第18話:なんか、これじゃない感? の日
感情のソラちゃんが、とんでもないことをやっちゃいました。
「うわ……」
やった本人も、思わず見上げるもの。
それはな~に?
はい。答えは、お城の横に突き刺さった、お城と同じ大きさの氷の塊です!
どうしてこうなったか……。
パパのアドバイスでサ行が発音できるようになってから、その翌日からお城のみんなとおしゃべりして練習したんだよね。
廊下で歩く人を見つけては、その正面に飛び出して。
ターゲット、リザードマンの戦士!
「あた、し! どう?」
感情さん! それは逆ナンパの言葉です! お持ち帰りされちゃう!
「……小さい」
ですよね~。
頭をポンポンと優しく叩かれちゃった。
子供あつかいされた……て、4歳の幼児だったわ。
次のターゲットは、犬人族の人。
「し! ぽ、ぎゅって、し! て、いい?」
ダメでしょ! いきなり何をお願いしてるの!
「や……優しくなら」
あ、いいんですか? でしたら、遠慮なく。
もふもふ~。
「もふもふ~ぎゅ!」
「キャイン!」
だめぇぇぇ! ぎゅ! しちゃだめぇぇぇ! 優しくならって言ってたでしょ!
――ぎゅってしていい? て、聞いたもん!
あ、聞いてたわ。でも、本当にやっちゃだめ!
最近は落ち着いてきた感情がまた暴走し始めた!
「あ!」
なんだ、今度は誰を見つけた?
「かかか! 姫さんは今日も元気ですね」
骸骨のホーネさんだった。
「がんばってる? ……あれ?」
うん。サ行が入ってないね~。可愛く首を傾げて、あれれ~? だよね~。
「かわええ……」
ガシャン!
ホーネさんが間接のすべてがバラバラになって崩れ落ちた!
死んじゃった!? え? 元から死んでるから大丈夫? なら安心だね!
「ソラ様? みんなのお仕事の邪魔しちゃダメでしょ?」
あ、後ろからジェノさんに肩を掴まれちゃった。気配を感じなかったよ。
「ちがうの……あたちも、れんちゅう……」
「はい。お部屋で! 私と練習しましょうね?」
「あ……あい」
はい。しゅうりょ~。
部屋に連れ戻されて、床に座らされたと思ったら、なにやらジェノさんが紙に何かを書き出した。
「はい。文字の練習も兼ねて、私が書いた文章を読んでください」
差し出された紙を受け取る。見た感じ、やけに短い文章だけど。
「えと……。だい、す! きな、ジェノと、そ! いねが、し! たいで、す!」
……大好きなジェノと、添い寝がしたいです。
幼女になに読ませてんの!?
「あ~蕩けちゃいそう!」
「ジェノ~!」
あ、トレンティーさん、こんにちはです。
「こっちにいらっしゃい。ソラちゃんには見せられないから」
何をでしょう? あ、ジェノさんが引きずられて行っちゃった。
……血管が浮き出た笑顔のトレンティーさんは、とっても怖かったです。
さて、1人になってしまったけど……。
――まほう、つかってみる?
う~ん。窓から見たかぎり、外には誰も居なさそうだし、ここから外に使ってみようか?
「あい! みずのけ、し! んよ、がん、ぜ! んのてきをうがて、あい、す! らん、す!」
パシュン!
音だけで、何も撃ち出されてないけど?
「あ」
あ? て、な~にこれ~? 大きな氷の塊が空に浮いてるよ?
そして、氷は落ちてきて、誰も居ない原っぱにド~ン! と、突き刺さった。
「うわ……」
びっくり。予想してたんと違う。