第186話:パパとおでかけ~! の、ひ!
休日の昼。
「ソラリスや、これから花畑に行くかの?」
パパが言う花畑とは、王都の外にあるソラちゃんの所有する花畑のことだ。
王都周辺は王国の直轄領。領主ではなく、アリアちゃんのお父さんである国王が直接治める土地で、ソラちゃんにプレゼントされた土地を花畑にした。
「いく~!」
当然な答えだね! パパと一緒だったら、行かないなんて選択肢は存在しないよね。
――あたりまえでちょ!
てことで、昼食を食べて寛いだ後、パパと2人で王都の外にある花畑に行くことになった。
ソラちゃん、自分の部屋で準備中。
「むふ~! どれしゅ、どれにちよかな?」
クローゼットの中から無造作にドレスを取り出して、ベッドの上に広げる。
ていうか、どうせ汚れるんだから、普段着でいいんじゃない?
――だめでちょ! パパとおでかけにゃんだから、ちっかりとおめかち、ちないとでちょ!
え~? おめかししても、やることは花畑のお世話だよね?
――これだかりゃ、ソラしゃんはだめだめなんでしゅよ!
そうですか……。
1度着たドレスをまた脱いで。
「ソラリスや、まだかの? もう行くぞい」
ドアの向こうでパパが待ってるよ!
「ちかたない! このままいく~!」
待ちなさい! さっき脱いだからオムツ1枚状態でしょ!
おめかしはどこにいったの!? このまま行くなんて、わたしは許しませんよ!
――ソラしゃんは、あたち。ふたりでひとり。だからゆるしゅの!
ええ~、何それ?!
「ソラ様」
氷のような冷たい声と共に、ガシっと小脇に抱えられちゃった。
「服、着ましょうね?」
「あ……あい」
ジェノさんには許されなかった!
当然だな、うん!
貴族街にある貴族専用の門から直接外に出る。
貴族は基本的に馬車でしか移動しないから、門自体も大きい。まあ、パパはソラちゃんを抱いて徒歩で行くんだけど。
そして、門番も兵士ではなく、王都を守護する騎士だ。
「グランゾ様、お出かけですか?」
「うむ。娘と花畑にいってくるのじゃ」
人々に魔王と認識されているパパが花畑に出かける……。魔王って何だろ?
「いってらっしゃいませ!」
敬礼をして見送ってくれた騎士さんに、ちょっと照れながら手を振ると、騎士さんが「ぐふっ!」と悶絶して崩れ落ちた。
ソラちゃんの魅力、恐るべし。
そして、花畑へと続く草原の道をルンルン気分で行く。
「ぼ~ん!」
前方に姿を現せたゴブリンに火の玉が襲い掛かり、瞬殺。
パパとのデートを邪魔するものは、存在すらも許さない。
「おっと、前方から馬車が走ってくるの」
「むふ~!」
攻撃しちゃダメだからね!
――……ちないよ?
ちょっとの間と、むふ~! ていうのは何だったんですか?