第185話:ちあわしぇ、おしゅしょわけ! の、ひ!
孤児院から冒険者ギルドに戻ってきた。
依頼達成の報告をして報酬を受け取るぞ!
「おね~たん! いらいたっしぇいちた~!」
ジェノさんに抱かれたまま近づいていって、右手に握った依頼票をパタパタと振る。
乱暴に握られて振られたから、依頼票はシワシワのクシャクシャだ!
「お疲れ様です!」
それでもお姉さんは、ニコニコ顔で依頼票を受け取ってくれた。
でもね、お疲れさまって言ってくれたけど、ソラちゃんは基本、ジェノさんに抱かれたままだったんだけどね。
肉体労働は、フェルノ君とベエルフェッド君が担当してくれたわけで。
今回はパーティーでの活動だったから、報酬の割合は2人が多く貰えると思うのだが……。
「じゃ~、報酬の飴玉ね。今回は3人だから3個よ」
「やった~! ありがとごじゃましゅ!」
お姉さんが、背後に置かれたガラスの容器から飴玉を3個取り出して、ソラちゃんに渡した。
透明なガラスの容器には、飴玉が大量に詰まっていて、ソラちゃんの報酬用に用意された物らしい。
ていうか、この薪の配達依頼は正式な依頼であり、報酬は銅貨10枚だったんだけど、それが飴玉3個になっちゃったよ。
「……」
「「……」」
ソラちゃんとフェルノ君とベエルフェッド君の2人と見詰め合う。
ソラちゃんは胸の前で飴玉を握りしめ、2人にメンチをき……懇願の眼差しを向ける。
「あ~、俺たちはいらないよ」
「そうだな。ソラちゃんが全部受け取ってくれ」
「しょ~お? ちかたないでしゅね~」
2人は1番働いて、報酬なしになっちゃった!
「でへへ~」
ネコさんポシェットに飴玉を嬉しそうに入れる。
その様子を見て、2人は微笑んでいる。
ソラちゃんの笑顔が最高の報酬だ! そういうことにしておこう!
2人と別れ、歩いて帰っている。
もちろん、王都の大通りは人通りが多く、ジェノさんに抱かれたままだけど。
「ソラ様、いっぱい遊びましたね」
「うん、あしょんだ~!」
ソラちゃんの笑顔に、ジェノさんはデレデレである。
「おいち~!」
飴玉を頬張り、幸せいっぱいだね。
――うん! ちあわしぇ~!
と、住宅街を歩いていると、おぎゃ~! と赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
家の中からバタバタと音が聞こえて、歓声の後で何故か悲鳴が聞こえた。
出産を終えた母親の容態が危ないらしい。
栄養失調に加え、医療の発達がそれほど進んでいないこの世界では、出産後の母親の死亡率は結構高い……。
――みんな、ちあわしぇ~! おしゅしょわけ~!
「ちあわしぇに、なれ~! 『はぴねしゅ!』」
幸せ気分のピンクの光が王都全体を照らして。
「ああ! 奇跡だ! メリナ! よかった!」
住宅街の中から、そんな声が聞こえてきたよ。
幸せをお裾分けって、凄いね。
――あめだま、おいちいもんね!
そうだね~。
飴玉1つで、みんなを幸せに。
ソラちゃんの笑顔が、わたしの幸せだよ。
「私はソラ様と密着できることが幸せですよ! 帰ったらお風呂でハアハアしましょうね!」
あんたは自重しろぉぉぉ!
「なあ、フェル。今日は楽しかったな」
「うん。報酬はなかったけど、ソラちゃんの笑顔が最高の報酬だな」
「明日も、ソラちゃんを誘って……て、なんだ、このピンクの光は?」
「「……口の中あま~~~い!」」
「あっはっは!」
「なんだ、この幸せな気分は?! あはは!」