第117話:ろくしゃいには、むじゅかちい! の、ひ!
さて、困った状況になった。
目の前には、数人の領主と思わしき人たちが、片膝を着き、平服の姿勢で道を塞いでいる。
わたしはジェノさんに抱かれて、この光景を見下ろしている状態。
確実にソラちゃんと顔合わせが出来る、下校時間を待っていたのか。
朝に見た生徒の親たちの疑問は解けたけど。
――このひとたち、どちたの?
う~ん。ここに来る前に、森と畑を作ったでしょ? あれを自分たちの所でもやってほしいみたいだね。
――え~。めんどくしゃい……。あ!
どうしたの?
「ひじゃ! どろんこになっちゃうでちょ!」
「おお! 些細なことを気にかけてくれるとは!」
と、幼女に感心しつつ、皆が立って姿勢を正し。
「よごちたらジェノしゃんにおこられるの!」
「……そうでございますね……」
ちょっと~! 恥ずかしエピソードを暴露しなくていいから!
「ふふふ。わかっているのに、どうして毎日泥だらけになってるんでしょうね?」
「えうぅ!」
藪蛇だ~!
水たまりがあったらそこに飛び込んじゃう、泥があったら泥を服に塗り付けちゃう、そんなお年頃なんです!
……その全てが女の子らしくないのは、どうしてだろう?
「あの……我々の問題は」
あ、忘れてた。
――たちゅかった!
……。わたしとソラちゃんとの認識のズレが酷すぎません?
う~ん……。
チラッと、ジェノさんの顔を見ると、ニコっと微笑みが返ってきた。
その笑みは、家に帰ってからの説教確定の演出ですか?
おっと、いけない。またこの面倒な人たちを無視しちゃうところだった。
ソラちゃん、今から、わたしの言うことをこの人たちに伝えて。
――あい! まかしぇなちゃい!
えっとね……。わたし、まだ6歳なので、そのような判断は個人では致しかねます。まして、それはこの国の問題であります。友好交流にて、わたしは貴国に招かれているに過ぎません。まずは、この国の国王に話を通し、貴国の要望としてパパに話が来たあかつきには、追って選考させていただきます。
アリアちゃんの言い回しを参考にして考えてみたよ。さあ、ソラちゃん! 言っておあげなさい!
――あい!
「あたち、まだろくしゃい!」
「「「「……」」」
……。
しまったぁぁぁ! 長すぎた! そもそも、名前も4文字以上はダメだったじゃん!
「6歳……」
「まだ3,4歳くらいだと……」
「ちつれいちちゃう! ジェノしゃん、おろちて!」
で、降ろしてもらって、腰に手を当ててふんぞり返ったよ。
「どこからみても、ろくしゃいでちょ!」
「……6歳の次男がこのくらいで」
と、ソラちゃんの頭の上20センチくらいのところで手の平をかざして。
「4歳になったばかりの長女がこれくらい……」
あら、わたしたちよりもわずかに高いのね。