第165話:ひかりは、しゅごい! の、ひ!
ソラちゃんの一言で大混乱になった敵軍が、天使が逃げ帰ったことにより落ち着きを取り戻した。
――みんなも、にげちゃったらよかったのにね!
う~ん、まあ、そうなんだけど、洗脳っていうものは、強制力があるんだろうね。
――あ! こっちきたよ!
む? やっぱり、攻めてくるか。
まずは100人くらいの集団が隊列を組んで走ってきているね。こっちは兵士さん50人しか居ないし、普通に戦ったら勝てないよ。
……普通に戦ったらね?
「むふふ~! あたちが、やっちゃう!」
進んでくる敵兵に向かって両手を向ける。
「ソラリスや」
と、やる気を出してたのに、パパに抱きかかえられちゃった。
「どちてとめるの!」
すんごい不機嫌になっちゃった。
一生懸命に手を伸ばして、パパのほっぺをペチペチ叩く。
「完全に敵意しか持たないモンスターなら攻撃してもいいが、あそこに居るのは、操られ無理やり徴兵された農民や町民じゃろう。人に攻撃し、傷付けちゃいかんよ」
そうだよ、ソラちゃん。洗脳されて無理やり戦争させられてるんだから、攻撃なんてしちゃダメだよ。
ソラちゃんは5000人なんてどうってことない攻撃魔法を使えるけど、パパもわたしも、ソラちゃんには人を傷付ける子になってほしくはないんだよ?
――どうちたらいいの?
ソラちゃんは聖女だよね?
――あい! あたちは、しぇいじょ!
うん! 聖女っていえば、癒しだよね!
「パパ! おろちて! あたち、いやしゅ!」
「い、いやしゅって、なんじゃ?」
「あたしぇじょぴゃぴゅやいやしゃしゅの!」
落ち着いてソラちゃぁぁぁん!
「おろせばいいんじゃな? 攻撃はしちゃいかんよ?」
パパは、言葉の意味は理解できなかったようだけど、ソラちゃんの剣幕に負けたようです。
そっと降ろされたソラちゃんは、みんなの前に立つ。
眼前には、敵兵が迫ってきている。
――かじゅ、おおいね!
だね。浄化するにも、人数が多すぎて全員は無理かな?
瘴気が纏わりついているのが見えてるから、浄化は有効だろうけど、問題は範囲と人数の多さだね。
出来る限りの浄化をかけてもいいけど、浄化されてない人たちはパパ達と戦いになっちゃうし……。
――パパのいんちもちゅかう!
パパの……神の因子だね。やってみようか!
「いんちかいほ~!」
どう? なんか新しい言葉が浮かんできた?
――ぴゅりふけちょちょ、ちかないよ?
因子だけじゃダメなのかな? ……あ! わたしの勇者の力も開放してみよう!
アデル……少しだけ、力を借りるよ。
わたしの理性の中にある熱い想いを開放! ブレイブ!
聖剣が光を放っていたように、ソラちゃんの体が光を纏った。
――しゅごい、あたたかいね。
うん。アデルの、優しくも勇敢な暖かさだね。
(でも、あいつヘタレなんだよね。向こうの世界で上手くやってるのかな?)
て、今はこっちに集中! 聖女、勇者、神……これで!
――ソラしゃん! きた!
うん! 神聖な光……!
「『でぃばいんふらっしゅ!』」
ソラちゃんが纏っていた神聖な光が昼の太陽で照らされていた光を更に明るく照らし、弾けた。
結果は……。
「「「目が、目がぁぁぁぁ!」」」
「ソラリスや! 何が起こったのじゃ! 凄い光で目が……目がぁぁぁ!」
敵も味方も大惨事。敵さんなんて、100人が大地に転げ回ってるし。
これ、光じゃなくて閃光じゃん! え? 神聖な光ってショック療法だったの?
「は! ソラ様の光輝く神々しい姿を見てたら気絶しちゃってたわ!」
「……それはよかったわね」
「あれ? 皆さん目を抑えて悶えてますけど、どうしたんですか? あ! ソラ様の神々しい姿を直視できなかったんですね!」
「今度、ソラちゃんが同じ状態になったら最後まで直視してごらんなさい」
「はい! 今度こそ最後まで直視しますよ~!」
「……ジェノがそれで幸せになるなら……頑張ってね」