第135話:だいはんらん! の、ひ!
ぴゅりふけーしょん。頭の中に浮かんできた浄化の魔法。
これね、ソラちゃんだと、ぴゅりふけちょちょ! になっちゃう。
で、ソラちゃんの意見としては、わたしのほうが合わせないとダメらしい。
――あたりまえでちょ!
と、いうことらしい。
1回目失敗したから、ちょっと不機嫌なんだよね。
ねえ? 聖魔法で攻撃ってあるの?
――むっふっふ~。
あるらしいです。わたしの中にもその魔法が浮かんできました。
あとは合わせて唱えるだけ。
右手をオーガロードに向けて。
「『じゃっじめんと!』」
オーガロードの真下に魔法陣が浮かび上がって、ばしゅん! と、光の柱が噴出しましたよ。
いやね、伸ばして向けた右手から何かが飛び出るのかと思ってましてね?
誰だって思うよね? 伸ばした右手の意味は?
オーガロードは、じゃっじめんとにより、右半身がごっそりとなくなっていた。
周囲の瘴気も消し飛ばしている。
――やっちゃ?
あ、ソラちゃん、それ言っちゃダメなやつ。
――えうぅ?!
ほら、瘴気がオーガロードに集まっていくでしょ?
そうしたらどうなるか? 答えはね、体の回復ですよ。
回復だけじゃなくて、瘴気を取り込んで一回り大きくなってるし。
――じゅるいぃぃ!
ほんとにね!
根本的な問題として、今の状況を打破しないといけない訳で。
で、今の状況っていうのは、際限なく溢れてくる……。
――ソラしゃん! おちっこちたい!
際限なく溢れる尿意!
違うから! 違わないけど違うから!
早く瘴気をなんとかしないと! ソラちゃん! もう1回浄化をするよ!
――え~?
わたしが合わせるから~! いくよ~!
「『ぴゅりふけちょちょ!』」
胸の前で手を組み、祈るようにして唱えると、その手に光が集まって大きくなっていって、その光を弾くように両手を広げると、全周囲に白銀に輝く光が広がっていった。
白銀の光は、瘴気から生まれたモンスターを全て掻き消し、瘴気も光に変えて消していった。
瘴気を纏ってないオーガロードなんて、大きくてもただのオーガロードだ。
「『じゃっじめんと!』」
オーガロードの足元から噴き出した光が収まると、そこにはオーガロードの姿はなかった。
大氾濫によって溢れたモンスターも、ボスのオーガロードも、元凶の瘴気も完全消滅だ!
「かかか! さすがは姫さんですね!」
駆け寄ってきたホーネさんに抱き上げられた。
ホーネさんはアンデッド。浄化の光は大丈夫だったのかな?
「ほねしゃん、だいじょぶだったの?」
「はい! 優しい光だったですよ」
骸骨だから分かんないけど、微笑んでくれているんだろうな~。
ま、ホーネさんは元勇者のアンデッドだからね。聖なるアンデッドって感じだし、浄化の影響は受けないんだろうね。
皆の元にホーネさんに抱かれたまま戻ってきた。
ホーネさんから降ろされると、戦い終わって疲れているはずの皆が集まってきて、騒ぎ出す。
「凄い戦いぶりだった!」
「そうね! 回復も凄いし、攻撃魔法も凄いのね!」
「ソラちゃんってあれよね? 今街で話題の聖女様!」
「ああ! その聖女様の最後の浄化も凄い! 戦狂聖女って感じだよな!」
ちょっと! 戦狂はないんじゃないかな!? ソラちゃんは戦いを楽しんでたけど!
――あたち、しぇんきょうしぇーじょ! やっちゃね!
あ~うん。ソラちゃんが嬉しいなら、わたしは何も言わないよ?
「あたち、しぇんきょうしぇーじょ!」
後ろ腰に手を組み、右足を少し前に出して首を傾げる。
「「「めっちゃかわいい」」」
魅了完了! て、ポーズは可愛いけど、称号は物騒だからね! ポーズに称号が合ってませんよ!
……家に帰ったら姿見の前で同じポーズをとってみよ。
ソラちゃんの視界と共有だから、感覚的にはどんなポーズしてるか分かるけど、可愛いポーズが見えないんだよね。
あ、そういえば、シ~シ~我慢してるんじゃなかったっけ?
――あ。
あ。
「うわぁぁぁん!」
「うわ! おもらししちゃったのね! 男共! 回れ右! こっち見んな!」
「「「おう!」」」
「アヤネ! なんとかしろ!」
「ええ?! 私じゃ無理だよ! 替えのオムツなんて持ってないし! ジェノさ~ん! ここまで来て~! 助けて!」
なんか、モンスターの大氾濫よりも大騒ぎになった。いや、オムツから大氾濫起こしてるんですけどね。
――ソラしゃんがおもいだしゃしぇるからでちょ!
え~? わたしが言わないでも、結局はもらし……ごめんなさい!