表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/291

第15話:ソラしゃん、まいごの……ひ!

 いつもの如く、騒ぎを起こしながらゆるりと日々は流れて、ここへ来てからそろそろ1年は経つんじゃないだろうか?

 それだけ経てば、感情だって成長したっていいはずなんだけど、そんな思いも虚しく、今日も騒ぎを巻きおこす!


 絵本を読んでくれていたジェノさんが、おもむろに立ち上がった。


「ちょっと、トイレ行ってきますね。大人しく待っていてくださいね?」

「あい!」


 シュタっと右手を上げて元気よく返事をする。

 ジェノさんはにっこり笑顔を向けてから、部屋を出ていった。


「むふふ」


 こらこら。何をするつもりだ?


 ――おしょと、いこ。


 あの元気な返事はどこに行ったのかな?

 まあ、わたしも幼児の狭い行動範囲に退屈してたところだけど……。

 うん。部屋にドアが無いのがいけないんだよね!

 てことで、主導権を完全に感情へ。




 廊下をパタパタ走る。

 多少、手足が長くなり、筋肉も発達してきたからか結構速い。


 そして、辿り着いた城の外。


「しょら、あおい」


 晴天である。

 さて、今日までは、外に出るのはパパとお散歩するときだけだったんだけど、今は1人。

 お城の周りを回って、中庭まで行って戻ってくるっていうのが散歩コースだったんだけど、どうするのかな?


「こっち、なに?」


 はい。感情の赴くまま、興味が湧いたところへ駆けていきますよ~。


 お城の正面は、大きな道になっていて、道の両側に街路樹が植えられている。

 その道の先に興味がでたらしい。

 当然、わたしもその先は知らないから、ちょっとワクワクしてきた。


「あ!」


 何かを見つけたのか、急に方向転換して茂みの隙間に入り込んでいく。

 わたしは道の先が知りたかったんですけど。

 興味移りが早すぎません?


「あれ? いない?」


 何がですか? わたしは道の先を注視してて何も見えなかったんですけど。


「あれ?」


 しゃがみ込んで、茂みの中を覗き込む。

 小動物か何かかな? 走って追いかけたから、逃げちゃったんじゃないの?


「あっち?」


 いや、どっちに逃げたかは知らないよ。


 あまり手入れをされてないのか、鬱蒼とした茂みの中に更に入り込んでいく。

 その草で出来た茂み達も、当然の如くわたしよりも背が高い。


「あ!」


 なんだ! 見つけたのか?


「アップルあった」


 見上げた先には、大木に実る沢山のマジックアップルがあった。

 魔力の最大値をアップさせるリンゴって、普通に実ってるんだな。貴重な果物だと思ってたよ。


 て、あの……さっきまでの探し物はもういいんですか? そうですか。


 う~ん。このわたしの不完全燃焼感。興味が多いことはいいんですけどね。

 もうちょっと、こう……1つの物事を完結させてですね……。


「おなか、しゅいた」


 うん。いっぱい動いたからね。


「ここ……どこ?」


 はい?

 あれ……緊張と不安な感情が広がってるんですけど。

 背の高い茂みで周りが見えないしね。

 ……まさか、迷子ですか?


「うわぁぁぁん!」


 ――ソラしゃんのばかぁぁぁ!


 わたし!? わたしのせいなの? ていうか、心の中で直接ばかって言ってくるの止めて!


「そぉぉぉぉらぁぁぁぁりぃぃぃすぅぅぅ!」


 ど~ん! て、パパが空から降ってきた!


「パパァァァ!」

「おお! ソラリス! 居なくなったと聞いて心配したんじゃよ! よかった! 城から泣き声が聞こえるくらいすぐ近くで!」


 すぐ、近く?


 抱き上げられてパパの首にしがみつくと、目の前にお城が見えた。


 知ってるか? 幼児って、狭い行動範囲で迷子になるんだぞ。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ