第187話:じゃまちちゃ、だめ! の、ひ!
到着した花畑には、色とりどりな花が咲き誇っている。
ソラちゃんのことが大好きな妖精達が、過剰なほど力を注ぎ、季節なんて関係なく、常に満開状態になっているよ。
「わ~! おはな、いっぱ……」
駆け出して花畑に突入しようとして、咲いている花を跨いで行こうとした寸前で動きが止まる。
咲いているのは、高さ15センチほどのパンジー。
「しゅかーと、つかえちゃうね。このおはな、しぇがたかいね!」
……花は普通の高さである。
ソラちゃんの股下は35センチ。加えてロングスカートのワンピースだから、片足を大きく上げても、跨ぐにはスカートの裾がギリギリ花に引っ掛かる。
ちなみに、4歳手前でのソラちゃんのサイズは、身長99,体重14キロ、B51,W48,H53である。(ジェノさんの記録ノートから)
そして、現在7歳手前のサイズは、4歳手前のサイズとまったく一緒。
まったく成長してません。
――ちてるち!
だ、そうです。
――もぉぉぉ! しょんなこと、どうでもいいでちょ!
うん。どうでもいいね。成長が止まっちゃったことを言っても、悲しくなるだけだし……。
「ソラリスや。ちゃんと歩ける道を作ってあるから、おいで」
「あ~い!」
パパに呼ばれて、パパの脚に両手両足を使ってしがみつく。
パパが歩くだけで、しがみついたままソラちゃんも移動していく。
手を繋いで歩きたいけど、3メートルのパパの手に届かないから仕方ないね。
「よし、着いたぞ」
「ここで、なにしゅりゅの?」
パパの脚から降りたところは、花畑の外周かな。
花畑の淵からは草原が広がっていて、少し離れたところには森が見える。
「草原の草を抜いて、土を掘り返して畑を広げようかの」
「くしゃぬき、しゅる~!」
しゃがみこんで、小さな手で草を1本掴んで、プチ! 掴んで、プチ!
周りの草を抜くだけで、日が暮れちゃいそう。
――がんばってりゅの!
うん、それは分かってるんだけどね。
『グギャァァァ!』
森からゴブリンが駆け出してき――。
「じゃまちないで!」
抜いた草を投げつける動作で光の玉が飛んで行って、それに当たったゴブリンが消滅しちゃった。ちなみに、草は目の前に落ちました。
『グガァァァ!』
あ! 今度は大きな熊、ジャイアントベアの集団が!
「もぉぉぉ! パパとあたちのじゃまちちゃだめ!」
立ち上がって両手を左右に広げると、周囲の数百本にも及ぶ草が抜けて浮かび上がって、草が光に包まれて、それが矢になって飛んで行った。
そして、串刺しになって倒れこむジャイアントベア。
「ちじゅかになった! くしゃにゅき……ありぇ?」
不思議だね~。さっきまで沢山あった草は、どこに消えたのかな?
「パパ、くしゃにゅき、おわった!」
「そうじゃな……。早いの……。草を一生懸命に抜いている姿を眺める至福の時間が、あっという間に終わってしもうた」
凄くしょぼんとしちゃった。
それもこれも、邪魔しに来たモンスターが全て悪い! 不機嫌になったソラちゃんは、わたしじゃ制御不能なんだからね!
「パパ、ちゅぎは、ちゅちでちょ?」
「おお! そうじゃ! 土を掘り起こして、柔らかくするんじゃ!」
パパ、よかったね! まだソラちゃんとの作業が残ってたよ!
「その前にじゃ……。妖精達よ」
(((はい!)))
花畑から、凄い数の妖精たちが出てきてパパの前に整列したよ。
「おぬしらに力を与える。森と周囲のモンスターを殲滅せよ」
(((いえっさー!)))
パパも、ソラちゃんとの時間を邪魔されて怒ってた。
モンスターよ、この2人の邪魔をしちゃダメだよ。