第156話:パパと、ふたりで! の、ひ!
聖騎士達による、マリーちゃんとソフィアちゃん誘拐未遂事件から3日後。
その2人が居る王都には、厳戒態勢が敷かれている。
王都に入ってくる人たちを厳しく審査するってことだけど、さすがに兵士さん達の数が足りなくて、冒険者に依頼という形で門番の質と数を確保した。
その冒険者さん達なんだけどね~。
門の周辺で、5人くらいの集団で固まって、背中に剣を背負ったりしてヤンキー座りで、王都に入ってくる人たちを睨みつけてるの。
あれだね、深夜のお店の間でたむろしている不良。武器まで持ってるからなお質が悪い。
「お? おかえり~。聖女の森はどうでした?」
「精霊様と妖精様に守られて、安全に果物や木の実が取れたわ」
「妖精様、可愛かった~」
「それはよかった!」
と、母親に手を引かれ、背負った籠一杯に果物を入れた少女に笑顔で手を振る冒険者。
うん、見た目だけはヤンキーなんだよね。
「パパ! はやくいこ!」
「そんなに慌てなくても、すぐそこじゃぞ」
急かすように、抱かれたままパパの頬を頭でグリグリしてやる。
頬と頬をすりすりじゃなくて、頭でグリグリ。だって、頬だと届かないんだもん。
――ちかたないよね!
ね~。これも愛情表現の1つだし~。
特に今日はパパと2人だけでお出かけだから、嬉しさが爆発してるよ。
「お! 聖女様! パパとお出かけかい? 祝福しに行くのか?」
「しょう! しゅくふく~」
「はっはっは! 孤児院の2人を守ってやってくれ」
「へい! がんばりやす!」
冒険者さん達に手を振ると、冒険者さん達はデレっとなって、頬が緩みっぱなしになる。
街の皆は、もう全員がソラリス教なんだよね~……。
で、やって来ました、祝福予定地。
まあ、場所はグリルチキンと戦った場所なんだけど。
祝福っていうよりは、修復だね……。
――しゅごい、ぼこぼこ~。
だね~。ソラちゃんの魔法は凄いね~。
――あたちじゃないもん! ちらないひとだもん!
そ、そうですか……。
グリルチキン、あんた、名前すら覚えられてないよ。
「ソラリスや。ここは森を1、畑を6、草原を3の割合でしてほしいそうじゃが、できるかの?」
降ろしてもらって、パパと一緒に地図を覗き込む。
言葉じゃなくて、絵で書いてくれているから分かりやすいけど。
「おはなばたけは?」
「それは今回はなしじゃの。ここの反対側の土地を貰ったじゃろ?」
「え~」
え~じゃなくて、仕方ないでしょ? そんな一杯にお花畑を増やしても、お世話するのが大変だよ?
――ようしぇいしゃんに、おねがいしゅる!
頼ってばかりじゃダメだよ。自分で育てて、愛情いっぱい注いで、綺麗なお花をさかしてあげなきゃ。
――しょか~。
「よし。始めるかの」
「あい!」
パパが魔力を地表に広げて、ソラちゃんがそこに祝福をかけていく。
これは、先日に開発した1番安全な祝福だ。
何が安全かって、暴走しないことだね。大好きなパパの魔力を目印に、そこにソラちゃんが愛の祝福を流すんだもん。暴走するはずないよね。
――ソラしゃん! はじゅかちいから、しぇちゅめいちなくていいの!
……ソラちゃん、羞恥心なんてあったんだね。
――だって、パパとだもん!
ごめんごめん。ちょっと落ち着こう?
「ソラリスや。ちゃんと集中したかの? 全部、花畑になっとるんじゃが」
――あ。
あ。