第129話:しゅききらいをなくちょう! の、ひ!
祝福が終わり、帰ってきた自宅。
そのまま孤児院のみんなを夕食にご招待したよ。
今までは貴族街に入れなかった皆は大興奮……してないね。
「ひとがすくなくて、さびしいところね」
「だね~。騒がしくもないし」
ソフィアちゃんの言葉に、マリーちゃんも同意してる。
「パパ、どちて?」
パパに抱かれながら、小首を傾げる。
「どうしてじゃろうな? 向こうの地区と分かれているからかの~?」
「しょか~」
いや、納得したみたいに頷いてるけど、分かってないでしょ?
――もぉぉぉ! だたら、ソラしゃんは、ちってるの?
簡単だね。貴族は基本、人攫いを避けるため馬車移動だし、外に出たとしても大声なんて出さないもんだよ。
「グランゾ、違うわよ。皆この時間は夕食で、家の中に居るからよ」
「「「なるほど」」」
――ソラしゃん、うしょついた!
ええ~!? トレンティーさんが間違ってる……間違ってるよね?
「も~! グランゾ様も、トレンティー様も何言ってるんですか。そんなの、グランゾ様を怖がって、皆が家の中に引き篭もっているからですよ!」
それ絶対違う! ……違うよね?
――ちがう! パパ、こわくない! かっこいいもん!
ね~!
そんな馬鹿な考察をしている間に、ジェノさんの手でテーブルに料理が置かれていく。
定位置のパパの膝の上に座ったわたしたちの前にも、その料理が置かれて……。
「どちて、ぴーまん!?」
ちょっとでも距離を取ろうとテーブルに手をついて後退りしようとするけど、パパにがっちりと包まれてそれもできない。
「ふふふ。今日はピーマンの肉詰めに、ピーマンたっぷりの野菜炒めですよ」
――あくまのほほえみ!
いや~、あの時、我儘なお願いしちゃったからじゃない?
「ソラリスや。好き嫌いはしちゃいかんぞ」
ミッション、好き嫌いをなくそう! 討伐対象、ピーマン!
「ソフィアちゃん達は食べれる?」
「「「うん! 食べれる!」」」
トレンティーさんの問いに、元気いっぱい答える孤児院の子達。
「孤児院では、寄付してくださったお野菜を無駄に出来ないですものね」
ばあちゃのその言葉と、美味しそうに食べているソフィアちゃんを見て。
――たべてみりゅ!
うん。身長は抜かされたけど、年齢だけは下の子に負けられないよね! あ、精神年齢で負け……ゲフンゲフン!
一大決心をして、フォークに突き刺し。ミッションスタート!
パク!
「――!! おいち~!」
ほのかな苦みと、肉から染み出す肉汁の甘さが合わさって、うん、おいち~! だね。
――むふふ~。こっちも、おいち~のかな?
と、野菜炒めのピーマンだけをフォークに刺して。
「あ! ソラ様! ピーマンだけじゃなく、他の野菜も一緒に……」
な……なんだと?
パク!
あ。
「――!! にがい~!」
わ~! きゃ~! と、パパから飛び降りて、床をゴロゴロ。
ミッション失敗。
ピーマンに返り討ちにされたよ。
あ、でも、ピーマンの肉詰めは食べられるようになったよ。
――あれ、なかは、はんばーぐだちね!
うん……そうなのか?
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