第133話:えんぐん、しゃんじょう! の、ひ!
モンスターの数は減っている。
でも、30人という少数の冒険者さんたちの数では、街へ向かうモンスターの足止めなんて無理だ。少なくは無い数のモンスターが、街へと抜けてしまっている。
しかも、わたしたちも完全包囲されている形だしね。
集団の中で剣を振るっていたけど、1度マグア君の側まで後退した。
フローリアさん達は、マグア君を囲み、守ってくれていたみたい。
その体には、アイギスがあるとはいえ、少なくない傷が増えていた。
――みんな、ひどい、けがちてる。
そうだね……。
最前線で戦っていたわたしたちは無傷だけど。
疲れてない?
――じぇんじぇんへいき! ソラしゃんは?
うん。わたしも平気だよ。
普段は、ちょっと歩くだけでもすぐに疲れて抱っこされているのに、因子開放したら疲れ知らずになる。
幼児のまま成長しないことに嘆いたことがあったけど、今のこの状況では、因子を与えてくれたパパに感謝だね。
だって……。
――みんなをまもれるもんね!
うん! いくよ!
「『えりあはいひーる!』」
冒険者さん達を全員癒す。
「ありがとう! ソラちゃん! みんな! まだまだいけるわよね?」
「「「当たり前だ!」」」
それを合図に、再び冒険者さんたちの猛攻が始まった。
「『りじぇねれーしょん!』」
みんなに継続回復をかけて、前線へ……。
「ばしゅん!」
横に振り抜いた剣が風の刃を飛ばし、前方のゴブリンを纏めて切り伏せる。
ソラちゃん! 右前方! モンスターの集団を!
「ずど~ん!」
降ってきた大岩がモンスターの集団を圧し潰す。
ナイス! ソラちゃん!
――えへへ~。
モンスターの集団を優先的に潰すことで、疎らになったモンスターは冒険者さん達が各個撃破してくれる。
ここまでは誰も犠牲にならずに済んでいるけど、まだまだ森からモンスターが溢れてくる。
なんか、モンスターの数が減ってないんだよね……。
冒険者の魔導士さん達は、魔力が尽きれば戦えなくなるし、そうなれば一気に蹂躙されちゃうかも。
――ソラしゃん!
「――!?」
冒険者さんたちのほうを見ていたら油断した! 振り向いた目の前には人狼……ウォーウルフの鋭い爪が迫っていた。
【ちぇかじゅじゅだんと】の自動防御で葉っぱの膜ができて防いでくれたけど、体重差で吹き飛ばされて地面を転がった。
『グルァ!』
起き上がろうとしたところに、追撃の牙が――!
「かっかっか! させませんよ!」
頭上を剣の一閃が通り抜け、ウォーウルフの頭を切り飛ばした。
わたしたちを庇うように眼前に仁王立ちするのは、鎧に身を包み、マントを纏った骸骨……。
「ほねしゃん!」
「かかか! 姫さん、よく頑張りました。後は我々にお任せを」
ホーネさんが剣先をを地面に突き立てると、次々に魔法陣が描かれて、そこから黒い鎧を着た骸骨騎士が召喚された。
赤いマントをなびかせて、総勢30の騎士が整列した。
「嬢ちゃん、学園を抜け出すなんて、とんだお」
「ソラちゃん! もお~みんなで探したんだよ!」
「アヤネ……俺のセリフを途中で止めるなよ」
ウルガさんとアヤネちゃんは、言い合いをしながらも、近くに居たオーガを真っ二つにした。
「かかか! さて、街のほうはリュードとスラじい殿が請け負ってくれています。まあ、グランゾとトレンティーがいるので、モンスターどもは街に近づくことすらできないでしょうけども」
「パパ!」
「はい。グランゾが待ってますよ。とっとと片付けて帰りましょう」
――ソラしゃん! がんばろ!
そうだね! 早く帰れるようにしようね。
「あ! ソラちゃん、ジェノさんから伝言! 楽しみにしていた昼食のウフフタイムをすっぽかした件で、じっくりとお話しましょうって」
「えうぅぅ!?」
――ソラしゃん……。
うん。それってつまり、学園抜け出しに対する説教が待っているってことだね……。
――かえりたくにゃいな!
いや……可愛くいってもね? そもそもね、授業抜け出しじゃなくて、学園抜け出しはやりすぎだよ……。