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第173話:あたちは、ぼうけんちゃ! の、ひ!

 試験結果は、剣術は他の追随を許さず、魔法は花丸満点だった。

 そして、試験明けの学園休日の日。


「すげ~な、嬢ちゃん。こりゃ~、本気で戦ったらグランゾより強いんじゃないか?」


 食材を魔王国から運んできたウルガさんがそう言うと、話を振られたパパが、ぎょっと大きく目を見開いた。


「いや、俺はほら、あれじゃよ。魔王国を囲んでいる山脈の維持に魔力を使っているからの。本気を出せないっていうかの……」


 顔が真っ青ですよ、パパ。あたふたして汗が凄いし。

 ていうか、あの山脈は魔力をずっと消費して維持してるんだね。ソラちゃんの祝福は1度作ったものは放っておいても魔力を消費しないから、祝福とはまた違うのかな。


「パパと、たたかわないよ? だって、だいしゅきだもん!」


 パパの膝の上で立って、大きい体に抱きついて頬をすりすりと擦り付ける。

 行動がネコだね。


「そういや、アヤネがいないな? あいつも王都に居たんじゃ、剣の腕が鈍っちゃうんじゃないか?」

「アヤネなら、なにやら冒険者っていうのになって、その辺でモンスターと戦っておるぞ?」

「ソラちゃんの護衛があるから、学園が休みの日じゃないと活動できないけど、報酬でお小遣いをかなり稼いでいるわね」


 ――ソラしゃん、ほ~しゅ~って、なに?


 うん? あれだよ、ソラちゃんが頼まれて祝福をすると、お礼にお菓子をもらっているでしょ? あれと同じようなものだよ。


「あたちも、ぼ~けんちゃになる! ほ~しゅ~! おかち!」


 冒険者の報酬がお菓子ってことはないと思うんですけど。


「トレンティー……報酬なんて言うからじゃぞ」

「報酬がお菓子なんて一言も言ってないわよ!?」


 あ、わたしがそんなことを言ったような?


「あ~、あれじゃ、ソラリスはまだ小さいからの。冒険者にはなれないんじゃないかの……」


 まだっていうか、ソラちゃんはこれ以上成長しませんけど?

 これはあれかな? 遠回しに冒険者にはなっちゃダメってこと?


「やぁぁぁ! なるの! ぼうけんちゃになるの!」

「いや、だからの、落ち着いて」


 パパがあたふたと両手を上げ下げして困り果ててる。こうなったソラちゃんはなかなか収まらないからね。

 と、ソラちゃんが何故かワンピースの服を脱ぎだしてオムツ1枚の姿になっちゃった。


「このままおしょとにでちゃうもん!」


 なんですと? あの、ソラちゃん? それだとわたしまで巻き添えで恥ずかしい思いをしちゃうんですけど?!


「ソラ様?」


 ここでお茶の用意をしていたジェノさんが登場!

 ソラちゃんを正面から脇の下を両手で持って抱き上げて、そのままお互いの顔が対面する位置まで持ち上げて、ジェノさんがにっこりと……。


「えう……」


 それだけで大人しくなって、降ろされて静かにワンピースを着せられる。

 はっきり言って、この中で最強はジェノさんじゃないかなって思う。





 ジェノさんも交えて話し合った結果、登録だけならいいんじゃないかってことになった。

 へそを曲げたソラちゃんを納得させるための苦渋の決断だったりする。

 わたしもね、裸で家の外に飛び出すなんて凶行を回避したいしね……。


 で、城下町をジェノさんと手を繋いでテクテク歩いて、途中で何かに興味を移して駆け出しそうになって抱き上げられて、そのまま冒険者ギルドに到着。

 入り口で降ろされて、スイングドアを押し開き、ギルドの中へ……。

 ここでソラちゃんは、前後に揺れるドアをじっと見詰め、勢いがなくなったドアに再び突撃して外へ出て、くるっと向きを変えて前後に揺れるドアをじっと見詰め、再び突撃。


「おもちろい!」


 いや、周りの人に凄く迷惑かけてるからね!


「お、ネコミミ帽子の聖女様の登場だ!」

「ネコミミは相変わらず可愛いな」


 目立つ白銀の髪を隠すためのネコミミ帽子だけど、何度も風の精霊さんの力で空を飛んでいるから、ネコミミ帽子のほうが目立っちゃって隠す意味がなくなっちゃってる。

 もはやネコミミ聖女のほうが有名かもしれない。


 皆から歓迎されて、受付のお姉さんの所へ。

 

「ぼうけんちゃになる!」


 ジェノさんに抱かれたまま元気に言う。


「はい、登録ですね」


 お姉さんが手渡してきた用紙に、ジェノさんが必要事項を代わりに書いて。


「はい、ソラリス様。これが冒険者カードですよ」

「あい!」


 手渡されたのは、名前とFランクって書かれたカード。

 これでソラちゃんは冒険者になったよ! Fランクだと街でのお使い程度しか出来ないらしいけど。


「いらい、うける!」

「あ、ソラ様、グランゾ様から指名依頼です」

「パパ?」

「はい。家でグランゾ様のお世話をすること。これが依頼内容です」

「パパのおしぇわ! しゅぐいこ!」

「はい。かえりま……依頼に出発です!」

「あい!」


 依頼のために帰宅する。

 ……あれれ?




「おお、ソラリスや。まずは肩たたきをしてもらおうかの」

「かたたたき、しゅる!」


 背が届かないから、パパは床に座って、ソラちゃんはパパの背後で椅子の上に立って、準備はオッケ~!


「いんちかいほ~!」


 はい?


「ふぃじあっぷ! ぱわーあっぷ!」


 因子開放と身体強化、さらに力を高める補助魔法ですか? え? 準備しすぎじゃない?


「かたたたき! どか~ん!」


 振り上げた右手を、力を込めて振り下ろす!

 って! 肩たたきって、それは、ちがぁぁぁう!


 ずがぁぁぁん!


 パパが、床を砕き、床下の地面までめり込んじゃった。


 冒険者になって初日の初依頼……これって失敗ですか?



 

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