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第138話:こわれちゃった! の、ひ!

「ソラ様! 待ってください!」

「やぁぁぁ! なの!」


 ソラちゃんがオムツ1枚で廊下を駆け抜け、ジェノさんが両手でドレスを持って追いかける。

 小柄なソラちゃん、ダイニングテーブルの下を難なく通り抜けちゃう。

 それに対して、ジェノさんはテーブルを避けないといけない訳で。


 ドタドタ……違った。とてとてとて。 


「ソラちゃん! 止まりなさい!」


 廊下の角からトレンティーさんが現れた。

 両手を広げて威嚇している!


「うんでーねしゃん!」


 水の大精霊ウンディーネを召喚!

 ウンディーネはトレンティーさんの頭の上から水をぶっ掛けた!


「ちょ! こら!」


 怒るトレンティーさんの足元、水で濡れた廊下をオムツのお尻で滑り抜ける!


「ちゅかまんないもんね!」


 ウンディーネさん、精霊女王の頭に水を掛けて大丈夫なんだろうか? 後で説教されるんだろうな~。

 それはソラちゃんもだけど。


「うん? ソラリスや」


 リビングルームからパパが現れた!

 パパは屈んでにっこりと微笑み、両手を突き出している!


「おいで、ソラリス」

「パパ!」


 パパに飛び込み、しっかりとキャッチされて抱きかかえられる。


 ――あ。ちゅかまっちゃった!


 捕まった……のか? 自分から飛び込んでいったでしょ?


「ソラ様~! どうして逃げるんですか?」

「ぷぅぅぅ!」


 抱かれたまま頬を膨らませると、そのぷっくら柔らかい頬をつねられる。


「あ~! ぷにぷに柔らかほっぺ! 小さい唇も吸い付きたくなっちゃいますね」


 ジェノさん、こんなだから逃げられるんじゃないのかな?





 さてさて、どうして普段着のワンピースじゃなくて、ドレスを着るために追いかけっこをしていたかというと、王都防衛戦での聖女の功績を称えようという式典が大聖堂であるためだ。

 教会って、式典が好きだね。


 お昼前に大聖堂に着くと、まだまだ準備の途中だった。

 大聖堂の入り口前に、小さいながらも立派な祭壇が設置され、祭壇の上には木で彫られた女神像が置かれていた。

 その祭壇のお供え物を女神官さんが慌ただしく運んでいる。

 この小さな祭壇は、聖堂の中に入りきれない人たちのために用意されているらしい。

 

「あたちも、てちゅだう!」


 え~? 主役なんだから、大人しくしておいたほうがいいんじゃない?


 と、提案も空しく、ソラちゃんは脇に置かれた木箱の所に駆け寄っていく。


「まあ! 聖女様がお手伝いを! 感謝いたします!」


 トレーの上に果物を載せて準備していた女神官さんが、感極まったっていう顔でお祈りのポーズを取ってくる。

 聖女っていうのは、教会関係者には絶対的な存在らしい。


「なに、ちたらいいの?」

「では、この果物のトレーを祭壇の女神像の横に置いてきてください」

「あい!」


 トレーを両手で受け取り、とてとて……よたよた……ふらふら……。

 なんとか祭壇まで辿り着いたけど。


 ――ありぇ? とどかにゃいよ?


 うん。ちょっと祭壇のほうが高いね~。


 祭壇の高さはソラちゃんの頭よりもちょっと上……100センチくらいかな? 両手を斜め前に突き出して乗せようとしてるから、トレーの高さは目線の高さしか持ち上げられてないし。

 しかも、斜めになったトレーからすでに果物は転げ落ちてるし。


「いんちかいほ~!」


 なんのために?


 ――ありぇ~?


 ソラちゃん……因子開放で背が伸びるわけじゃないよ……。ちょっとジャンプしたら届くかな?


 トレーの果物はすでに無いし、激しい動きしても大丈夫でしょ。


「ぴょん!」


 軽く跳ねて、祭壇の高さが胸のあたりまで来たとき、トレーを突き出す!


 ガン! と、トレーが女神像に当たり、ゴトン! と跳ね飛ばされた女神像が床に落ちて、ボキ! と、木で出来た女神像の首が折れました。




 準備が終わるまで、パパにしっかりと抱かれております。

 ソラちゃんが何もしないように! です。


 で、全ての準備が終わったようで、式典が始まった。

 大聖堂の中には、司教さんや司祭さん達、騎士さん達も居る。

 司祭のヒドイメアーウさんが一心不乱に拝んでいたけど、無視しよう……。


 大聖堂の中の祭壇の前で立派な聖衣のローブをきたお爺さんがいろいろと語ったあと、ソラちゃんがあの大氾濫の時とことを話すってことになった。

 聖女として、冒険者さん達を回復したり、守ったりしたことを話してほしかったようだけど。


 祭壇の前に立つ。背後には立派な祭壇と、その更に後ろに、壁に埋め込まれるようにして大きな白い女神像が立っている。

 ただし、その顔は半分ない。何故だろう?


「えっちょね~。いっぱいきて~、ぼん! てちたり~、ぼぼぼんってちて~、そらしゃんがじゅばってきって~、しょれでもおおくてね、みんなをぱ~ってやったりちたの」


 ぱ~っていうのは、回復の光かな? ……いや、皆にはこれ分かんないだろうな~!


「えっと……聖女ソラ様、最後に行った聖女様しか出来ない浄化をしてもらってもいいでしょうか?」


 理解出来なかったか。そもそも、幼女に語らすのが間違っている!


「いいよ!」


 ――ソラしゃん!


 はいはい。


「『ぴゅりふけちょちょ!』」


 浄化の光がソラちゃんの体から弾けて広がり。


 ガシャン! ガラガラ! カラン……カラン……。


 何故か、女神像が砕け散り、その残骸から黒い靄が浮かび上がって、浄化されて光になって消えていったよ。


「「「……」」」


 静寂に包まれる大聖堂。


 ――ソラしゃん……。


 大丈夫、ソラちゃんは全然悪くないよ。うん!


 ……女神像から瘴気って、どういうこと?



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