第125話:みかけだおち! の、ひ!
馬車は村に向かって爆走している。
ばあちゃのヒールで回復した男性を馬車の中に押込み……招き入れて、事情を聴くと、村がモンスターの集団から襲撃を受けたらしい。
周囲に居た冒険者が防衛に参加してくれているようだけど、モンスターの数が多く、苦戦しているみたい。
それで急いで向かうことになったんだけど、最高速を出すために、ヒドイメアーウさんも中に入ってもらっている。
定員オーバーっていうのは、パパ達が教会を嫌っているための方便っていうことだったらしい。
「わっはっは! モンスター相手とはいえ、500年ぶりの戦闘じゃわい」
「まあ、グランゾはそうでしょうね」
と、パパは漆黒のローブを身に纏い、トレンティーさんは、世界樹の杖を握りしめている。
「かかか! 俺の私兵も参加させるか?」
「スケルトンか? 数が居れば有利にはなるがの。モンスターと勘違いされて、味方から攻撃されるんじゃないかの?」
「言われてみればそうですな! こんな時のために、スケルトンどもには街で生活させておくべきでしたな」
街中を大勢の骨が闊歩する……なんか嫌だな。
「ちぇかじゅのだ! ちぇかじゅじゅだんと!」
お? ソラちゃんもやる気満々だね。でも、集団の実戦だよ? 子供は危ないから大人に任せようよ。
――だいじょぶ! あたち、だんじょんくりあちた! こどもだけでも、たたかえるもん!
ソラちゃんは周囲を見回した。
マリーちゃんとソフィアちゃんは抱き合って不安気に震えている! ケリー君は、ばあちゃにしがみついて、マグア君はアヤネちゃんに怒られている!
―ソラしゃん、たいへん! アリアおねえちゃんたち、いないね!
うん。子供は子供でも、今回はメンバーが違うね。戦闘力はほぼ0だね。
馬車は村の手前で止まった。ここからは歩いていく。
馬車は目立つし、攻撃を集中されちゃうと逆に危険だからね。
「ゴブリンにオーク……オーガもいるの」
「しゅごい、いっぱい」
うん。ゴブリンだけでも300くらい。それに中型のオークと、数は少ないけど、パパよりも大きなオーガが居るね。
オークは豚のモンスターで、人型だけど、その肉は食用としても出回っているらしい。
オーガといえば、体長は4メートルもある鬼のモンスターで、力が強く、皮膚も固く、物理防御がとても高いらしい。
―ソラしゃん、ものちりね!
いや……授業でリンバーグさんが言ってたよ?
――ゆうちゃのいうことなんて、きかないもん!
授業はちゃんと聞こうよ?!
「ソラリスや、俺たちは集団に突っ込むから、みんなを守ってやってくれんか?」
「あい! まもる!」
うん。さすがパパだ。放って置いたら一緒に突っ込んじゃってただろうし、役目を与えるのが正解だ。ソラちゃんの性格をよく理解してる。
この場を残ったみんなを守らないとってのは本当だしね。
パパ達が集団に突っ込んでいってしばらくして。
こっちに気付いたゴブリンが数匹向かってきた。
と、ここで目の前に飛び出してきたのは、荷台でぐったりしていたヒドイメアーウさん!
「私も教会に所属する司祭! 防御魔法くらいは使えますよ! セイクリッド・シールド!」
ヒドイメアーウさんの前方に光の盾が展開された!
――しゅごい、ちゅよしょう!
『ぎゃぎゃぎゃ!』
ガキン! パリィィィン!
盾は、ゴブリンの棍棒の一撃で砕け散って。
「うわぁぁぁ!」
ヒドイメアーウさんは、盾が砕け散った衝撃で後方に吹き飛んだ。
「「「よわぁぁぁい!」」」
えっと……使えるとは言っても、役に立つとは言ってない?
――みかけだおちね!