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第124話:なかは、あまあま! の、ひ!

 昼休憩を終え、村への道を進んでいると馬車が急に止まった。

 なんだろ? て思っていると、御者をしていたウルガさんがドアを開いて顔を覗かせる。


「グランゾ、馬に乗った人が急接近中だ。どうする?」

「ぬ? 1人か?」

「ああ。盗賊ではないようだが、ボロボロで血の匂いがする」

「けがちてる! たしゅけないと!」


 馬車から飛び出し、ガシ! とウルガさんに抱き止められて、ストンと、馬車の中に戻される。


「もぉぉぉ! どちて、じゃましゅるの!」


 馬車の中と外の段差でちょうどいい位置にあったウルガさんの頭を、ちぇかじゅのだで、ペシペシ叩いてやる。


「落ち着けって。まずは俺が話を聞いて、安全か確認してからだ」

「かかか! 俺も一緒に話を聞きましょうかね」


 と、ホーネさんが馬車から出ていった。


「ほらほらソラちゃん。ここは大人に任せて、美味しい果物を頂きましょう」

「ばあちゃ! あ~んちて?」

「はい。膝の上にいらっしゃい」

「あい!」


 膝の上に座り、フォークに刺されたリンゴを口元に出され、あ~ん、パクリ。シャクシャク。


「おいち~!」


 ソラちゃんの笑顔に、大人たちの顔が緩々になる。

 あ、もちろん、食べてるのはマジックアップルじゃなくて、普通のリンゴだよ。

 まあ、あの領地のソラちゃんが作っちゃった森で取れたリンゴだから、普通じゃないかもしれないけど。


「マリー……俺も、あ~んしてあげようか?」

「え~? マグアお兄ちゃん、みんながみているから、恥ずかしいよ……」

「そ、そうか……」


 おやおや? お2人はそういう関係なのかな? マグア君だけの片思いなのかな~? マリーちゃんも、照れているところをみると、まんざらじゃないかも?


 ――かんけい? かたおもい? しょれって、なに~?


 うん? 付き合ってるとか、マグア君がマリーちゃんのことを好きだって思っているとかだね。


 ――しょか! あたちとパパ!


 それだと親子じゃね? まあ、好きだと思っているっていうのは間違いないけど。


「マリーしゃんもマグアしゃんも、あたちとパパみたいにけっこんできるといいね!」


 まだしてません!


「……」

「……」


 ほら~! 大人も子供も微妙な空気になっちゃった~!

 ていうか、馬車の外は緊迫した流れじゃないの? ボロボロの血まみれだよ? 中はどうしてほのぼのとしたホームドラマみたいな感じになってるの? 中と外でギャップが凄いんですけど。




 気難しい雰囲気の中、会話もなくシャクシャクとリンゴを食べる音がする中、バン! と、ドアが勢いよく開いた。


「マナファリス殿! 回復魔法をお願いしたい!」


 ウルガさんが緊迫した顔を覗かせながら叫んできた。


「まあ! 大怪我だったのね?」

「あたちもいく!」


 ぜったいいくもん! と、ばあちゃの首にしがみつく。


「いや……怪我はどうってことないんだが、乗ってきていた馬がスレイプニルを見て怯えてな。大暴れしてしまって、男が振り落とされて、ホーネが助け起こしたんだが……」


 ウルガさんが言葉を途切れさせ、パパが席を立つ。


「ぬ? 落ちた時に首の骨を折ったかの?」


 首の骨を折ったとしたら、脅かしてしまったスレイプニルの持ち主にも責任があるからね。


「いや……助け起こしたホーネを見て、絶叫して気絶しちまった」

「「「……骨だから」」」


 あ~、うん。ホーネさんって、骸骨だし。間近で見たら怖いよね。特に初めて見る人は。


 ――ホネしゃん、がちゃんってくじゅれるから、おもちろいのにね。


 普通の人は、それが怖いんだよ?




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