第108話:つちどろぼう? の、ひ!
ダンジョンで遊んだ日から数日後、孤児院のみんなと、クラスメートたちが帰ることになった。
行き先が同じ王都だから、まとめて馬車で帰ることになったんだけど。
「ソラちゃん、王都のほうに帰ってきたら、今度は私のお城に来てください。お父様とお母様と共に歓迎いたしますわ」
「うわぁぁぁん! びぇぇぇん!」
うん。皆と過ごした期間は、騒がしくも楽しい日々で、1人になっちゃうのは寂しいよね。
「うわぁぁぁん! ソラおねえちゃぁぁぁん!」
ああ! ソフィアちゃんまでもらい泣きしちゃったよ!
もうね、皆がソラちゃんとソフィアちゃんをあやすのに必死だよ。
「ふ~む。俺たちもあと1週間もしたら、向こうに行くんじゃがな」
「グランゾ様! 予定を前倒しで私たちも今から行っちゃいましょう!」
ジェノさんの猛プッシュが炸裂。
いつもなら、過保護だな~って呆れるところだけど、今のソラちゃんの状態なら、わたしもその提案に賛成だね。
ソラちゃんが泣いている間に、あれよあれよと物事が決まっていき、今はみんなと馬車の中。
ソラちゃんは、ばあちゃの膝の上に座ってご機嫌だ。
「お城の周りの花畑は、綺麗だったわねぇ」
「あれね、あれね! あたちがちゅくったの!」
「来るときにも見たけど、ソラちゃんの魔法は凄いのね」
魔法が凄いのは認めるけど、花畑を作ったのは、パパとトレンティーさんだよね?
ソラちゃんは魔法で周囲を吹き飛ばして、地形を変えただけ……。
――もぉぉぉ! まほう、しゅごいでしょ!
うん、そうだね。凄いね。
破壊と豊穣が両立してるしね……。
「もうすぐ森を抜けるわよ」
と、今まで森の木々を動かしていたトレンティーさんが知らせてくれた。
森を抜ければ、ソラちゃんと孤児院の皆で作った花畑がある。
そこで休憩しようということになったんだけど。
「なんだ、これ……」
馬車を降りたマグア君が、目の前の惨状に声をもらす。
花畑だったところは、花が折られ、引き抜かれて散乱していて、土は穴が残るほど掘り返されていた。
「どちて、こうなってるの?」
明らかにこれは、花よりも土が目当てで掘り返されていて、その土がどこかに持ち去られた?
「ソラちゃん? 私たちは、空から来たので詳しいことは分からないのですが、ソラちゃんが作った花畑ですのね?」
アリアちゃんが、荒らされた花畑の惨状を見ながら聞いてくる。
「しょう、ソフィアちゃんたちと、ちゅくったの」
「おそらくですが、これは花が目的ではなく、花が咲いているという肥沃な土が目的でしょうね」
あ、そっか。自然を司っていた精霊を怒らせたことで、この世界は、作物なんかが育ちにくいほど、土地が瘦せているんだったね。
そこに突然、瑞々しい花が咲いたら、その土を欲しがるわけだ。
「王族命令で、犯人を調査させますけど」
「だいじょぶ。もとどおりにちちゃえばいいの」
うん。犯人に怒っても仕方ないよね。作物を育てるのに必要だったんだろうから。
ソラちゃんの魔法なら、荒らされても元通りに出来るよね。
「ソラおねえちゃん、またおはなばたけつくろ!」
「花は無事だから、花瓶に飾ることもできるわね!」
ソフィアちゃんは、またソラちゃんと花畑が作れることが嬉しいようだね。花も、無駄になったわけじゃないしね。
「クックック! ソラリスが作った花畑を」
「よくも荒らしてくれたわね!」
「ソラ様を悲しめた輩は、処すべしですね」
大人ども! 落ち着けぇぇぇ!
怒る気持ちはわかるけど!
子供たちのほうがよっぽど大人だよ!