第119話:おちろ! の、ひ!
さて、ソラちゃんがお菓子に釣られて即決しちゃった翌日、アリアちゃんのお父さん、つまり、国王が会いたいということで、お城に招待された。
お城って言っても、すぐお隣さんなんだけど。
「一応、この国のトップにお会いするのですから、ドレスを着ていきましょうね」
「あい」
一応って……国王ですよ?
「はい、両手を上げて」
ばんざ~い! てすると、スポーンとワンピースを脱がされる。
そして、そのままドレスを両手と頭からスポーンと着せられる。なんという早着替え。
余裕のあるレースの首周りを襟の中にリボンを通してキュッと絞められて、胸の前で蝶結びで完成。
白銀の髪、ピンクのドレス、水色のリボン。うん、かわいい。
腰回りからスカートの一部がちょっと膨らんでいるのは、おむつの厚みのせいじゃなく、そういう造りなんだろう。うん。そうとしか思えない。
「ソラ様は小さいままだから、お着換えが楽で助かりますね」
「えへへ」
――ちいしゃくてよかったね、そらしゃん。
うん。そうだね……。
ソラちゃんがそれで納得してるなら別にいいよ?
とてとて……。歩いて城壁の門まで向かう。後ろからは、ソラちゃんの歩く速度に合わせてジェノさんとアヤネちゃんが付いてくる。
普段は抱かれて移動だけど、今日はドレスだから、抱かれちゃうと皺になっちゃうしね。
門まで着いて、肩から下げたネコミミポシェットから招待状を取り出し、門番をしていた騎士さんに渡す。
「お待ちしてました、ソラリス王女殿下。どうぞ、お入りください。本殿入り口にて、案内係の者が待機しております」
「……」
見上げて、じぃ~~~と見詰めちゃうぞ。
「はい、飴玉をあげますから、お城の中では、大人しくしててくださいね」
「あい! ありがとございましゅ!」
嬉しそうに貰った飴玉をポシェットに入れる。
アリアちゃんのところに遊びに行くときに、それが当たり前になっちゃってるから、正式な招待のときでも仕方ないね。
門から中に入ってしばらく歩くと、いつもアリアちゃんと遊んでいる花壇へと続く道が見えてきた。
「アリアおねえちゃん、いるかな?」
「どうでしょうね?」
「今日は国王と一緒に、謁見の間にいると」
「おねえちゃ~ん!」
最後まで聞かずにダッシュ!
ガシッ!
する前にしっかりと肩をホールドされる。
うん。幼児の行動は予測済みですよね~。じゃないと、大変なことになる。
そして、そのままジェノさんに抱かれて城内に。
「うわぁぁぁん! アリアおねえちゃぁぁぁん!」
ソラちゃん、今日は遊びに来たんじゃないから。
――いやぁぁぁ! うわぁぁぁん!
いやぁ……無理。どうやって泣き止ませと?
泣きながら抱かれて、謁見の間に到達すると、扉の前に居た守衛さんが困りながら慌てて扉を開けてくれた。
左右に分かれて立っていた領主さんや城勤めの貴族さんたちが、その様子を見てその場で両手を前に出してウロウロし始めた。
声をかけるべきか迷ってるんだろうけど、あんたらはゾンビか! と、叫びたい。
と、奥の扉が勢い良く開いた。
そこから飛び出してきたのは。
「ソラちゃん!」
「おねちゃん! ぐす……」
抱かれたまま一生懸命に手を伸ばし、そのままだと落ちそうなので、慌てて降ろされてアリアちゃんに向けてダッシュ!
アリアちゃんがスタスタ。そらちゃんがとてとて……。
この差よ。
「ソラちゃん、どうしたの、こんなに泣いて」
「あいたかったの……」
謁見の間の中央……かなり入り口よりで抱き合い、感動の再会を果たしたよ。
……お城に来た目的ってなんだっけ?