の家に住んでいるらしいけど、内装はそのままだった。
「ピンク色のカーテンが可愛いですね、ソラ様」
「あい! べっども、みじゅいろで、かわいい!」
「ソラちゃん、そんなに気に入ったの?」
「もってかえる!」
カーテンにクルクルと体を巻きつかせる。
離さないよ! アピールだ!
「カーテンはいいとして、ベッドシーツは無理ですね……」
「どちて!」
「おねしょですぐ汚しちゃいますから」
「え? ソラちゃん、まだおねしょ……」
「もぉぉぉ! いっちゃダメ!」
ほんと、言わないで! 恥ずかしいから!
「ソラちゃんて、もしかして、成長遅い?」
と、言って、わたしの正面に立って、右手を頭の上にかざしてくる。
「あ、そうだ。サヤお姉ちゃん、柱に成長記録刻んでたわ」
こっちこっち、と、呼ばれて、その柱まで歩いていって、背を柱につけて立たされる。
頭の天辺で印をつけもらって見てみると、横線を引いてあって、5と書かれている遥か下に、今のわたしの線があった。
その差、10センチ……。
「まけちゃった」
いや、勝ち負けじゃないんだよ、ソラちゃん。
でも、これって、魔王の因子が影響してる?
「ソラ様! 今の身長を正確に測りましょう!」
と、ジェノさんが巻尺を取り出して、計ってくれた。
結果、98センチ。
うん。記録しておくことは大事だよね。
そのあとは、おままごとをしたり(元が男のわたしは心を無にしてやり過ごした)、絵本を読んだりして、楽しい一時を過ごした。
翌朝。
ジェノさんに寝起きですぐに身長を測られて。
「伸びてない! 大変です! 成長が止まってしまっています!」
「なに!? 俺の因子がもう全体に馴染んでしまったのか!」
「嬢ちゃん! 気をしっかりもて!」
「うわぁぁぁん!」
いや、おまえら落ち着け! 一晩で急激に身長伸びるほうがビックリだ!
ソラちゃんも泣き止んで! 大丈夫だから! せめてあと2センチ……100までは!
……あ~もう! わたしまで不安になっちゃうじゃない!
いい加減にしてよ! このダメ大人ズ!




