第155話:みっちょん、たっしぇい! の、ひ!
――ソラしゃん! ひかってりゅ! これどうしゅるの!?
ちぇかじゅのだに、聖剣の光を移すことに成功して、ソラちゃんが何故か興奮してそれを振り回す。
アヤネちゃんとリンバーグさんは、弾け飛ぶようにして距離を置く。
うん。賢明な判断だ。
で……とりあえずだ。
ソラちゃ~ん、振り回すと危ないよ~。
――あ、しょか。
「よっこいちょ」
ペタンと、その場に座り込む。
いや、そこまでリラックスしろって言ってないですよ? 振り回すと危ないよとしか言ってないよね?
……激戦跡の荒野に、学園の制服を着て、眉にかかるくらいで切り揃えられた白銀の前髪をそよ風になびかせて、その絶世の美幼女と称えられるくらいに整った顔で、目の前で光る剣をむふふ~と笑みを浮かべる3歳児。
――ろくしゃいでしゅ!
あ、はい。そうでした。
「ぬがぁぁぁ!」
あ、グリルチキンが地面にめり込んだ頭を引き抜いて復活した。
「我を前にして寛ぎ過ぎだろう!?」
もっと言ってやって!
「だが、正々堂々と戦いたいという意思は気に入った!」
「しぇいしぇいど~ど~?」
「うん? 我が気を失っている間に攻撃を出来たであろう?」
「しょのてがあった!」
「……」
はい。知恵を与えちゃいましたね~。今度から気絶したら問答無用でやられちゃうよ?
正々堂々? そんな言葉知りません。だって、幼女だもん。
「まあ、いい。我の剣は……」
グリルチキンが剣を探すために背を向けて。
「しぇいしぇいど~ど~こうげき!」
因子開放してその背中に斬撃を……って、それは正々堂々とは言いません!
「ぬお!? それは正々堂々とは言わないぞ!」
ですよね! ですよねぇぇぇ!
グリルチキンは、正面から受け止めるために、正面をこちらを向けて……。
「あ?」
くるっと向いたタイミングで、瘴気を纏ってない腹に、ちぇかじゅのだが突き刺さった。
背中には瘴気があったのにね~。ソラちゃんの声に反応して振り向いちゃうから。
「む~~~~~!?」
グリルチキンが足をばたばたとさせながら、腹を抑えて転げ回る。
痛いね~。聖剣の力も加わってるから、凄く痛いよね~。わたしは何もしてないけど、なんか、ごめんな~。
――ソラしゃん! しぇいしぇいど~ど~、きまっちゃ!
そうだね……。帰ったらさ、色々な言葉の意味、勉強しようね。
――べんきょうやだ! がくえんで、じゅうぶんだもん!
学園でもほとんど勉強してないでしょ!?
「くっはっは! ラッキーな攻撃が当たってしまったようだな。だが、全身を瘴気で包めばどうかな?」
瘴気が、グリルチキンの全身を包んでいく。
最初からそうしとけよって叫びたい。
――ソラしゃん、こうたいしゅる?
あ、そうだね~。勇者の力も試したいし。
アデルの記憶はないから、使ってたはずの剣技はなにも覚えてないけど、こっちで作っちゃえばいいかな?
「何かをしようとしているな? よかろう、受け止めてやろう!」
あらま、無防備で腕組みですか? 瘴気で守られているから自信満々だね~。
じゃあ、遠慮なくいくよ~!
イメージは、ちぇかじゅのだに宿った光を飛ばすイメージで!
「しゃいにんぐぅぅぅ『ぴゅりふけちょちょ!』しゅらっしゅ!」
あ、あれ? しゃいにんぐぴゅりふけちょちょ! すらっしゅ?
なんかね、ソラちゃんの介入で、厨二病を更に拗らせたような技名になりましたよ?
まあ、そんな恥ずかしいような技名の光が、浄化の光も上乗せして飛んでいき、余裕で受けたグリルチキンの瘴気を光の粒子にして掻き消し、消滅させた。
結論。聖剣の光と浄化の光が合わさると凄く強い。
「……あれだな。女神シットブケーネ様の夕食の準備をしないといけない時間だから、我はここで帰らせてもらおう。てことで、この勝負は引き分けな」
と、転移して姿を消し去っていった。
ていうか、引き分け? ……うん。決着がついてないから引き分け……なのか?
聖騎士達も退却していっているし、戦闘は終了だね。
――まりーちゃんとそふぃあちゃん、まもれてよかったね!
そうだね!
しかし、向こうの世界のシリアスな雰囲気と、こっちの、戦闘も何故かほのぼのとしちゃうギャップが凄すぎる。
これも、ソラちゃんくおりて~なのかな?
このパート、サクッと終わるつもりが、ここまでかかっちゃった。
――だめでしゅよ、ちゃんとかんがえてかかないちょ!
だったらさ、もうちょっと暴走を抑えてくれませんか?
――でへへ~。
……まあ、いいか。