第121話:パパの、ちゅじょくは? の、ひ!
領地祝福の霊祭。
寝ている間に話が纏まり、名づけられたもの。
まあ、内容は、聖女の祝福で国内を甦らそう祭り、である。
霊祭ってついているのは、聖女ってことで、教会が横槍をいれてきたかららしい。
もちろん、教会というのは、ばあちゃではなく、王都にある教会の司祭どもだ。
はっきり言って、教会にはいいイメージはない。
ソラちゃんが、森の中で狼に両足を食べられ死にかけていたのも、原因は、村の中で聖女の力を持って生まれ、そのことをどこかの教会が嗅ぎつけて、神聖国の教皇の養子にしようとし、聖騎士をけしかけ、ソラちゃんの本当の両親から奪おうとした。
両親はソラちゃんと共に当然逃げ出し、森の中に逃げ込み……。
もちろん、どこの村から、どこまでの距離を逃げてきたのか、そんな詳しいことは分からないけど。
そんなことがあった、ということは、トレンティーさんが妖精を使い、確証を得た。
妖精の諜報能力は、人間の比じゃないってことだけは言っておこう。
「まったく、ソラちゃんの旅に司祭が同行するなんて、許すはずがないじゃない」
夕食後のいつもの団欒。トレンティーさんが、食後のリビングで書類を見ながら怒っております。
「教会の薬草畑の半分を枯らしてやったんじゃ。俺たちが教会を許してないことは、身に染みて理解したじゃろう」
「同行だけして、ソラちゃんの力を教会の手柄としようとしていることなんて、見え見えよね」
大人たちの会話に怖いものが含まれてますけど。
聞いた話によると、2年ほど前に、ソラちゃんがパパに対して発動した聖女の加護。
人間たちの異種族殲滅思想が消滅しただけじゃなく、世界中の女神像が砕け散ったらしい。
トレンティーさんが調べた結果、その女神像から、思想誘導みたいなものが出ていたらしい。
教会には、礼拝で国民たちが訪れるわけで、もちろん、各国の城内にも礼拝堂があって、王族も礼拝してて、その時に洗脳され続けていたわけだ。しかも、400年の長きにわたって。
「まったく、あのクソ女神め。400年たっても、チクチクと細かい嫌がらせをしてくるの」
「今回の件には、クソ女神は関係ないかもしれないけどね」
女神さんよ、あんた何やらかしてんだ? 凄い言われようだぞ?
それに、パパと精霊女王のトレンティーさん、獣人族のウルガさん、竜王のリュードさん、骸骨騎士……おそらく、本当はアンデッド王のホーネさん、エルダースライムのスラじい。
こんだけの人たちを敵に回すって、普通の人間が勝てるわけないじゃん? 今まで人族が滅びなかったのは、パパ達が争いを回避して、強固な結界を作って魔王国に引き篭もったからだよね?
……そんな凄い人たちを纏めているパパって、いったい何なんだろう?
魔王って、職業的なもので、種族ではないよね?
――ソラしゃん、きいてみるの?
うん。聞いてみようか?
「パパって、なに?」
「うん? パパっていうのはの~、お父さんって意味じゃぞ~」
「しょっか~」
違うから! 聞きたいことはそれと違うから!
2人で見詰め合ってデレデレと微笑み合ってないで、ちゃんと聞いて!
――もぉぉぉ! ちかたないでしゅね!
「パパの、ちゅじょくは?」
「ち……ちじょく?!」
「グランゾ! それ違うわよ! 種族よね? お願いだからそうだと言って!」
なんか、エライ大事になった。
「ああ、種族の。俺は魔神じゃよ」
「まじん! かっこいい!」
「じゃろ~! わっはっは!」
「えっへっへ~」
そっか~。魔人か~。【人】、だよね? ほら、魔法を極めた人族みたいな?
そりゃ、いろいろな魔法が強いわけだよね~。
聖女の力と合わさって、パパを超える凄い力になっちゃってるけどね! わっはっは!
――どちたの、ソラしゃん? かんがえちゅぎで、ちゅかれちゃったの? もう、ねるの?
うん……寝ようか? 明日からは祝福の旅だしね。