第113話:ひさちぶり! の、ひ!
まだ暑さが残る中、今日から学園が再開される。
久しぶりに早起きして、制服を着こむ。
「やっぱり、サイズを手直ししなくてもピッタリですね」
「ぴったり~!」
笑顔でぴょんぴょんと飛び跳ねる。だがしかし、ちょっと待ってくださいよ! それは、よろこんでいいのかな?!
入学してから、身長も体重も体型も変わってないってことですよ?
――いっぱいたべても、きにちなくていいよ?
……。気にしてたんだ? 知らなかったよ。
まあ、ジェノさんが作る食事は、栄養管理がしっかりしているから、あまり気にしなくてもいいけどね。
「ソラ様、学園に行く前に、ご近所さんから沢山のお菓子をいただいたので、少し食べていきます?」
「たべる~!」
「はい。では、こちらのクッキーから。あ~ん」
「あ~ん。ポリポリ……あまくておいち~!」
ほっぺを両手で覆って、腰をくねくね。
「はうぅ! 可愛い! 1度開けちゃうと痛むのが早いですから、もう1枚! はい、あ~ん」
「あ~ん! おいち~!」
甘やかしという餌付け、エンドレス!
……しっかりとした栄養管理というのは勘違いだったようです。
学園に着くと、両親に連れられた学生がちらほらと居た。
新学期が始まる初日は、初めに全体集会があるらしいね。でも、どうして両親まで来てるんだろう?
「パパもあとからくるの?」
「そういう話はなかったですけど……」
ソラちゃんの問いに、ジェノさんも困惑気味に返してくる。
「おはようございます。ソラちゃん、ジェノ様」
と、侍女のラチカさんと手を繋いだアリアちゃんが挨拶してきた。
「おはよ、おねえちゃん!」
「おはようございます」
アリアちゃんと合流して、集会が行われる講堂に向かった。
ジェノさんは後ろの壁際に控え、わたしたちは指定された立ち位置に向かう。
生徒の親は講堂内には見当たらない。あの親達はなんだったんだろう?
「1ばんまえ~」
と、ソラちゃんは嬉しそうに言う。
学年ごとに縦1列に整列して、背の低い順だから当然なんだけどね。
「むふふ~」
「ソラちゃん……」
きょろきょろして、何処かに歩き出しそうなソラちゃんの肩を、アリアちゃんはそっと押さえてくれている。
いい子やなぁ。
「それでは、新学期始業式を行います。初めに、学園長リンバーグ様の挨拶です」
リンバーグさんが、壇上横の扉から出て来る。
「ゆうぅぅぅちゃぁぁぁ!」
「久しぶりだな。ソラちゃん」
「むぅぅぅ!」
やばい! 久しぶりに会ったから、鬱憤が凄い溜まってる!
まあ、こんなやり取りは既に周知されているから、あまり騒がれないけども。
「ソラちゃん、すぐに終わるから大人しくね」
「あい……」
飛び掛かっていきそうなソラちゃんを、アリアちゃんが肩をずっと押さえてくれている。
「あ~、皆も久しぶりだな。領地に帰った者も無事に戻ってこられたようで一安心だ。さて、これから秋にかけて」
「ゆうちゃ、はなちながい!」
「……」
……。
誰か、肩だけじゃなくて、口も押えてぇぇぇ!
「新学期も、脱落者なくがんばってくれ」
挨拶、だいぶ短くなりましたね……。