第183話:れんけいで、がんばりゅ! の、ひ!
新規でFランクとして登録したフェルノ君とベエルフェッド君と一緒に、依頼が貼りだされている掲示板を眺める。
もちろん、ソラちゃんはジェノさんに抱かれているけどね。
Fランクの区画で依頼票を見ているんだけど、次々と小さい子供たちが依頼票を剥がして受付に持って行っている。
街中のお使い程度でも、少ない報酬が生活費の助けになってるんだろうね。
報酬はランクが上になるほど高くなるけど、6歳で冒険者に登録できて、6歳はFランクで固定。7歳からランク昇格制度が適用されるみたいだね。
「むぅ~……」
真剣に依頼票を眺めるソラちゃん。
今までは指名依頼だけで、掲示板に貼られた依頼から選ぶなんて初めての経験だからね。
3人で出来る依頼をじっくり選んで、皆で楽しい思いで作りをしようね。
――ソラしゃん、なんてかいてりゅのか、わかんないね!
唸ってたのはそんな理由だったの?!
「ソラちゃん、俺たちのことは気にしないで、受けたいものを選ぶといいよ。俺もベルも、ソラちゃんが選んだものなら、命がけでやり遂げるからさ」
フェルノ君、輝く笑顔で言ってくれているけど、ソラちゃんが唸ってるのはそんな理由じゃないんだよ~。
それに、ドブ掃除やら街のゴミ拾いなんかに、命かけちゃダメだからね? 6歳児でも余裕でこなせちゃう依頼だから。
――ソラしゃん! えらんで!
おおう……。読めないからって、丸投げしてきたか。まあ、仕方ないか。
じゃあ、主導権を貰うね。
――どじょ~。
表と裏が入れ替わって、わたしがソラちゃんの体を動かせるようになった。
視線を横に流しながら、次々と依頼票の内容を読んでいく。
ドブ掃除、ゴミ拾い、犬の散歩……。3人でするなら、犬の散歩なんていいんじゃ……。
――じぇったい、だめ!
あ、はい。犬恐怖症でしたね……。
「あ、これ……」
一番端っこで見つけた依頼票。
そこには、配達依頼:木材屋から薪を孤児院に運んでほしい。って書いてあった。
「ああ。これなら、力仕事は俺とフェルが受け持てるね」
「力なら任せとけ!」
と、フェルノ君が腕を曲げて力こぶを見せてくる。
「むふ~!」
と、わたしも力こぶを……うん、全然ないどころか、ぷにぷにである。
材木屋で家具製作で出た廃材なんかが、薪となって孤児院に寄付として使われるらしい。
その薪を受け取り、孤児院を目指す。
「「ぐぅ……おおぉぉぉ……」」
2人の両肩には、山盛りの薪が抱えられて、100メートルも歩かないうちに両足がガクガクと震えだしている。
ちなみに、ソラちゃんの右手には、廃材を切り出して作ってもらった人形が握られているよ。これも立派な運搬だね! そのソラちゃんはジェノさんに抱かれているけど……。
「『りかばりー!』」
体力回復の魔法を2人にかける。
2人の足取りがしっかりと回復して、100メートル進んだくらいでまたガクガクとなる。
その度に、りかばりー。……りかばりー……りかばりー。
無尽蔵な魔力があるから出来る、見事な連携だね!
そして、孤児院に到着!
「ばぁちゃ!」
「あらあら、ソラちゃんと、クラスメイトさん? 依頼を受けてくれたのね」
ソラちゃんは、ばぁちゃに抱きつき、2人は薪を降ろし一息つく。
「大変だったわね、ご苦労様。でも……最初にここに来てくれたら、台車を貸してあげたのに、直接、材木屋さんに行っちゃったのね」
まあ、考えてみたら、6歳の子が重い薪の束を抱えられるわけもなく、荷車や台車で運ぶのが正解だよね。
「あたち、がんばった!」
回復魔法で2人を強制的に歩かせました。
「「ぐふっ!」」
ニコニコのソラちゃんとは対照的に、フェルノ君とベエルフェッド君は、その場で崩れ落ちちゃった。
うん……2人は倒れるほど頑張った!