第140話:あしょんだあとに、しゅるよ? の、ひ!
教会でいろいろあったけど、今日は大地に祝福をかける日だ。
王都から南の地にある領地へと来た。
今回はパパ達は同行してない。王国の馬車でのんびりと来た。
「アリアおねえちゃん、こっち! はやく!」
「ソラちゃん! 走ると危ないですわよ!」
そう、今回はアリアちゃんと一緒に来てるんだよ。
そして、ソフィアちゃんとマリーちゃんもね。
ソラちゃんとソフィアちゃんとマリーちゃんは、馬車から降りるとその開放感からすぐに走り出しちゃった。
とてとてとて……ぼて! ぼて!
ソラちゃんが転んで、後ろから追いかけてたソフィアちゃんが巻き込まれて転んだ。わたしたちの背中の上に。
「「うわぁぁぁん!」」
「危ないと言いましたのに!」
「ソラおねえちゃん、ソフィア! 大丈夫?」
慌てて駆け寄ろうとした2人よりも先に。
「「「ソラ様! ソフィア嬢! 今助け起こし」」」
護衛として付いてきてくれている3人の騎士さん達が、ガシャガシャと鎧の音を鳴らしながら駆け込んできて。
ガコン! がしゃ~ん!
「「「ぐあぁぁ!」」」
お互いぶつかり合って転んだみたいだね。
いや、わたしはソラちゃんの視点でしか見えないから、今は土と睨めっこしてるんですけどね、音と声で大体のイメージは出来るんですよ。
「ソラちゃん、ソフィアちゃん、ほら、お立ちになって。どこも怪我してないですわね?」
「うん」
「だいじょぶ」
さすがアリアちゃんはこの中で年長さんで王女だ。孤児院の子とも分け隔てなく接してくれて、慈愛に満ちている。
「王女殿下! 我々も起こしてください!」
「おバカですの!? どうしてフルプレートなんて着てきたんですの? 軽装鎧で十分だったではないですか?」
全身鎧は、1度倒れると1人では起き上がるのが難しいみたいだね。
「先のモンスターピートを警戒をしてですね……」
「たった3人しか居ない護衛騎士が、満足に動けないフルプレートでモンスターピートを戦うなんて、かえって邪魔ですわ!」
――ソラしゃん! おねえちゃん、こわいね!
そうだね……。でも、言ってることは正しい……のかな?
結局、騎士さん達はアリアちゃんの侍女、ラチカさんに助け起こされ、ラチカさんから「役立たずですね」とか、鎧を脱いだあと、「汗臭いから近づかないでください」と、小言を言われ、落ち込んでたよ。
で、その間にソラちゃん達が何をしてたかというと。
「おえかき~」
だよ。
ここの地面は、ぱさぱさとした草があまり生えてない白い土でね。ソラちゃんが木の枝で地面にお絵描きしてるの。
「ねこしゃんのおみみ~。おひげ、ちょんちょん」
「そらおねえちゃんのかいた、ねこさんかわいい!」
ソフィアちゃんも可愛い絵に大喜びだ。
「私も描きたいけど、枝なんてないよ?」
マリーちゃんが辺りを見回すけど、近くには林や森なんてなく、木も生えてない荒野と言ってもいい平原が広がっている。
そういえば、いつの間にか手に持ってたね。
「あら? ソラちゃんはどこからその枝を持ってきたのでしょう?」
わたしが聞くよりも早く、アリアちゃんが聞いた。
、そしてソラちゃんは元気よく。
「ちぇかじゅのだ!」
……。
「「「……――!?」」」
は? 神話級の世界樹の枝をお絵描きの道具に?! そりゃ、大人たちは絶句するでしょ!
「ソラちゃん! 世界樹の枝は神話級のものですわよ! それを地面に突き刺してガリガリとしてしまうなんて!」
「う……うわぁぁぁん!」
「ああ! 泣かなくてもいいのですわよ! ごめんなさい、きつく言い過ぎましたわ! どうしましょう……」
優しく抱きしめてくれているけど、なかなか泣き止まない。
こういうときは……ジェノさぁぁぁん! どうして今日に限って付いてきてくれてないのぉぉぉぉ!
「おい、お前娘が居ただろ?」
「いや、俺の娘はあんな大泣きしたことないから……」
「こういうとき、男は役立たずだ……」
「「「……祝福はいつになるんだろうな」」」