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第167話:パパ! がんばったよ! の、ひ!

素敵なレビューをありがとうございます! とても嬉しいです!

 目を覚まし洗脳から解放された人たちは、自分の国に帰ることになった。

 全員を捕虜なんて無理だしね。収容する場所も無いし、食事させることもできない。

 

 ――だいじなのは、ごはんだもんね!


 そうだね。

 街の周囲に畑を作ったけど、それだって街の人たちの分だけでいっぱいいっぱいなんだよね。

 

 ――じぶんでちゅくればいいのにね?


 そうなんだろうけど、精霊や妖精に嫌われた結果が、今のこの世界の惨状なんだよね。

 枯れて痩せた大地をいくら耕して畑にしても、そこから実る野菜は見るも無残なものだろうね。


 ――ソラしゃん、むじゅかちいこといってる!


 あ、うん。ごめんね。ただね~、現状では、ソラちゃんの祝福に頼るしかないってことだよ。

 なんか、大地の回復の使命を与えられた妖精たちはあてに出来ないし。


 ――あたちのはなばたけに、いっぱいいるよ?


 だからそれがダメなんだよ?


「では、我々は国に引き返します」


 部隊長さんがわたしたちに向かって敬礼する。

 総大将さんだけは対談のために残り、指揮を引き継いだこの人が皆を纏めて出発するみたい。


 ――かえれりゅのかな?


 え? そりゃ~来た道を引き返すだけだから、帰れるでしょ?


 ――ちがうの!


 わたしが何が違うのか分からず混乱している間に、ソラちゃんは整列している皆の前にとことこと歩いて行って立ち止まった。


「ちぇかじゅのだ!」


 世界樹の枝を杖に変化させて、膝を軽く折り曲げ……って!


 ソラちゃん! ジャンプしちゃダメ! スカートが翻ってオムツが見えちゃう!


 ――きにちないよ?


 大勢の男の人の前ではさすがにダメだって! お願いだから気にして!


 ――ちかたないでしゅね!


 ……納得してくれたんだったらいいよ。理解はしてないだろうけど。で、回復魔法を使うの?


「『りかばり~!』」


 体力回復かな? 帰り着くまでの体力がないってこと? そこまで気が付くなんて、ソラちゃん優しいね。


「「「聖女様、ありがとうございます!」」」

「どいたちまち……パパ!」


 一斉に頭を下げられて、ちょっと人見知りが出ちゃってパパの脚の影に隠れちゃう。

 ソラちゃんの恥ずかしいって感じる基準が未だに謎だよ。




 5000人の人たちがゆっくりと進み始めたのを眺めていると、その隊列の真横の遥か遠くの位置に土煙が見えた。


「なんじゃ? 別動隊が居たのかの?」

「いえ……。食料は我々の分しか集まらず、別動隊を組む余裕はなかったはずですが」


 パパの問いに、総大将さんが困惑して答えた。

 

 ――なんだろ?


 ね~。あ、向こうの正規の兵士さん達が剣を構えたね。てことは味方じゃないってことだよね?


(報告~! モンスターの集団を確認! ゴブリン500、ゴブリンソルジャー200、ゴブリンキング1!)


「ゴブリンの軍団!? こちらは農民がほとんどで戦えるのは500人ほどですよ!」


 5000人規模の軍隊の中で正規兵500人っていうのは少ない気もするけど、ベエルグラッドさんの領地でも兵士さんは50人なんだよね。

 人同士の戦争なんてしたことなかった世界ではこれが普通なんだろうけど。

 モンスター相手に戦ってたのは、主に冒険者さん達だからね。


「く! すみません! 対談を前にして申し訳ありませんが、総大将ムリシ・テールは、迎撃指揮に向かわせてもらいます!」

「ああ、うむ。頑張ってな。無理しちゃいかんよ?」


 と、パパの激励を受けて、ビシッと敬礼する。


「パパ、パパ! みてて!」


 パパに激励されたムリシさんに対抗心を抱いちゃったソラちゃん。

 右手をゴブリン集団に向けて、狙いを定めて。


 あの~? ものすごい魔力が溢れてきてるんですけど?


 ――じぇんぶ、ねりねりちて!


 あ、はい。仰るままに。

 次から次へと流れてくる魔力をこねこね、ねりねり……。


「どっかぁぁぁん!」


 ゴブリンの集団がすっぽりと入る範囲が、ちゅどぉぉぉん! と、真っ赤な炎を巻き上げながら大爆発した。

 

「むふふ~! みてみて! やっちゅけた!」


 みんなが呆然と視線を向ける先には、全てのゴブリンが消滅して、大穴が開いて周囲がマグマと化している大地があったよ。


「パパ! あたち、しゅごいでちょ~!」

「す……すごいな。さすがソラリスじゃ……。しかし、もうちょっと加減をじゃな……」

「あたち、しぇんきょうしぇいじょだもん!」


 腰に手を当て、むふ~! と得意気に胸を反らす。


「は……ははは。戦狂聖女様……。対談なんて烏滸がましかったですね……。我がグルンド王国は、全面無条件降伏いたします……」


 ムリシさんが真っ青な顔で、ソラちゃんに対して跪いて頭を下げてきちゃった。


 あの~、戦狂じゃなくて、宣教ですからね? て、なんでソラちゃんに頭を下げてるのかな? 本当はソラちゃんは関係なくて、エルナーデ国との戦争だったんですよね? 

 ソラちゃんは本来は優しいですから、そんなに怖がらなくていいですよ? 


 ソラちゃん! やりすぎはダメだってぇぇぇ!

 

 





最後……ほのぼのはどこに行ったのかな?


――みんな、ちゅどん! とか、しゅきでちょ?


……そうなのかな? いやいや! ソラちゃんが我慢できなかっただけだよね?


――えへへ~。


理性のわたしがしっかり抑えてあげないと大変なことになっちゃう! 自信ないけど!

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