第19話:べんきょう、がんばる! の、ひ!
氷の塊は、3日たっても未だに存在していた。
といっても、徐々に溶け出して、今は半分くらいの大きさだけど。
その間、魔法を使うことも練習することも禁止されたけどね!
変わりに待っていたのは、ジェノさんによる『お勉強』だった。
わたしもね、ソラちゃんには、ちょっといろいろな知識が足りないかなって思ってたんだよね。
「ソラ様、いち、たす、に、は?」
「えっとね……」
両手の指が同時に立っていく。1本、2本、3本。
その両手をじっと見て、指の本数を数えて自身満々に。
「ろく!」
全部数えちゃダメだ! 数えるのは片手だけでいいんだよ!
「正解は3です。ていうか、前から思ってたんですけど、どうして両手でしちゃうんですか?」
「こっち、あたちの」
と、右手を上げた後、今度は左手を上げて。
「こっち、ソラしゃんの」
「え? どういうこと?」
混乱しちゃってるよ! て、そんなこと考えてたの?
わたしの分までしなくていいんだよ~。わたし達、2人で1人っていうのは内緒だからね。
――しぃぃぃ?
そうそう。
「ジェノしゃん、こっち、ないちょだって」
「え? え?」
言っちゃダメでしょ! 内緒になってないよ!
――べんきょう、いや! こうたい!
は? 別にいいけどさ。
わたしが表に出たんじゃ身につかないよ?
「ジェノしゃん、つ」
次の問題を出してって言おうとしたら、退屈、遊びたいって感情が溢れ出した。
その感情に抵抗も虚しく。
「つかれた! きゅうけいちよ!」
体が勝手にベッドへ飛び込んで、枕に顔を沈めて足をパタパタとしてしまう。
あれ? 今はわたしが主導権だよね?
これは……会話じゃなくて、強制感情支配!
遊びたいっていう感情が溢れ出してくる!
ここに来た当初も、この感情に振り回されてたな~。今では感情に自我があるけど。
「ソラリス。勉強は頑張ってるかの?」
「あい!」
パパだ! パパが部屋に来た! て、あれ? ベッドの上に居たはずが、いつの間にかジェノさんの正面に座ってるんですけど?
いつの間に、どうやって移動したの? て、もう主導権は終わりですか?
「グランゾ様。この子はさっきまで駄々をこねて」
「もぉぉぉ! いっちゃだめ!」
いや、ここで言わないでも、あとで報告されると思いますけど。
「ははは。じゃ~、ソラリス。いち、たす、には?」
「さん!」
「おお~! よくできたな! 正解じゃ!」
「えへへ」
頭を撫でられて、感情が喜びに包まれる。
いいところを見せられてよかったね~。
「その問題、ついさっき私が出して答えを教えたばかりですよ」
「そうなのか? じゃ~、に、たす、いちは?」
逆になっただけじゃん。
――ぎゃく?
さかさまってこと。
「わかった! んさ!」
答えをさかさまにしちゃダメ!
なんかね、感情ソラちゃんの将来が不安しかない……。