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第3話:始めておしゃべりした日

 牛男に抱きかかえられ、またあの質素な部屋に戻ってきた。

 おもらしをして濡れた布をまだ着ているから、きっと牛男の身体も濡れてしまっているだろう……オシッコで。

 すみません! 許してね!


「アタラシイノ、モッテクル」


 濡れた服……ていうか、布を剥ぎ取られて裸にされた。

 さすがに3歳児に羞恥心なんてないらしく、感情は穏やかだ。

 いや……穏やかすぎる。安心感すらあるようだ。

 恐らくだが……この女の子は、農家の子で、牛を飼っていた家庭で育って、牛が身近に居たんじゃないかなって思う。

 で……だ。この制御できない感情は、この女の子の残った心の一部ではないかな?

 3歳で俺がこの子の中で目覚めてしまったために、記憶やら意識が俺に上書きされたけど、感情だけは残ってしまった……。

 俺もその反動で、ほとんどの記憶が消えちゃってるけどな。

 思い出せるのは、男で少年と呼べる年齢だったってことくらいだ。


 まあ、今のところ仮説だが。




 牛さんに抱きかかえられて……あれ? いろいろ考えてたら精神年齢が下がってしまったようだ。

 牛さんって何だ、牛さんって。俺は子供か! ……いや、今は幼児だけども。

 ……いかんいかん。俺という存在が消えてしまう。

 まあ、とにかく、牛男に抱かれ、またあの扉から中に入る。

 すると、今回は階段の手前じゃなく、その遥か手前、部屋の中ほどで降ろされた。

 足元を見ていた視線を上げると、少し離れたところに魔王たちが居た。


 何故か全員、ヤンキー座りで。何があった?


「初めから屈んで怖くないよ作戦!」

「さすが魔王様! さすまお!」

「ほ~ら、怖くないぞ~」


 いや……あんたらの異様な存在がヤンキー座りって、恐怖度が増してるんですが?

 怖くないぞ~って、俺は知らない家に初めて連れて来られた子猫ですか?


「う……うわぁぁぁん!」


 ほらぁ! 感情がパニックだよ!


「うわぁぁん! うしさ~ん!」


 ぬお! 感情が暴走して勝手に牛男の脚にしがみついちゃったよ!


「モウ! モ……モウ!?」


 牛男もパニック状態だな。


「「「おま! なんでお前が最初に懐かれてるんだよ!」」」


 牛男、とんだトバッチリを受ける。

 ごめんね。


 ていうか、服を着せてくれたり(布を身体に巻いただけ)、優しく抱きかかえてくれたり(歩くのが遅かっただけ)、そこまでしてくれたら懐いちゃうよな。

 なにより、一番まともだし。




 しばらく牛男の脚にしがみついてたら、感情が落ち着いた……ていうか、慣れた。

 子供の順応力ってめちゃ高い。

 

「落ち着いたところで、大事な話があるんじゃが……ま、座ろうかの」

「しゅわ、る?」


 む? まともにしゃべれない。まさか、会話能力はそのまま3歳児か?


「うむ。床にこうやって、楽に直接座ればいいじゃろ」


 魔王が胡坐をかいて床にすわったので、俺も同じように座った。


「こりゃ! 女の子が股を開いて座っちゃダメでしょ! 丸見えじゃぞ!」


 骸骨のおっちゃんに注意されたが、布を巻いただけなんだから、違う座り方をしても大差がないと思う。

 まあ、閉じておいたけど。


「その……なんだ。恐らく、両親は死んで、君は両脚を無くして死にかけてたのでな、俺の細胞……因子を分け与えて、脚を再生して、命を救ったんじゃが」

「ふ~ん?」


 感情が穏やかに凪いでるわ~。何言ってるの? みたいな。子供の知能では難しい話だよな~……。

 俺は理解してるんだけど、感情が穏やかだからなんとも不思議な感じだな。


「でな。俺の因子が君の体に完全に馴染んだとき……成長が止まっちゃうかもしれないんだよ。それが数日後か、何年後かは分からんけど」


 ……何言ってんの?




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