第194話:にんじん、たべりゅ? の、ひ!
騎士さん達をモンスターの包囲から救出した翌日。
朝ご飯を食べた後、傷ついた騎士さん達を回復してあげる。
「ソラ様、まずはこの傷が深い方たちを回復してあげましょう」
「あい!」
傷が深いといっても、みんな腕とかに切り傷があるくらいだけど。
そんな人たちが固まっている集団に向かって、世界樹の枝の杖を翳し。
「むふ~!」
と、膝を少し屈めて力を溜めて、ぴょんっとジャンプ!
当然、ワンピースのスカートが翻って捲れ上がる。
「『えりあひーる!』」
着地と同時に魔法を唱えると、範囲に居た人たちの体が輝き傷が癒えて……なぜか硬直した後、鼻血を噴き出したり、失神して地に伏したり……。
傷を治す前よりも重症化しちゃった。
「ソラ様……。オムツ……下着が見えてしまいますので、私以外の前ではジャンプしちゃダメですよ? 私以外の前では!」
「しょっか~、でへへ」
ジェノさんの願望が駄々洩れなんですが? まあ、普通に考えて、女性が下着を簡単に晒してはダメだよね。
――なんかいも、ぴょんてちちゃだめっていってるでちょ!
うん、わたしが何回も言ってるよね!? どうしてそれなのにしちゃうのかな?
――しょっちのほうが、かわいいかりゃ!
ええ~? ソラちゃんはそんなことしなくても、凄く可愛いよ~。
――でへへ~! しょっかな~?
両腕を胸の前で交差させて、腰をクネクネ……。
「そ、そらしゃまぁぁぁ! おふぅ!」
ジェノさんが悶絶して失神。地に倒れビクビクと痙攣してる。
重傷者が増えちゃった。
そんなやり取りをしつつ、昼食の時間となって馬車の外にテーブルをセッティングして、お昼ご飯を並べて食べる。
目の前にあるハンバーグを握りしめたフォークで突き刺して、モグモグ食べる。
ナイフ? 使いませんよ。だって、最初からソラちゃんが食べやすいようにカットされてるからね。
マナーなんて、3歳児に強要するものじゃないだよ。
――もうしゅぐ、ななしゃい!
そう……でしたね。
周りのみんなは、ソラちゃんが7歳間近なんて思ってないだろうけどね。
「ソラ様! はい、あ~ん」
「あ~ん」
隣に座ったジェノさんが、フォークに刺さったハンバーグを差し出してきて、ソラちゃんは素直にそれを食べる。
「私の作ったハンバーグは美味しいですか?」
「おいち~!」
「ああ~! ソラ様の笑顔が見れて幸せです! では、こちらのニンジンも! あ~ん」
「……」
笑顔が絶望の顔になりましたね。
「あの~……」
さっきから少し離れて立っている天使が話しかけてくる。いや、待っててくれているのは分かってるんだけどね?
「そろそろよろしいか?」
「よろしいわけがないでしょ!? 私とソラ様のにゃんにゃんうふふタイムを邪魔しないでくれます?」
「……」
天使さん、しょんぼりしちゃった。
それを見たソラちゃん、フォークにニンジンを突き刺して。
「あ~ん」
天使さんに差し出した。
「ソラ様?! 私に! 私にあ~んしてください!」
「ジェノに怒られた天使を慰めてあげるとは、ソラリスはやさしいの~」
「ソラちゃんは最初から優しいわよね~!」
みんな騙されるな! ソラちゃんは嫌いなニンジンをされげなく回避しようとしているだけだぞ!