第116話:あしょんだあとで……。 の、ひ!
「もぉぉぉ! どちて、あたちが!」
ばあちゃに怒られ、今はグラウンドを元に戻しているところ。
わたしも多少は地面をえぐっちゃったけど、そもそも、剣と剣の勝負の最中に割り込んできて、魔法でグラウンドを破壊したのはソラちゃんである。
相手がアヤネちゃんだったなら、こんなに被害はでなかっただろうね。
ていうか、わたしの微かに残っている記憶では、勇者と聖女は惹かれあう存在なはず。それがどうしてソラちゃんの場合は反発しあうのか。
――パパをきじゅちゅけようとちたでしょ!
あ~、うん。傷つけようとしてたね~。弾き飛ばされてたけど。
……ソラちゃんは、根に持つタイプだね。
「ソラちゃん、怒るのはいいが、少しは動いてくれないかな?」
と、地面を平らにする道具を引きながら、勇者リンバーグさんが言ってくる。
ソラちゃんは、そのリンバーグさんが引く道具の上に立ってるんだけどね。
「おちないように、ぼうをもってるでちょ!」
落ちないように棒を持ってバランスをとってるぞ! 遊んでるんじゃなくて、ソラちゃんの重さで少しでも効果を高めようとしてるんだぞ!
「ゆっくり、たのちくない! ゆうちゃ、もっとはやく!」
「へいへい。いくぞ! 落ちるなよ!」
「きゃ~きゃ~! はやいはやい!」
遊んでるんじゃないぞ~……。
「ふ~。綺麗になったな」
「あい!」
元通り、いや、それ以上に平らに均されたグラウンドが輝いている。
腰に手を当て、少しばかり胸を反らせて得意げに眺める。
「がんばった!」
「む……」
反論は認めません!
――ね~。
ね~。
「さて、もうすぐ昼だな。今日はもう授業はないから、気を付けて帰るように」
「あい! ゆうちゃ、またあしょぼうね!」
「お……おう!」
ソラちゃん、自分からバラしちゃったよ!
学舎で待っていたジェノさんとアヤネちゃんと合流して、学園の門まで向かう。
「アヤネおねえちゃん、いなかった。なにちてたの?」
「明日からの授業のことを、他の先生達と話してたんだよ」
「しょか~」
どうやら、アヤネちゃんは、わたしたちの護衛はもちろんだけど、剣術の先生を正式にやることになったみたい。
「ソラちゃんが、勇者と剣術の授業をしたら、やりすぎちゃうからね」
「しょ、しょか~」
いらない仕事を増やしちゃってごめんね!
「ふふふ。じっとしているだけじゃ退屈だし、貴族で偉ぶっている生徒をコテンパンにしてあげるのは楽しいからね」
「やりしゅぎ、よくない!」
お互いにね! ほどほどにね! 頼むよほんと!
「ソラ様……」
門まで着くと、ジェノさんが警戒したようね声をかけてきて立ち止まり、アヤネちゃんがすっと前に出る。
門の外には、朝に見た貴族の生徒の親たちが集まっていた。もちろん、その貴族たちの護衛も剣を所持して周りに居るわけで。
ジェノさんとアヤネちゃんの警戒度は最大まで跳ね上がった。
「何ですか、あなた達は? ソラ様の進路を塞ぐなんて、お腹を空かせたソラ様が困ってしまいますよ!」
――まだおなかしゅいてないよ?
うん。多分、お腹が空いてるのはジェノさんだね。
それを言う必要はないけど。
「ソラリス王女殿下! デイダス領を聖なる救済で豊かにしたと聞きました!」
「我が領地にも救済を!」
「豊かな大地を!」
「儂も抱っこしてみたい」
あ~。森を作って、畑を豊かにした話が広がったのか。
……いや待て! 懇願の中に変態さんが紛れてなかったですか?!
読んで頂きありがとうございます!
――かんしょうも、ありがとございましゅ!
忙しくて更新間隔がバラバラですけど、がんばります!
――これからもよろちくでしゅ。