第22話:いっちょに、やらかちた! の、ひ!
じ~、と、壷が乗った台座を見る。
いや、よく胸だけでも乗れたなって思った。
でも、これは頭に壷が当っていたら、壷が落ちて、割れて、怒られて、大泣きのパターンだったよなと。
やっぱりね、幼児の行動には注意が必要だな。
「ソラ様? 昨日みたいに」
「ちないよ」
――ちちゃだめよ。
おい、こら。
ジェノさんと手を繋いで歩く。
昨日、ソラちゃんが、1人は寂しいって言ったもんだから、わたしが起きる前に部屋に来てて、起きるまで寝顔を眺められてた。
それはもう、凄い笑顔で。
もうすぐ5歳児の貞操が危ないかもしれない。
朝ご飯を食べた後、ジェノさんとお城の外を散歩した。
最近できた池まで行くと、水面がキラキラと太陽の光を反射して輝いてた。
数日たってもいっさい濁ることなく、もの凄く透明度が高い。
魔法で作られた水だからかな? それとも、わたしの聖女としての魔力も影響してる?
――ソラしゃん、かんがえるの、しゅきなの?
あ、ごめん。体を動かさなくて退屈だったかな?
――えへへ。あたち、うごくのしゅき。そらしゃん、かんがえるのしゅき。
うん? まあね。2人で1人だから、それでちょうどいいかもね。
……ちょっとまって。動く。考える……ソラちゃんに主導権を任せて、わたしは中から詠唱……魔力コントロールしたらどうなるんだろ?
表に出ないでも、魔力は感じられるし、中なら詠唱でサ行がしゃちしゅしぇしょ、になることもないのでは?
ソラちゃん、ちょっと試したいから、協力してくれる?
――たのちいこと?
うん。多分。
――あい!
「ジェノしゃん。ここで、まほう、つかっていい?」
「え? 水をじっと見てたと思ったら、いきなり魔法ですか?」
「……だめ?」
右手の人差し指を唇に当てて、首を傾げてみる。
「かわいい! ……あ、えっと……いいですよ。的はあの木にしましょう」
「やった!」
――しゅごい。こんどまねちよ。
ソラしゃんは甘え上手のスキルをゲット!
まあ、それはいいとして。
ソラちゃん、わたしが心の中で詠唱するから、詠唱がおわったら撃ってみて。
――あい!
いくよ~。火の化身よ! (この時点で凄い魔力が集まってきてんだな)
愚かなるものを焼き尽くせ! (練りに使う魔力が多すぎ! ここであの威力になるのか! わたしの理性で抑えて)
「ふぁいあ、しょっと!」
手の平から撃ち出された火の玉が、的の木に当って少しだけ燃えた。
少し抑えすぎたけど、実験は成功かな? これで威力のコントロールもできるね。
――しゅごい!
「ソラ様!?」
「ふぁ!」
なんだ? ジェノさんが凄い顔で肩を掴んできたぞ?
――びっくりちた! なにもこわちてないよ?
だよね?
「4歳で無詠唱が出来たんですか? だとしたら、凄い才能が……いえ! 天才ですよ!」
あ! わたしたちは2人で魔法を使ったけど、他の人から見たら、無詠唱になるのか!
しかも、それをやったのは4歳児……。
いまさらだけど、やらかした?