第110話:トレンテーしゃんと、がったいまほ~! の、ひ!
さてさて、勘違いして作物畑じゃなくて、花畑を作っちゃったソラちゃん。
「きれいでちょ~!」
本人はご満足していらっしゃいますわ!
「「「そう……ですね」」」
幼女に合わせてくれる大人達。立派でございますわ!
――ソラしゃん、だいじょぶ? ひーる、しゅる?
いや、ごめん。大丈夫だよ。
でもね~。街をぐるっと囲んじゃった花畑。いったいどうするんだろ? 肥沃な土になってるのは間違いないから、耕して畑にしちゃう?
「ちょっとグランゾ、この花畑凄いわよ」
「うむ。綺麗じゃの」
パパ、基本的にソラちゃんがやったことは褒めることしかしないね。
「違うわよ! 気付かない? 花畑がソラちゃんの聖属性で溢れて、強力な結界になってるのよ。モンスターなんて、近づくだけで気絶よ」
「き……気付いておったよ? この街は、人間の国で1番安全な街になったの!」
パパ、花しか見てなかったでしょ?
「モンスターの脅威は去っても、飢餓が目前に……」
「領主様……税を免除してくださっていたが、それも限界でございます……」
お……重すぎます。
――ソラしゃん、きがって、なに?
お腹を空かせて、沢山の人が死んじゃうってことだよ。
「おなかしゅいてるの? どちて、たべるのないの?」
「この地は、数年前まで魔王国に覆われた厚い雲で光が遮られてましてな、他の地よりも土が枯れていますのです」
――ソラしゃん、しょれって、おひしゃまぽかぽかになるまであった……。
うん。魔王国に人族が入れないようにするためにあった、パパが作った天候結界だね。
――ちゅまり、これは。
「パパのしぇい?」
「――! すまなんだ! 雲は俺が消したのじゃがな。ちょっと待っておれ!」
パパが突然、両手を空に向かって掲げたよ。
「召喚! リュード!」
地面に魔法陣が輝いて、リュードさんが出てきたよ。
て、なぜにリュードさん?
「どうした? 緊急事態か? まさか、姫さんに何かあったのか!?」
「竜王になって、尻尾を食べさせてやってくれんか?」
「……嫌だよ。すぐ再生できるけど、嫌だよ」
「「「竜王様の尻尾はご遠慮したいです」」」
ですよね~。
――じぇったい、おいちくないもんね!
そういう問題じゃないんだよ?
まあ、皆が望んでいるのは、肥沃な大地で育む畑ってことで、街の周囲にある畑で皆と来たよ。
目の前に広がるのは、栄養がなくぱさぱさな土と、そこに実っている針金みたいな大根。
キャベツみたいなものもあるけど、半分が枯れかけてるね。
芽が出てここまで育っただけでも奇跡っていう状態。
で、ソラちゃんはなぜか、リュードさんの背中によじ登り、頭をペチペチと叩いてるよ。
「リュードしゃん、とんで、とんで!」
あ~、アリアちゃん達クラスメートが空の旅を楽しんだのが羨ましかったんだね。
強制的に拉致されてきただけとも言うけど。
「ふっはっは! では、姫さんの望み通り、空へいこうか」
「さすがソラちゃんね。地表から見たよりも、空から見たほうが分かりやすいわね。私も一緒に行って、補助してあげるわ」
トレンティーさん、そういう理由ではないと思いますよ。
で、今は空を飛んでいますよ。
「たか~いたか~い!」
――パパよりたかいね!
そりゃそうだ。ていうか、これからどうするの?
――あたちのまほ~で、げんきにちてあげる!
なるほどね。元ある畑だったら失敗はしないだろうね。
「ソラちゃん、私も協力するわね。私の出した魔法をソラちゃんの魔力で増大してね!」
「あい!」
「いくわよ! 豊穣の祝福!」
「ほじょのふゅふぉく!」
ソラちゃん! なんか微妙に違うよ!?
――あれ? しょかな?
まあ、なにはともあれ、ソラちゃんとトレンティーさんの魔法は空中で混じり合い、地上の畑に降り注いだ。
そして、畑全体が輝いて……。
バキ! めきめきめき!
数えきれないほどの木が生えてきて、森になっちゃった。
森の中心には、こんこんと水が湧き出す泉があって、溢れた水が小川になって大地を潤わせていく。
……いや、ちょっと待って。畑はどこにいった?
「あ、トレンティー様よ。あんた森の精霊女王だろ? 森の精霊の力を姫さんが増大したらこうなるわな」
ソラちゃんも微妙に言えてなかったしね!
――えへへ~。
……。
「森には木の実や果物もいっぱいあるから大丈夫よ!」
「しょしょ! だいじょぶ!」
これでいいのかな~?