第123話:たのちいひと、み~ちゅけた! の、ひ!
領地祝福の霊祭って言っても、最初は国の直轄地でソラちゃんの力を実際に見てみるってことになったらしい。
まあ、最初に行う領地はどこだって揉めてたから、スデリッチさんが権力を行使した結果だね。
正確には、直轄地でも2番目だけど。
目的地の農村に辿り着く前に、1度昼食休憩をすることになった。
まずはアヤネちゃんが最初に降りて周囲の警戒。
それに続くは、孤児院の最年長、孤児院の守護神マグア君。8歳にして冒険者という職業を持っている頼れるお兄ちゃん! ただし、薬草採集しかしたことないぞ!
「街の外であまり薬草が取れなかったときは、教会の薬草畑の物をこっそりと採集して納品してる」
なんてやんちゃ坊主だ! でも、孤児院も教会関係なので問題なし!
あ、でも、パパ達が教会の薬草を半分枯らしちゃった。ごめんね。
「は~い。私が抱いて降ろしますから、小さい子から降りましょうね」
「ジェノさん、よろしくね。ほら、皆さん、大人しく順番に降りましょうね」
ジェノさんが馬車の外で両手を広げ、ばあちゃが列を作っている子供たちを見て、後ろで微笑む。
幼稚園の園長先生と保母さんみたいだな。
「最初はソラ様ですよ~」
「あたち?!」
あれ? 年齢順だと最後だよね?
――でちょ~! あたち、6しゃい! もうちゅぐ7しゃい!
「だって、ソラおねえちゃんが1ばんちいさいでしょ」
「えうぅ!」
ソフィアちゃんの精神攻撃! ソラちゃんは大ダメージを受けた!
て、うん。小さい子からって、年齢じゃなくて、単純に背丈ってことね。
……いやいやまてまて! 3歳のソフィアちゃんに背を抜かれたのね!?
まあ、そんな些細な事、ソラちゃんは気にしない!
成長は止まっちゃってるし、寿命もあるのかどうかさえ怪しいしね!
で、馬車から降りたソラちゃんが、真っ先に向かったところ。
馬車の後部。
そこからはロープが結ばれていて、1台の小さな荷車が繋がれている。
その荷台の上には、ぐったりとして横たわっているヒドイメアーウさんが居た。
「ち……ちんでる」
「え~? あ、ほんとね~」
ソフィアちゃんも隣にやってきて、並んで荷台を覗き込む。
ていうか、死んでるわけじゃないと思うよ? ロープで繋がれただけの不安定な荷車で、時速60キロを超える速度でデコボコな道を走ったから、乗り物酔いかな?
――ちんでないのか~。
「ちぇかじゅのだ!」
ソラちゃんが、世界樹の枝を取り出して、ヒドイメアーウさんをつつき始めた。
「ちゅん、ちゅん」
「あ、わたしもやる~。つんつん」
神話級の世界樹の枝をなんてことに使ってるんだか。
ソフィアちゃんも、落ちていた枝を拾ってつんつん始めた。
「う~ん……って、くすぐったいですよ!」
「「きゃぁぁ」」
がばっと起きてきて、ソラちゃんとソフィアちゃんは逃げ出した!
逃げ出すと言っても、きゃっきゃと笑いながらだけど。
「待ちなさ~い! このいたずらっ子~!」
「「きゃ~きゃ~!」」
まだフラフラで足取りがおぼつかないヒドイメアーウさんと、幼児2人の追いかけっこは、いい勝負だった。
パパ達は教会関係者ってことで嫌っているけど、人見知りのソラちゃんが、意外にもとても懐いてた。
――だって、あしょんでくれるから、たのちいもん!
あ、そんな理由なのね。