第105話:まとめて、やっちゃう! の、ひ!
ゴブリンが剣を振り下ろし、その剣を避けて、がら空きになった横腹にパンチを叩き込む。
ぺち!
うん。因子開放しないと無理だね~。
今ね、ゴブリン5匹と、グラスウルフ3匹に囲まれちゃてて、わたしたちは陣形を崩されて個々に分断されてる状態。
このウルフがね~、森のウルフよりも大きいの。
森のウルフは、木々の間を走り回るために小型で小回りの利く大きさなんだけど、草原のウルフは、そんな障害物はないから、突進とスピード特化で大型なんだよね。
で、なぜ因子開放してないかっていうとね。
ソラちゃん! そろそろ現実逃避から戻ってきて~!
大きいウルフを見て、意識が途絶えちゃったんだよね。
で、急遽わたしが表に出て戦ってるんだけど、ソラちゃんが戻ってこないと因子開放が出来ない事実が発覚したってわけ。
――あたち、ふっかちゅ!
おかえり~。
「いんちかいほう! ちぇかじゅのだ!」
世界樹の枝を剣に変形させて、ゴブリンを一刀両断。
『ぐるるる!』
正面からグラスウルフが!
「きりかぶ!」
手足を切り株ワンピースの中に引っ込めて屈みこむ。
見た目は確かに切り株だろうね。ただし、ネコミミ帽子を被った頭が出てるけど。
『ぐる?』
首を傾げながらも、切り株と化したわたしたちを通り過ぎていく。
切り株に擬態した隠密モード、優秀すぎない? 今まで目視されててもお構いなしだ。
で、爪先で器用に体を回転させて、通り過ぎて背後がガラ空きのウルフ目掛けて。
「グサッ!」
ソラちゃんが氷の槍を飛ばした。
『キャン!』
腰から前方に槍が突き抜けて、魔力の粒子になって消えていった。
完全な不意打ち……。ちょっと聖女のやることじゃないと思います。
――これでいいの! しょれよりも、、アリアおねえちゃんたちは?
そうだった! みんなは無事か?
周りを見ると、アリアちゃんはフェルノ君が守り、クロースちゃんはベエルフェッド君が守っている状況だった。
で、ソラちゃんが1番凝視したのは、腕組みをして仁王立ちしているジェノさん。
なぜかそのジェノさんには、モンスターが近寄ってないていうか、避けてるような……。
――しゅごくぴりぴりかんじりゅ……。
うん。殺気がすげ~。
そのおかげか、モンスターの動きが鈍くなって、みんなは無事なようだけどね。
動きが鈍くなっている今のうちに助けないと!
――あい! まとめてやっちゃう!
「ひかり、ぽい!」
手の平から出した光の大玉を上空に投げて。
「ちゅどど~ん!」
その光からいくつもレーザー光線が発射されて、全てのモンスターの頭を正確に撃ち抜いていった。
もんちろん、モンスター達は即死で、消えていったよ。
このちびっ子聖女、ちょっと怖いです。