第104話:ぷにぷに、ちてた! の、ひ!
さて、気を取り直して。
わたしたちのパーティーは、草原の中を進んでいる。
先頭は、フェルノ君とベエルフェッド君。その後方に、アリアちゃんとクロースちゃん。
最後尾には、戦闘には参加しないけど、ジェノさんが付いてきている。いや……しょっぱなからウルフを殴ってましたけどね。
――あたちは!
いや、クロースちゃんに抱かれてるでしょ?
――あるくの、おちょいちね。
そうじゃなくて……。
「ソラちゃん、複数人で陣形を組んで歩いているときは、勝手にフラフラどこかへ行っちゃダメだよ?」
「おもちろいかたちの、いわがあったもん」
「そうだね。でもね、そういうときは、皆に声をかけてね」
「あい……」
ま、まあ、いつも通りってことで。
フェルノ君が周りを警戒しながら、草原を進んでいく。
部屋の中に作られた草原フィールドっていうことで、周りは背の高い草や所々に地面から岩が突き出ている。
そんな所に、モンスターは潜んでいるかもしれない。
探知を使える斥候役が居れば、不意打ちなんかの強襲を回避できるんだろうけど。
――あたちも、けいかいしゅる!
うん。頑張って。
きょろきょろと視線を動かし始めた。
「あのいわ!」
「「――!」」
ソラちゃんの突然の叫びに、みんなが武器を構える。
「おもちろいかたち、ちてるね」
すみません! まだ子供……幼児なんです! 許してやって!
「ソラちゃん、ナイス!」
はい?
「岩の影、スライムが3匹!」
おお……マジか。
――ソラしゃん、どちてあやまったの?
ごめんね……。て、納得いかないな。
降ろしてもらって戦闘に参加する。
「たぁ!」
枝を振り下ろすと、動きの遅いスライムに当たって、スライムの形がベコンと潰れ、ポヨンと戻る。
その押し戻される弾力に負けて、ヨタヨタと後退って、ペタンと尻餅をつく。
「いたたぁ」
――どちてきかない!
いや、世界樹の枝は今はただの枝だしね。武器に変形させてないでしょ。
それにね~、因子開放してないから、身体能力は4歳児だし。
「ソラちゃん、いったん下がって!」
ベエルフェッド君が言いつつ、前方に出て剣を振るったけど、剣はスライムに弾かれる。
「物理耐性が強いぞ!」
「魔法で行きます!」
アリアちゃんの掛け声で、射線に入らないように前方組が散開する。
「ウインドカッター!」
「アースピック!」
アリアちゃんの風の刃がスライムを切り刻んで、クロースちゃんの土の棘がスライムを串刺しにした。
生命力を失ったスライムは、光の粒子となって消えていく。
残りは1匹!
「あたちもやる!」
おっとぉ? 尻餅つかされたのが悔しかったのかな?
まあ、とりあえず魔力を練って。
「どぉぉぉん!」
3メートル四方の氷の塊が、スライムの真上から降ってきた。
ソラちゃんの言葉通り、ド~ン! とスライムを押しつぶした。
これは……物理なのか魔法なのか……。
まあ、光の粒子になって消えたみたいだから、倒せたようだけど。
「死体は残らないのですわね?」
アリアちゃんが、その場に残った氷の塊を覗き込みながら疑問を言葉にした。
「それはですね、このフィールド自体がグランゾ様が作った空間で、モンスターも訓練用にグランゾ様が魔力で作っているからですよ」
倒せば魔力に戻るって訳かな?
「まあ、死体処理しなくていいから楽だね。スライムは魔法で、そのほかはフォーメーションを確認しつつ、連携で倒していこう!」
「「「おお~!」」」
こうして、初戦を突破したわたしたちは、さらに奥へと進んでいった。
――ソラしゃん! こんどは、いんちかいほう、しゅるから!
はいはい。まだ不完全燃焼だもんね。
……やりすぎないようにね?