第16話:はじめてみりゅ、のひ!
ついに来た……このときが。
パパに抱っこされて頭を撫でてもらってたら、トレンティーさんが来た。
「ねえ、グランゾ」
「うん? どうしたんじゃ?」
「ソラちゃんは4歳になったのよね?」
「うむ。娘になってから1年は過ぎたから、4歳にはなってると思うが」
「魔力適正の検査を受けさせてみない?」
魔力! てことは、魔法ですよね!
――まほう!
「聖女なんじゃから、聖属性じゃろ?」
「……ねえ、あなたの因子も入っちゃってること、忘れてない?」
「そうじゃな……。本来あるはずの聖属性に、変化が起こってしまっておる可能性があるかもじゃの」
髪の毛は相変わらず、白銀に輝いてるけど、外見じゃなくて内側から変わるんだろうか?
「まほう、つかえるようになる?」
「ええ。適正が分かったら、その適正にそった練習をすれば使えるようになるわよ」
「パパ! つかってみたい!」
口から火を噴くのが憧れだったもんね。
て、それはダメ!
「わはは! 俺に火を噴けるか聞きに来てから随分と経つが、姫さんもとうとう魔法を覚える歳になったか」
「かかか! 魔法を覚えるのは歳が早いほうがいいからですからな」
「パパ! パパ!」
「わかったわかった」
やった!
――やった~!
で、連れて来られたのは、中庭。
なぜに中庭?
「なぜ中庭なんじゃ?」
パパと同じこと考えてた! ちょっと嬉しい。
「城の中だと、あなたの魔力が充満してて、検査にならないからよ」
「パパ、くしゃいもんね」
ちょっと感情さん! ときどき臭いけど、魔力はニオイじゃありません!
ほら! パパが四つん這いになって泣いてる!
「かかか! だから毎日体を拭けと言ったでしょう。お口臭いって言われたのを忘れたんですか?」
「わはは! 毎日抱っこをせがんでくるんだ。嫌われてはないぞ。だから泣くな」
頑張って慰めてあげて!
「えっと……あれは放っておいて、ソラちゃん、この宝石に触れてみて」
と、トレンティーさんが芝生の上に、直径30センチくらいの丸い透明な宝石を置いた。
言われたとおりに、右手で触れる。
「手の平に意識を集中してみて」
「……?」
あ~。わたしがサポートするから、そのまま触れておいてね。
――あい。
集中……体内の魔力を手の平に集めるイメージ?
「あ、反応があったわ……って、え?」
宝石が光り輝いて、白と黒の光の帯が螺旋を描きながら絡み合って立ち昇って、上空で溶け合い銀色の球体が出来て浮遊してる。
さらに宝石から金色の光が飛び出して、銀色の球体に吸い込まれて、白銀に輝く球体に変化した。
それだけじゃなくて、赤、青、黄、緑に光る4つの小さな球が白銀の球を中心に回ってた。
えっと……随分派手な検査ですね?
「こんなの、幾万って生きてきたけど今まで見たことない……」
そうなんですか? トレンティーさんて、結構としま……げふんげふん! 長生きなんですね?
「白は聖、黒は闇じゃな。闇は俺の因子が原因か?」
「そう……かもだけど、どうしてそれが混ざって銀色に? それに金色は光属性……それも混ざって白銀にって。しかもよ、四色の光は、それぞれの属性精霊の加護よ。まさかの全適正あり?」
「かかか。それだけじゃないのでは? 宝石の色が変わるだけの検査で、どうして空中で実体化してるのでしょう?」
「「「こんなの、初めて見る……」
――はじめてみりゅ……。
うん。わたしたちは初めてで間違いないね。