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00.プロローグ

【注意】表紙にも書いているように、本作は「秒速5センチメートル」の影響を受けていますが、二次小説ではありません。幼馴染と桜にまつわるオリジナルのラブストーリー、そのつもりです。

駅の反対側までわざわざ回り道をしてよかった。全体で見るとまだ早いが、何本かの桜の木は既に八分先あたりまで開いていて、白に近い薄桃色の花々が鮮やかに咲き誇っている。病院帰りの重い身体を動かして、ちょうど見ごろを迎えた樹の下のベンチに腰を下ろす。暖かな日差しが眠気を誘うが、それに抵抗して空と花を見上げる。


毎年この季節になるとこの公園に足を運んでいる。桜は去年も同じように艶やかな光景を見せてくれた。やはりここの桜は特別だ。例年は家族とここに来るのが当たり前だったから、一人でここの桜を見るのは随分と久しぶりだということに気が付いた。前に一人で来たことがどれだけ前だったのか、それを思い出すのがもう難しい。


朝、自分で作ったおにぎりをカバンから取り出して口に運ぶ。桜花を見上げながら食べるおにぎりはまた格別だ。蒼天に万朶ばんだの桜が映える。


その時花びらの一枚が落ちてきて、まるで吸い寄せられるように膝に乗った。そのひらひらと落ちる様を見た時、急に昔聞いた言葉が脳裏に甦った。


『こんなになにもかもが満ち足りているのに、どうしてこんなに悲しいんだろう』


そう、今の自分はこんなに満たされている。気になるのは病院ぐらいだが、あれだってもう大丈夫と、医者が太鼓判を押してくれた。それなのにどうしてこんなに悲しんだろう。

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