第23話:きゅってちて、ぽいってちたら、ぼんってなった! ひ!
無詠唱といっても、実際はわたしが裏で詠唱してたんだけど、そんなこと説明できっこないから、大騒ぎになった。
お城の中にある、赤い絨毯が敷かれた大広間。
そこでみんなが集まって、わたしを取り囲む形になってた。
どうしてこうなったのか理解してないソラちゃんは、みんなの顔をキョロキョロと見る。
押し寄せている感情は、不安。
ごめんね。なんとか誤魔化すから。
――おこられる?
いや、凄いことしちゃったから、驚いてるだけだよ。
――う~。あ!
なんだ?
と、思ったら、ソラちゃんが近くに居た、直径30センチくらいのボールみたいなものを抱きかかえちゃった。
なんか、凄く柔らかいけど弾力があって、プニプニしてる。
あ、これ気持ちいい。抱きこごち最高。
「ぎゅぅぅぅ!」
『ちょ! あ! やめて! ワシの存在が浄化されちゃう!』
なんか、ボールが叫んだと思ったら、真っ二つに分裂した。
一回り小さくなったけど、未だ抱きかかえられているものと、床に落ちてプルプルしてるもの。
声をだしたのは、床に落ちてるほうだった。
「ちんじゃった?」
『死んではおらん! なんじゃ! そのでたらめな魔力は! 抱かれただけで魔力が流れてきて、破裂するところじゃったぞ!』
あ、分裂は破裂じゃないんですね? ていうか、スライム?
「スラじいよ。この子……ソラリスが無詠唱を使ったんじゃが」
『それで、魔力を測れて魔法に詳しいワシを呼んだのか?』
――じぃぃぃ。
プルプル振るえてしゃべるスライムを、ソラちゃんがじっと見ている。
そういえば、スライムを見るのは初めてだな。
可愛いって思ってるのかな?
「ぽんって、けって、いい?」
『やめて! 分体をあげるから! 抱っこしてていいから!』
すみません! うちのソラちゃんがご迷惑を!
ソラちゃん、このスライムさんはパパのお友達だから、蹴っちゃだめ!
『まあ、なんじゃ。無詠唱を使うところを見たいから、外に出ようかの』
「じゃな。ソラリス、抱っこしてあげよう」
「あい!」
右手でスラじいの分体を抱きしめたまま、左手だけを上げて抱っこしてのポーズを取る。
うん。お気に入りになったね。ぬいぐるみの代わりかな?
そして、場所はいつもの魔法をつかっているところ。
見るたびに景色が変わっているのは、きっと気のせい……。
「よし! 全力で結界を張るぞぉぉぉ! 耐えてみせるのじゃぞ!」
「かかか! 全魔力を周囲結界に!」
「わはは! 準備はよいぞ!」
『どうしておぬしらまで気合が入っているんじゃ?』
スラじいさんは今までのこと知らないですからね~。
でも、わたしが裏から威力調整するから大丈夫ですよ?
――ソラしゃんがこんど、まほう、うつ?
え? う~ん。そうだね。ソラちゃんの詠唱でもできるか、試してみようか?
――あい!
「じゃあ、ソラちゃん、あの木を狙って、火の魔法ね」
と、トレンティーさんが指差したところに木が生えてきた。
森の精霊女王のトレンティーさんだったら、ある程度の被害だったら修復できるから、ちょっと暴発しても問題ないね。
「いきましゅ」
――ひのけちんよ。
あれ? サ行ちゃんと言えてないけど、魔力は感じるね。裏で詠唱だと問題ないみたいだね。
――おろかなるものをやきつくしぇ!
「ふぁいあしょっと!」
手をかざして魔法名を叫ぶと、高圧縮されたような火の玉が飛んでいって、木に当って弾けて、巨大な燃え盛る竜巻になった。
ちょっと暴発どころじゃないねぇ!
「ぐぉぉぉぉ!」
「かかかぁぁぁ!」
「無理無理無理無理ぃぃぃ!」
『マジックバリア! マジックバリア! マジックバリア! だめだこりゃ!』
あの、ソラちゃん? いったい何したの?
――まりょく、ぶわってきたから、じぇんぶきゅってちて、ぽいってちた!
なるほど?
つまり、無調整濃縮還元100%でってことかな?
――ひゃくぱーちぇんと!
あ~うん。ソラちゃんに魔力コントロールを説明してなかった!
ていうか、練習させないとダメだ!
出来るようになるまでは、わたしが絶対に裏でしないと! 表はイヤダ!
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