第188話:はたけ、かんしぇ~! の、ひ!
草抜きをした後は……て、抜いてないけど。今度は土を掘り返して、柔らかくしていくよ。
「ほりほり~」
木で作られた子供用のスコップで、土を掘っていく。
「ほり~ぽい! ほり~ぽい!」
スコップに乗った土を横に、ぽい! と積み上げて~。
……あれ? 一か所だけに集中してたら、耕すんじゃなくて、穴掘りになってませんか?
――パパは、ほるっていってたでちょ!
はい。確かに言ってました。
素直なソラちゃん、パパの言葉をそのままの意味で受け取っちゃった。
ソラちゃん、パパの様子は?
パパをちらっと見ると、凄くデレた顔でソラちゃんを見詰め、手に持ったスコップを動かしているけど、地面まで届いてないよ。
可愛いソラちゃんに見惚れて……親馬鹿か!? って、そうだったわ!
この2人での作業で、畑が出来上がるのは何年後だ?
ね~ね~、もうさ、魔法で花畑作っちゃおうよ。
――じぶんで、はたけちゅくって、きれいなおはな、しゃかしぇないとでちょ!
う、うん? 花畑は、手作業で作って花を咲かせないとってこと?
まあ、パパと一緒に花畑作りたいのは、わたしも分かるけどね。
現状、穴を掘っているだけとしか思えない訳ですよ。
パパなんて、デレた顔でスコップで空気を掘っているだけですよ?
「パパ? ちゅち、ほれてないよ?」
「お? おお!? ほんとじゃな~」
「もぉぉぉ、だめでちょ!」
「わははは! 怒られてもうた!」
「ふふふ~、おこっちゃった!」
ははは、ふふふ~……2人だけの空間に花が咲き誇ってるよ!
「しかし、これは夕食までには終わらんの~」
直径20センチの穴が出来ただけですもんね。
「ソラリスや、魔法で花畑を作っちゃうか?」
「あい! しょうちよ!」
ちょっと待てぇぇぇ! 手作業の話はどこに行った?!
――ごはんに、おくれりゅと、ジェノしゃんにおこられるでちょ!
……はい、そうですね。
てことで、地に手を着けて、魔法を……。
使おうと思ったら、3人組の冒険者さん達が近づいてきた。
ソラちゃん、急なことで人見知り発動。パパの後ろに隠れちゃう。
冒険者さん達は、パパの巨体にビビッて、少し震えてるけどね。
そんな冒険者パーティーのリーダーが、意を決して話しかけてきた。
「あの~、すみません。森の近くで死んでいるワイルドボアとかのモンスターは……」
「ソラリスと妖精が倒したものじゃな」
「素材回収はしないのですか? しないのなら回収させてほしいのですが……」
「必要ないものだし、別にいいぞ。ただし、討伐依頼の達成に利用しないこと。自分で倒してないのに、不正行為はいかんぞ? それと、素材を売ったお金は少しだけでも、孤児院などに寄付を」
「あたちと、ちょうぶちて、かったらね!」
パパの会話にかぶせちゃった! せっかく綺麗に纏まりかけてたのに!
――パパたちのおはなち、ながかったから!
……ヤキモチですね。
「勝負って、どうすれば?」
「はたけ、はやくちゅくるきょうしょう!」
「「「やりましょう!」」」
どうして冒険者さん達、そんなにやる気が高いんですか? ソラちゃんに魅了されちゃった?
リーダーの人は剣士。
剣を抜いて、地表に向けて剣技、ソードスラッシュを発動。
剣から飛び出した斬撃が、地面を爆ぜた。
2人目は大盾持ち。仲間を守る役目だ。
大盾の下部分を地に突き刺し、盾突進を発動。
突進で進んだ後の地面が掘り返された。
盾って、鍬だったか?
3人目は魔法使い。
杖を頭上に掲げ、ガイアシェイクというものを唱えて、地面に杖を振り下ろすと、剣士と大盾持ちによって凸凹になった地面が波打って、地表が均等に均されていく。
これによって、ふかふかほわほわな、よく耕かされた程よい広さの畑が完成したよ。
「「「どうでしょう?」」」
「ごうかく!」
「「「ありがとうございます!」」」
競争は、どこに行ったのかな?
その後、冒険者さん達は応援を呼びに行き、大人数で素材回収祭りが開催されたよ。
「畑も出来たし、帰ろうかの」
「あい!」
楽しめたし、いいか。
「俺たち木こりの3人で森で木を切ってたんじゃがな、その時、数匹のウルフに囲まれての~」
「よく無事じゃったな!」
「妖精様が集団で助けに来てくれての! あっという間ウルフを倒してくれたんじゃ!」
「なんと! その妖精様っていうのは、聖女ソラリス様の御使い様じゃろ」
「そのソラリス様が倒した大量のモンスターも、全て譲って貰えたらしいの」
「庶民には買えなかった肉が格安になっているのも、ソラリス様のおかげか!」
「庶民にも優しい……」
「「「小さくて可愛いし、マジで聖女様じゃ……」」」