表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/291

第141話:みんな、まけじゅぎらい! の、ひ!

「待て~! 捕まえちゃうぞ~!」

「「きゃ~」」


 広い平原で、男たちの手から逃げ回る。

 あ、いや、別に襲われているわけじゃないよ。

 泣いちゃって大人しくしょんぼりしてたら、騎士の比較的ハンサムな青年のエリックさんが、追いかっけこしようと提案してきて、今それをやってる。

 アリアちゃんはさすがに参加してないけどね。あの子、本物の淑女だし。

 アリアちゃんはラチカさんと、テーブルをセットしてお茶を楽しんでいる。


「平和ですわね」

「はい。グランゾ様たちが先行して、周囲のモンスターを狩ってくれていますからね。ですが、この光景は、追いかけっこと知っていなければ、幼女を追いかけまわす変態……案件ものですね」


 なんて言っている2人の元に突撃~!

 必殺、テーブルの下通り抜け~!


「きゃ~! ちゅかまらないもんね~!」

「く! ちょこまかと!」


 と、騎士さんも背を屈めてテーブルの下に。


「「きゃぁぁ!」」


 轟くアリアちゃんとラチカさんの悲鳴。

 2人は慌てて立ち上がる。


「何してますの!」

「座っている女性の股を覗くなんて!」


 パン! パン! と、ラチカさんによる往復ビンタの音が3回響き、3人の騎士さん達は、両頬を真っ赤に腫れ上がらせて正座させられていたよ。


「「なんで俺たちまで……」」

「連帯責任です!」


 ――たのちかったね。


 うん。……騎士さん達には申し訳ないことをした気分だけど。




 さてさて、ちょっと遅めの昼食をみんなで美味しく食べた後、ソラちゃんにさり気なく聞いてみることにした。


 で、祝福はいつやるの?


 ――え~。もっと、あしょびたい。


 ソラちゃんは幼児である。使命よりも遊び優先。だって、アリアちゃんも居るし、ソフィアちゃんとマリーちゃんというお友達も居るんだからね。

 そりゃ~、遊びたいよね。


 じゃあ、大人たちが祝福を優先したいのに、どうしてアリアちゃん達を同行させたかっていうと、これが今回の核心の部分。

 前回の祝福で、ソフィアちゃんとマリーちゃんの体が反応して光ったっていう現象。

 2人に共通しているのは、妖精に祝福されているってこと。

 アリアちゃんは、精霊女王のトレンティーさんと、4大精霊の祝福を持っている。

 で、今回はその妖精と精霊の祝福の力を借りて、ソラちゃんが大地に祝福をかけるとどうなるか? ていう、実験みたいなものをするんだよね。


 さて、ソラちゃんのやる気をどうやって引き出すかだけど……。


 ソラちゃん、ここで凄い祝福を成功させると、パパが絶対喜んで褒めてくれるよ。頭なでなでだよ!


 ――ソラしゃん! しゅぐやろう! がんばりゅ!


 ふっ……。パパを素材として出せば、すぐにやる気になる。どこまでパパのことを好きなんだろうか?


 ――けっこんちたいくらい!


 そうでしたね~。うん、知ってた。




 アリアちゃんとソフィアちゃんとマリーちゃんが、正三角形の形で位置に着く。

 ソラちゃんはその3人の中心に立つ。


 ソラちゃんが屈んで~……ジャンプ!

 着地してから、ちぇかじゅのだを持った右手を空高く掲げて!


「いくよ!」


 毎回思うけど、ジャンプする意味はあるのかな? そのままポーズ取るだけじゃダメなの?


 ――うるちゃいでしゅよ!


 ごめんなさい!


「妖精さん!」

「でてきて!」

「土の大精霊ガイアス様! お力をお貸しください!」


 ソフィアちゃんとマリーちゃんからは、体長15センチほどの女の子の姿をした妖精が。アリアちゃんの前には、髭を生やしたジジイが現れた。


『ちなみに、ワシはガイファスな』

「す……すみません」

「アリアおねえちゃんに、おこっちゃだめでちょ!」

『申し訳ありませぬ! ソラ様!』


 すっごいペコペコして謝ってくる。ソラちゃんの立場って、4大精霊よりも遥かに上なんだな~。

 ていうか、脱線しまくってるね。


 ――ソラしゃん! いくよ!


 はい! いきます!


「『はーべしゅとぶれーちんぐ!』」


 ソラちゃんから溢れた光が広がっていき、それを受けた妖精とガイファスさんの体も光輝いていって。

 そこで、ある変化があった。


(すごい聖なる力!)

(気持ちいい! 進化しちゃう~!)


 妖精さん達の体が大きくなっていって、身長140センチほどの少女の姿になった。


(中位精霊マリアンヌ!)

(中位精霊ソフィアレーナ!)

((超進化! 爆誕!))


 スカートの裾を摘まみ、綺麗なカーテシーを決めた。

 言葉と仕草があってないけども。まあ、気にしないでおこう。


(ソラ様の豊穣の力!)

(増幅!)


 ソラちゃんから出た光が輝きを増していって。


(草木よ! 生い茂れ!)


 草が次々と生え、木々が大地より生まれ、草原と森が広がり。


(水よ! 大いなる流れで大地を潤いで満たせ!)


 森の中にいくつもの泉が生まれ、流れ出た水が草原で1つになり、大きな川になった。


『その程度かの? グランゾ様には敵わぬが、これくらいしないとの! 大地よ! 躍動せよ!』


 大地がせり上がり、2つの大きな土山になった。


(土を盛っただけじゃない! 木よ、覆い茂れ!)

(水よ! 湧き出て滝になれ!)


 土山は、木々が茂る滝のある山になった。


『まだまだ! ふんぬ~!』

((負けないんだから!))





 気付いた時には、わたしたちは森と山に囲まれて、その森の中の開けた草原の中心に佇んでた。


「あの……農地はどこにあるのでしょう?」

「森の開拓団を組織するしかないですね」

「「「木材は取り放題ですね!」」」


 王都に近い領地で、辺境開拓に近いことになってるよ?


 ――やりしゅぎね!


 うん。まさか競い合うとは思わなかったよ。


((ごめんなさい! ごめんなさい!))

『申し訳ありませぬ~!』


 謝りながら、す~っと消えていったよ。


「えっと……どうしましょう?」

「森って、馬車が通れる道ないよ?」


 アリアちゃんとマリーちゃんが周囲を見回し困惑し。


「そらおねえちゃん、お花いっぱい!」

「こっちも! きれいだね!」


 ソラちゃんとソフィアちゃんは、きゃっきゃと草原を無邪気に走り回る。


「「「アリア王女殿下、どうやって帰りましょう?」」」


 トレンティーさぁぁぁぁん! 迎えに来てぇぇぇ!



「これで50匹目!」

「うむ。アヤネ、ご苦労じゃな」

「いえ、ソラちゃんも頑張ってますからね!」

「あ、これはソラちゃんの豊穣の光ね」

「「「……て、森が追いかけてくる~!?」」」

「範囲外まで逃げて~!」

「……これは」

「あの子達、やり過ぎたわね。ちょっと迎えにいってくるわね」

「よろしくの……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ