プロローグ
ヴァルギスの山は精霊の乙女のための山だ。
これは付近の村で真しやかに流れている噂である。
数百年も昔、レベス国内の何もない大地に突然この山は現れた。
付近のに住まうものは天変地異と恐れおののきその山に近づかなかったが、これを放っておかない者もいた。
その当時のレベス国国王と、その領を治める領主である。
彼らは軍隊を組んでその山を探ったが、
不思議なことにその山の途中には透明な壁のようなものがあり、山頂には誰も上がることはできず、業を煮やした国王が、国中の魔法使いを集めてその壁を攻撃させたが、けしてその壁は壊れなかった。
だが彼らはその山に何度も遠征している内に一匹の魔物にも出くわさないこと、そして山にすら入ることができない者がいることに気がついた。
山に入れない者に共通したのは重い罪を犯した者ということだった。
そのため、その山はやがて邪悪を嫌う高貴な精霊の住まいに違いないと噂がたつようになったのだった。
国王はその仕組みを利用し、仲間内から犯罪者をあぶり出したが、ある時から誰1人として山にすら入れないようになったのだった。
一部の貧しい民を除いては。
不思議と食べるに困り、山に山菜などを採りに行く者は阻害されずに山に入ることができた。
難民の幾人かは命じられ山の調査に向かったが、山を探る意思を持つ者もまた山に入れないようになった。
国王はここで費用がかさむばかりで得るものがない山の調査を打ち切ったのだった。
やがてこの山の周囲には貧しい民たちが集い小さな村を作った。
その民たちは口を揃えて言う。
この山には精霊の乙女がいて、苦しむものを救ってくれる、と。
しかし誰も知らない。
その精霊の乙女とやらが、
一人ぼっちをこじらせた臆病な地球人であることは。
「結界に矢をしかけるの止めてください、まじで」