第137話:げきしぇんのあとを、みにいくの! の、ひ!
午後の授業は野外学習ということで、クラスの皆と街の外へお出かけしてるよ。
3台の馬車が用意されて、生徒の乗る馬車、従者の乗る馬車、教師が乗る馬車に分かれてる。
わたしの両隣りにはアリアちゃんとクロースちゃんが座り、対面にはフェルノ君とベエルフェッド君が座ってるんだけど、普段女子の対面に座ることがない男子2人の顔はだらしなくニヤケテる。
ソラちゃんが1番可愛いけど、アリアちゃんもクロースちゃんも凄く美少女だからね。
さすが王族と貴族令嬢といったところか。
「アリアおねえちゃん! あれなに?」
ソラちゃん、馬車の窓から見える街の景色に大興奮である。大興奮しすぎて、四つん這いでアリアちゃんの膝の上に乗っちゃってる態勢。
「あれは劇場ですわね。絵本の物語をお芝居で楽しむのですわ」
「おちばいか~」
――えほんのおちばいだったら、とかげしゃんとおひめしゃま、みえるのかな?
見えるんじゃないの? ていうか、毎日本物のお姫様とドラゴ……とかげさん見てるけどね。
――ソラしゃん、いちゅのまに!
今、ソラちゃんが四つん這いになって膝の上に乗っちゃってるの、この国のお姫様だからね!?
――わしゅれてた!
忘れないであげて! そして、わたしたちも、名目上はお姫様だからね?
で、目的地に着きました。
ここは冒険者さん達と防衛戦を繰り広げた広場だ。
周りでは、冒険者さん達が土魔法を使って、凸凹になった地を平らにする作業をしていた。
依頼として報酬が出ているのかな?
――また、いっぱいくるかな?
来ないと思うよ。ていうか、来てほしくないよ。
せっかく平らにしたのに、また凸凹にしたちゃったら、この冒険者さん達が可哀想だ。
「1年特別クラス、集合!」
リンバーグさんの声が広場に響き。
「ゆうちゃ、うるちゃい!」
「ぐぼぁ!」
ソラちゃんの怒号が木霊して、飛び膝蹴りがリンバーグさんの左太腿の側面に突き刺さる。
「叔父様!」
転げ回るリンバーグさんへアリアちゃんが駆け寄る。
ソラちゃん……因子開放を使った?
――ちゅかってない。かじぇのしぇいれいしゃんに、とばちてもらった。
大丈夫か? 左脚、千切れてないよね?
「ソラちゃん」
「こっちにおいで」
フェルノ君とベエルフェッド君が手招きしている。
「あい! に~たん」
「「ぐぼぁ!」」
お兄ちゃん……に~たん呼びで、2人は崩れ落ちた。
絶世の美幼女の破壊力よ……。
――あたち、なにもちてないよ?
あ~、うん。ソラちゃん、どうして急におに~たんって呼んだの?
――にゃまえ、ながいから。
……特別懐いたわけじゃなかった。
「ソラ様、大人しくしていましょうね」
ジェノさんに抱き上げられる。
ジェノさんとアヤネちゃんも来ているんだから、こうなるって半分知ってた。
「あ~。皆集まったようだな。ソラちゃんの戦いを解説してほしいという要望で、ここまで来たが……」
皆が周囲を見回す。
「地形が変わるほどの激戦があったことが分かるな」
激戦……。99%、ソラちゃんの魔法による地形変動ですが。
――でへへ~。
楽しんでたよね~。
「この場で、少ない人数でモンスターの集団を足止めしてくれていたから、王都への被害がなかったんだな」
うん。みんな頑張ってた。
「この激戦跡を見ても想像できるが、犠牲になった冒険者も居るだろう……」
ソラちゃんが破壊した地形でどんな想像を……。ソラちゃんの回復魔法でみんな元気ですけど。
「勇敢に戦い、散っていった英霊達よ……」
散ってないよ?! みんな生きてますからね!?
――やっぱり、ゆうちゃって、ばかだね、ソラしゃん!
そうだね! 今回はソラちゃんに激しく同意だよ!
でも、今回はみんな無事だったけど、過去には犠牲になった人も居るんだろうな……。
「ゆうちゃの、ばぁぁぁか!」
今言っちゃだめぇぇぇ! 空気読んでぇぇぇ!