第177話:にゃんか、でてきたけど……? の、ひ!
マグア君たちを回復した後、その怪我の原因を聞いたよ。
ランクが低くて低年齢の子たちは、いくつかのグループに分かれて薬草採集をしていたんだって。
薬草が取れる森の外周は、強いモンスターは出てこない安全域なんだけど、そこへ森の奥からとても大きな猪のモンスターが飛び出してきた。
グレートボアって名前らしいけど、その突撃を受けて纏めて薙ぎ払われたんだって。
マグア君は、突進の直撃を受けそうな子を庇って、大きな牙で腹を裂かれちゃったってことらしい。
立派な行為だけど、自分が死にかけちゃダメだよ。
「まぐあにーたんの、かたきはあたちがとる!」
「「「死んでないからね!」」」
はい、皆からのツッコミ頂きました~!
うん、ソラちゃん。マグア君は今さっき助けたじゃん? なんで死んじゃったような流れに持っていってんの?
――どっかんちたいの!
……今日は学園で真面目に授業受けて、ストレス溜まってましたか。
わたしがソラちゃんを止められず、駆け出したソラちゃんをジェノさんが捕まえようとしてくる。
「ソラ様! グレートボアは大人の冒険者たちが対処してますから、落ち着いてください!」
「いんちかいほ~! くいっく!」
制止の声を無視して、急加速でジェノさんの手を振り切って、ギルドの外へ飛び出す。
「かじぇのしぇいれいしゃん!」
風の力を体に纏って、空高く舞い上がって目的地に向かって飛翔!
まあ、戦っている人たちも無傷ってわけじゃないだろうし、回復を使えるソラちゃんが向かうことは間違っていないはず……。
グレートボアを囲んでいる人が4人。地面に倒れこんでいる人が3人。グレートボアは目立った傷が見えないね。
もしかして、劣勢?
――ソラしゃん! かんがえりゅよりも、まじゅはこうどうでちょ!
あ、はい!
……いつも考える前に行動して怒られてるんだけどね。
まあ、今回はそのおかげで助けることが出来るから、ジェノさんに怒られるのは我慢しよう!
「えんちゃんと! ぷろてくしょん! くいっく!」
戦っている4人の冒険者さん達に、防御魔法と素早さを上げる魔法を付与する。
「たおりぇてりゅひととおくにゅしょこべちゃって!」
「「「りょ……了解!」」」
通じた! すげ~!
1人の冒険者さんが魔法で牽制しつつ、残った3人の冒険者さんが倒れている3人をそれぞれ背負い、戦闘範囲から離脱していく。
ソラちゃんは、魔法で牽制していた冒険者さんの隣に着地した。
「あたちにまかしぇて!」
「聖女様……お願いします!」
残っていても邪魔になると判断したからか、素直に離脱していく。
そして体高3メートルはある猪……グレートボアは、首をブルブルと振って睨みつけてくる。
――おこってりゅ!
そうだね! 魔法攻撃してたのは、わたしたちじゃないよ?
なんて想いも通じるわけはなく、グレートボアの周囲の空間が揺らめき、前脚で地面を掻いたあと、突進してきた!
「うにゃ!」
咄嗟に横に飛び退いて突進を回避したけど、その直後に、ちぇかじゅじゅだんとが自動的に魔法障壁を展開して、パシン! と、何かを弾いた音が響いて軽く吹き飛ばされたけど、風の精霊さんに受け止められて華麗に着地!
――ソラしゃん、しゃっきの、にゃに?
う~ん、あれだね。あいつの周囲の空間が揺れてるの、あれって風魔法だね。つまり、突進を回避しても、周囲の風の刃で体を切られちゃう。
ギルドで子供の冒険者たちが手足を切断されていたのは、この攻撃だね。
――むじゅかちいしぇちゅめいは、わかんない。
そうですか……。
と、簡単な説明をどうするかな~って考えてる隙に、グレートボアが方向転換して再び突っ込んできた!
「ど~ん!」
真っ直ぐ突っ込んできていたグレートボアの真下から土の柱がそそり立ち、そのままグレートボアの腹にズドン! と、めり込み、30メートルほどの高さに到達した瞬間に土の柱は消えちゃった。
まあ、その勢いのままグレートボアは空中50メートルくらいまで打ち上げられたわけで。
えっと……うん、このまま落下死かな?
――ちかじゅくから、あぶないんでちょ?
うん。正解。でも、これってソラちゃんだから出来る攻略法だよね。
落下してくるグレートボアを見ていると、土の柱が消えた地面に魔法陣が浮かび上がって、そこから1人の天使が姿を現した。
「がっはっは! 聖女の魔力を感知して、それを元に座標を特定して転移してきたぞ! 我は4番目に強いローストビーフ!」
あ。
――あぶにゃいよ?
ずどぉぉぉん!
「プギャ!」
落ちて来たグレートボアの下敷きになったんだけど……。
天使ってドジ属性が標準で付いてるのかな?