第180話:ごうかいな、おばかしゃん? の、ひ!
学園に登校して、教室で逃走防止のためにジェノさんの膝の上に抱かれて授業開始をまっていると、リンバーグさんが1人の人物を連れて入ってきた。
「あ~……今日は転入生を紹介する。天使族のローストビーフだ」
アリアちゃん達が言葉を無くし、硬直しちゃってる。
見た目20代後半の大人だし。背中から翼が生えてる天使だし。そりゃ驚くだろね。
「なにちにきた!?」
「我が女神から勉強しなさい! と言われたので、勉強するために来ました!」
「よろちく、しゃいころびーふ!」
ローストビーフって名前とスキルの名前が合体して、なんか、一口サイズのステーキみたいな? 名前になっちゃった!
「おお! 女神から新しい名前を授かるとは! 光栄ですな!」
改名しちゃったよ! それでいいのか? ていうか、女神ってソラちゃんのことか?
――むふふ~。あたち、しぇいじょなのにね! やっぱり、ばかなんだね!
ああ、うん……。
でもね、りばいぶを使う時にね、限定的にだけど女神になったんだよ? ソラちゃん気付いてなかったのかな?
で、授業開始されたんだけどね。
ソラちゃんの近くに座ったこの駄天使、読み書きの授業でいきなり爆睡。
「しゃいころ! まじめにちないとだめでちょ!」
「「「ソラちゃんからそんな言葉を聞くなんて思わなかった……」」」
うん。わたしもビックリだ。
――あたちは、ジェノしゃんいるから、ぬけだしぇないのに!
がっちりと抱かれてますからね。ていうか、抜け出しは居眠りよりもダメダメだからね?
――だったら、あたちもねる!
はい? どうしてそうなる? て、あ~……視界が闇に閉ざされて……。
「ソラ様? ……今日はニンジンたっぷりのスープにしましょうか」
「ねてないち!」
ふんす! と、黒板を睨みつけるソラちゃん。その視界に居た勇者リンバーグさんは、視界から逃げるように横に逸れていく。
ソラちゃんの八つ当たりから逃げたね……。
「ソラちゃん。頑張りましょうね」
「あい!」
アリアちゃんの微笑みに、元気よく返事をする。
――じぇったいに、ねないち~!
我慢を頑張るんじゃなくて、勉強を頑張ろうね?
で、最初の授業が終わって、次がいよいよサイコロビーフの本命、算術の授業だ。
さっきまで寝ていたサイコロビーフも、今は背筋を伸ばして待ち構えているよ。
リンバーグさんが、黒板に文字を書いていく。
「宿屋の一泊の料金が銀貨3枚で、三泊した場合、いくらになる?」
――ソラしゃん! でばんでしゅよ!
いや、出番って。まあ、3×3で9だけどね。
「簡単ではないですか」
「……あ~、じゃあ、サイコロビーフ、答えてくれ」
「こっちで計算はめんどくさいから、カウンターの上にお金をぶちまけて、必要なお金だけを取ってもらえばいいのだ!」
――にゃるほど! ソラしゃんもめじゅらちく、まちがえちゃったね!
ちょっと待って! わたしは別に間違えてないからね!?
「……計算をしてほしんだが? ちょっと待ってろ」
と、リンバーグさんが、3×5って紙に書いて、サイコロビーフに渡した。
「答えを書いてくれ」
「……これも簡単ではないか」
――あたち、わかんないのに!
どうしてムキになってるのかな? 対抗意識に目覚めちゃった?
「どれどれ……。なあ? どうして1から9までの数字を書いてるんだ?」
「そのうちのどれかは当たっているだろう?」
――しょのてがあったね!
ないからね!? 答えは15だから、1から9までだと足りないから!
「何もしなくていいから。とりあえず大人しく座っててくれ」
「うむ……」
――べんきょうちないなんて、なにちにきた!
うん。本当に何をしに来たんだろうね?