第152話:ただいま……おかえり! の、ひ!
ゲートを抜ければ、そこは空の中だった。
今は精神生命体だからか、空中にふわふわ浮いている状態。
そこから地上を見てみれば、草原は穴だらけ。火柱があっちこっちで立ち昇り、いくつもの竜巻が荒れ狂う。
ソラちゃんが洗脳されて、世界の終わりが? 手遅れだったのか?
と、絶望しかけていたら、視界にぴょんぴょんと飛び跳ねながら、周囲に火の玉を巻き散らしているソラちゃんが居た。
さらに、パパが張った結界に集まって身を守っている皆と、逃げ惑う聖騎士達……。
こっちでは大して時間が経ってなかったようでよかったけど、この状況は何?
どうして無差別攻撃してるの? ……いや、それはいつものソラちゃんか。
いやいやいや! あのぴょんぴょん跳ねたりしている行動は何?
とりあえず、ソラちゃんの中に戻るために近づいてみるか……。
てことで、ゆっくりとソラちゃんの頭上に降りていくと、心の声? みたいなのが聞こえてきた。
――やぁぁぁなの!
『大人しく我に従え!』
――ちらないひと、でてって!
『こら! 勝手に魔法を使うなと言ってるだろ!』
――ばぁぁぁか! ソラしゃんちか、だめなの!
『く! 何だこの自我の強さは!? 支配できぬだと?』
何かね、口喧嘩? 口論? してたよ。
まあ、ソラちゃんが抵抗して、それが魔法乱射って形で制御不能になったってことかな?
ていうかね、感情ソラちゃんを御することが出来るのは、理性のこのわたしだけなんだよ!
わたしは体を光に変えて、ソラちゃんの体に重ねた。
『な、何だお前は!』
お前が何だよ? ソラちゃんの隣に並んで立てるのは、このわたしだけなんだよ!
向こうの世界で目覚めた勇者の力を開放して、天使の思念体をソラちゃんから弾き出してやった。
――ばぁぁぁか! でてけ!
荒れてますね~。ていうか、わたしだよ! わたし! わたし、帰ってきたすぐに追い出されちゃうの?
――……ソラしゃん?
うん。わたしだよ。
――どちてきゅうにいなくなたの! ちらないひときて、もぉぉぉ! だったの!
いや、ごめんね。
――いなくなたらだめでちょ! じゅっといっちょなの!
うん、そうだね。
――ソラしゃんいなくなったから、しゅごいことになちゃたの!
ほんと、周りが凄いことになってるね~。
あれだね。ソラちゃんが支配されようとされなかようと、結果は変わんなかったと。
――ソラしゃん、かわりにおこられてね!
あ、はい。
……あれ? それっておかしくない? おかしくない……のか?
まあ、わたしが弾き出されちゃったのが原因だしね。
――きかやこぼれちまきゅにょ!
な、なんて?
――いってみただけなの!
そ……そうですか。
うん。ソラちゃんを御することができるのは、わたしだけ。
できてないって? わたしとソラちゃんはこれが平常運転だからいいんです。
成長して大人しく魅力があるナディアもよかったけど、やっぱりソラちゃんはこうでなきゃね。
ソラちゃん。
――にゃに?
……ただいま。
――おかえり!