第109話:おはなを、しゃかしぇまちょ! の、ひ!
馬車がものすごいスピードで荒野を駆ける。
大人たちの怒りが暴走。その気に当てられ、馬も暴走。
「しゅご~い、はや~い!」
「さすが、伝説の軍馬、スレイプニルだね!」
「おおきいうまさん、つよ~い!」
「国家予算1年分で、このスレイプニルを1頭売っていただけないでしょうか?」
子供たちは、馬車の中で大はしゃぎ。
「クックック! 待っていろ土泥棒!」
「ソラちゃんの魔力が土に残っているというのは誤算だったでしょうね!」
「追跡! 殲滅! サーチアンドデストロイ!」
温度差! 子供たちは土泥棒なんて気にしてないから!
真っ直ぐ王都の屋敷に向かおうよ~!
――どちてパパたち、おこってるの?
えっとね~、ソラちゃんの作った花畑を荒らされたからだよ。
――ゆるちぇないね!
……落ち着こう? ね、いい子だから。
馬車が止まった。
てことは、目的地に着いちゃったってことだよね。
「さて、ちょっと懲らしめてくるかの」
「パパ! あたちも!」
「一緒に行こうぞ!」
パパに抱っこされて、むふ~! と気合を入れるソラちゃん。
向かった先は、街を囲む防壁の外側。
そこに山積みになった土がある。その傍には、ここまで土を運んできたと思われる荷車が数台と、数名の人影。
見たところ小さい子供が1人いるね?
「失礼して聞くが、その土は何かの?」
「なにかにょ!」
ソラちゃん、興奮しすぎで噛んだね。
「「「――!?」」」
あ、振り向いた人たちがパパの巨体を見てビックリしちゃってる。
「あ~、俺は怪しいものじゃないぞ」
いや、3メートルの巨体が幼女を抱いていたら怪しさ爆発しちゃってますけどね?
「旅をしている者じゃが、その土が気になっての?」
じわじわと問い詰める作戦かな?
「この土は、魔の森の入り口付近に突然現れた花畑の土なのです」
みんなボロボロの服を着ている中で、比較的いい服を着た男性が答える。
「枯れた大地にこの土を混ぜれば、作物が育つのではと、領主の私が集めさせたのですよ」
おっと! この男性は領主だったみたいだね。
まあ、この領土内は領主の私有地みたいなものだし、泥棒ではないね。
私有地にかってに花畑を作ったのはこっちだしね。
「この実験がうまくいけば、食べ物がいっぱい食べられるようになるぞ……」
「お父さん……お腹すいた……」
農家の男性に瘦せ細った女の子が抱き着いている。
これが……精霊に見放された世界の姿なのかな。
王都周辺ではここまで酷くなかったけど、地域差があるんだろうか?
「やしぇてる。かわいしょう……」
パパが、くるっと向きを変えて馬車に戻る。
「トレンティーや。妖精に指示して、大地を肥沃に戻したんじゃなかったかの?」
「馬鹿ね。数年程度で、急激に戻せるわけないでしょ。精霊も妖精も数は多くないし、妖精の力は精霊よりも弱いのよ」
この世界全体は広すぎるしね。
――ソラしゃん! あたちが、やっちゃう!
え?
「パパ! あしょこ、つれてって!」
「うん? ああ、今の現状を説明しようかの」
あ、いや、パパ、何か勘違いしてません?
「あ~、すまんがの、あと数年、我慢して」
「この、ちゅち、あたちがちゅくった!」
パパのセリフにかぶせちゃった!
パパからしょんぼりしている雰囲気が伝わってきてるよ!
「おお! 貴方様は……その巨体の御仁も……まさか」
「むふ~! たびちものじゃ!」
パパが言ったことを真似したかったのかな? でもね、ちゃんと言えてないから。
でも、この領主さんはわたしたちの正体に気付いているね。別に隠してないけど。
……隠してないよね、パパ? パパの巨体は正体を隠せないよ?
「おなじの、ちゅくってあげる!」
「おお! お願いします!」
――ソラしゃん! いくよ!
ああ、はいはい。魔力を練ればいいのかな?
「おはな、しゃいて、ぼぉん!」
防壁を囲むように光が駆け巡って、光が弾けて花畑が出来上がったよ!
……肥沃な土じゃなくて花畑を作っちゃったか~。同じのって言ったけどね? この場面でそれはちょっと違うと思うんだ。
「お父さん、凄い魔法だけど、お花って食べれるの?」
「どうかな……」
多分、食べれません!
保存しないでXボタンクリックしちゃった。
――ソラしゃん、どじだから、ちかたないね!
ソラちゃんほどじゃ……いや、投稿遅れてごめんなさい!
――おまたちぇちまちた!