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第160話:あらってあげただけにゃのに? の、ひ!

「だいじょぶ?」


 と、穴の淵に屈んで声をかける。

 5メートル四方……穴の深さも5メートル。よくこんだけ掘ったものだ。

 当然、自力では上がってこれないよね? 


「ああ……捻挫はしたが、大丈夫だ」

「ちらないひとはいいの! うましゃんは?」


 幼女は時に理不尽である。

 「うう……ぐす……」と、すすり泣きが聞こえてくるよ……。


「馬は……前脚を骨折してる……」

「しゅぐなおしゃないと!」


 ソラちゃんの中では、馬の優先度が圧倒的に高いようだ。


 ――ソラしゃん! じゅんびかいち!


 え? ……ああ、回復魔法の準備ね。


 ――こころをひとちゅに!


「『ひーる!』」


 あ、あれ? えりあひーる、じゃないの? ひーるって、単体魔法ですよね? 男の人は無視ですか?


 穴の中から光が溢れて。


『ひひぃぃぃん!』


 骨折と怪我が治って喜んでるね。


「……ぐす」


 凄く、悲しんでますね。ほら、ソラちゃんって、人見知りだから仕方ないよ。

 わたしだけでも、心の中でお早い回復を祈っててあげる! なんの効果もないけどね。


 ――これでよち! うましゃん、あなからだちてあげないと。


 そうだね~。で、どうやって? 


 ――パパ、よぶ!


 なるほど。それはいい考えだね。


 パパぁぁぁぁ! 出番ですよぉぉぉ!




 まずは、ソラちゃんが精霊を召喚。

 その精霊が、精霊女王のトレンティーさんに念話を送る。

 トレンティーさんは木さえあれば、そこにゲートを開くことが出来る。つまり、ソラちゃんが復活させた森だ。

 

『ええ、そうです。ソラ様が皆様をお呼びです。……泣いてはおられませんが、酷く困っておられます』


 1人で寂しくなって泣いていると思われたかな? 相変わらず過保護だからね。


『ソラ様。準備が出来次第、皆様が来られるそうです』

「ありがと! て、ありぇ?」


 お礼を言った直後、木の前の空間が歪み、ゲートが開いた。

 準備が早すぎるでしょ!


「ソラ様ぁぁぁ! 1人で寂しかったでしょ!? いっぱいギュってしてあげますからね!」

「むぎゅ!」


 真っ先に飛び出してきたジェノさんに抱きつかれ、むぎゅ! なんて変な声出た。

 ていうか、寂しさで呼んだわけじゃないし、寂しかったのはジェノさんじゃなかろうか? ソラちゃんと遠く離れて耐えれるとは思えないし。


「ソラちゃん!」

「おお! ソラリスや! とても困っていると聞いてすぐに来たぞ!」


 遅れて来たトレンティーさんとパパにも抱きしめられる。

 なんか、大事になった。ソラちゃんが掘った穴に落ちた男と馬を助けてほしいって、言っていいものか……。




 パパが、凄く不機嫌です。

 そりゃ~ね、困っているソラちゃんを助けに来たら、穴に落ちた男を助けることになったんだからね。

 その男は、ひび割れた荒野の中でテーブルを囲み、昼食とお茶をしているわたしたちの前で正座させられてる。


「で? 我が娘、魔王国の王女に対して宣戦布告したと?」

「あ……いえ……グルンド王国は、エルナーデ王国に宣戦布告したのであって……私はその布告の使者として、国境の領地の領主にそれを届ける途中で……まさか、こんな荒野に他所の王女様が居るなんて……」


 まあ、普通は荒野に3歳児が1人で居るっていう状況もおかしな話だけどね。


 ――ろ~く~しゃ~い!


 そうでしたね。そしてもうすぐ7歳だ。……だからもうちょっと落ち着こう?


「エルナーデ国は、魔王国の王女、聖女様の助けを借り豊かになった。どうして我がグルンド国には来ていただけないのかと……」

「それで豊かになった国を侵略かの? そもそもじゃな、和平交渉の場に、俺たちの前に使者として来たのは、エルナーデ国だけじゃぞ? しかも国王自らな。使者もよこさなかった国にどうして行かねばならん?」

「私たち精霊も、礼を欠いた国を助けるつもりはないわよ? 祝福をしているのはソラちゃんだし……ここはソラちゃんに決めてもらいましょう」

「あたち?」


 ――どちたらいいの?


 う~ん。とりあえず、どんな理由があっても、いきなり宣戦布告なんておかしいよ。多分、瘴気によって洗脳されてるかだよね。


 エルナーデ国の女神像は、ソラちゃんの祝福でその洗脳機能をほとんど失っているけど、他所の国は手付かずだから、国民がまた洗脳されていてもおかしくないよね? 特に王族とか……。

 

 ――じょうかちたらいいんだね!


 と、浄化するために使者の男に近づいていって。


「からだくちゃい!」


 …………。

 ……。


 ほら、幼児って正直だから。


「しゃわわ~!」


 男の頭上から水が撒かれる。

 あれだ、気にいらない奴の頭にコップの中に入ったワインをぶちまける行為。


「まあ……あれじゃ、スデリッチ殿には、俺が伝えてあげるから……」

「1週間後、進軍いたします……」


 戦争は、止められなかったです。




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