第130話:ぼうけんに、いくの! の、ひ!
聖女の祝福で大地を甦らす。そんなことは大人たちが勝手に言い出して、ソラちゃんがお菓子に釣られてやることになったにすぎない。
今のわたしとソラちゃんは、幼女で学生なのである。
てことで、授業中に教室を抜け出して前庭まで来ています。
「廊下には居ないみたいですわ!」
昇降口からアリアちゃんの声が聞こえてくる。
クラス全員で探し回っているみたい。
「きりかぶ!」
【ちぇかじゅじゅだんと】をワンピースに変えて、切り株に擬態する。
校庭のど真ん中に1つだけある切り株。
普通だったらすぐにバレそうだけど、認識阻害の効果で皆は通り過ぎていく。
――むふふ~。ソラしゃん、しゃくしぇんがちだね!
まあ、うん。そうだね。
ソラちゃん、戦いのときだけ使うんじゃなくて、授業を抜け出すことに使うことを閃いちゃった。
まさか、神話級のアイテムをこんなことに使うなんて、安全のためにって、これをくれたトレンティーさんもビックリするだろな~。
とことこ……ひょこひょこ。
あ、守衛さん、足元を通りま~す。
切り株のまま、屈みつま先歩きで通り抜ける。
――だめでしゅね、ちゃんと、ちごとちないと。
学園抜け出しの当事者が何を言っているの?
この学園は、貴族の子が多く通っているため、関係者以外の侵入は厳しく取り締まっている。
侵入されて生徒誘拐なんて起きたら大変だもんね。
そんな優秀な守衛さんも、ソラちゃんにかかれば普通の? 守衛さんである。
まあ、切り株に擬態して学園を抜け出すなんて、誰も思わないよね?
で、外まで出たけど、どこに行くの?
――ソフィアちゃんたちと、あしょぶの!
あ~。孤児院ですか。ここから遠いね~。
――だいじょぶ! いんちかいほ~で、はちるの!
ちょ! チート能力のなんて無駄遣い! 街中を白銀の髪の幼女が爆走……凄く目立つよ?
――たいしゃく、ちてきた! ねこみみぼうち、かぽ!
そっか~。それをねこさんポシェットに入れてきたのか~、計画的~! って、そうじゃなくて! いつからこの計画たててたの?! わたし何も知らないよ!?
「いんちかいほ~!」
あ、ちょっとま――。
ま――。
――まよちゃった! ここどこ?
大通りだね~。
平民街のほぼ中心。防壁の門から一直線に伸びた、馬車2台がすれ違うことが出来る大きな道。
背後には、冒険者ギルドがある。孤児院とは全く関係ない場所ですが?
ていうか、孤児院までの道って、ソラちゃん知ってたの?
――パパがちってる!
そのパパはどこに居るのぉぉぉ!
……ソラちゃんは知らないと? 当然だよね。今までは馬車かパパに抱かれてしか来てないんだから。
誰か幼女の暴走から助けてください。
「あれ? ソラちゃん、こんなところでどうしたの?」
マグア君! そっか! 冒険者だから、ギルドに来てたのか! 助けが来たぁぁぁ!
「きりか」
だめぇぇぇ! 迷子なんだから、隠れないで連れて行ってもらったらいいでしょ!
――あ、しょか。
「ちゅれてって!」
「え? これから街の外の森で薬草採集なんだけど、付いてきたいの?」
「いく!」
え? あれ?
「う~ん。ま、ソラちゃんは強いからいいか」
「でちょ!」
お~てて繋いで~街の外へ~。
いや、あかんて!