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第2話:初めての粗相の日

 魔王の威圧感に晒されて、泣きわめく俺……幼女に慌てふためく魔王。

 とりあえず、俺に出来ることは……。


 すみません! 感情がご迷惑をおかけしております! 俺の意志ではないんです!


「このボケナスがぁぁぁ!」

「ぐほあ!」


 飛び込んできた竜人のような人の飛び膝蹴りが魔王の左頬に突き刺さる!


「幼児相手に怖いおっさんの雰囲気を撒き散らして見下ろせば泣くに決まっておるだろ!」


 その通りです! よかった! まともな人が居た!


「では、どうすればいいのだ?」

「まず、しゃがんで同じ目線に。そして、にっこりと笑いかけてやればいいのですよ!」


 魔王に負けず劣らずの巨体が膝を曲げて、にっこりと……。


「うわぁっぁぁぁん!」


 酷くなった! 

 いや、理屈はそれでいいんですけどね。顔が肉食恐竜みたいで怖いんですよ!


「かかか! 役に立たない人達ですね! ここは俺に任せてみなさい!」


 と、比較的小柄な、黒いフードローブに身を包んだ人が近づいてきた。

 ヒックヒックと、泣きすぎてまだ呼吸が整わないまま、この救世主さんの顔を見上げる……。

 あの……フードの部分からドクロが見えてるんですけど? あ~、ローブの袖から覗く手は骨ですか。

 全身が骨ですか? 痩せすぎですね?

 そう、この人は痩せすぎてるだけ。怖くない、怖くない。だから泣くな~。


「うわぁぁぁん!」


 ダメでした!


「「おま! 近づく前に泣かれてやんの!」」

「かかか! 慣れてる……こうやって泣かれることには慣れてる……」


 うん。世の中には幽霊が怖い人はいっぱい居る。

 だからそう落ち込まないで!


「俺の出番のようだな!」


 と、満を持して登場したのは、全身が毛に覆われた……狼男。

 あ、ちょっと待って……。


「このモフモフの毛で幼子の心を虜にしてやるぞ」


 ダメだ。恐怖が湧きあがってくる!


 じょぼぼ~。


 太腿から足首に伝う生暖かい湿り気。

 赤い絨毯に水溜りを作った。


 感情が限界を超えて、粗相をやらかしました!


「お前! 忘れたのか! この子はグレーウルフに殺されかけたんだぞ!」

「キャウ! 俺はグレーウルフじゃないぞ!」

「顔! もろにそうじゃないか!」

「何が毛の虜だ! 毛を全部剃ってやる!」


 なんか、追いかけっこが始まった。

 それが面白くて、感情も泣き止んでくれたが……。


 魔王がゆっくり近づいてきて、目の前でしゃがんで頭を撫でてきた。


「ごめ、しゃい……」

「いいんじゃよ。まだ怖い気持ちが落ち着いてなかったんじゃよな」

「う……ん」


 ここは素直に頷いておこう。


「いったん休憩にして、着替えて落ち着いてからまた来てくれるかな?」

「うん……」


 確かに、感情を落ち着かせるのは大事だ。

 だがしかし、俺はこう言いたい。


 あんたらがもう少し落ち着け!


 

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