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あなたの×××を吸いたい!  作者: ブーカン
最終章 あなたの×××を吸いたい
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第八十九話 ご来光

三穂田みほたさん!」


 ヘリから颯爽さっそうと降り立った三穂田さんに駆け寄る姉ちゃん。場の他のみんなも、彼を取り囲むように歩み寄ってきました。


「ありがとうございますッ!」

「いや~、笹原さんは礼儀正しくて好感高いよね~」

「笹原さん『も』ですよね? ニポンゴタダシクツカテーネー」


 「それより」と、突然カタコトになったソフィーさんは、また突然元に戻り、頭上のヘリを見上げます。


「強くんは? すいさんは? アレに乗ってるんです?」

「いや。ふたりは今、山頂付近にいるよ~」


 「でも」と姉ちゃんが口を挟みます。


「あのヘリに……。セナートスのリーダーが乗ってたらしいんですけど、三穂田さんが倒したんですか?」


 姉ちゃんの問いにみんながヘリを見上げますが、それを合図にしたかのように、ヘリは滞空をやめ、さらにふもとの方へと遠ざかっていきます。巻き起こる風にカウボーイハットを手で抑えながら、三穂田さんは首を振りました。


「長い赤髪の男なら、逢瀬くんたちにお任せしてきたよ~」

「エェッ?!」


 姉ちゃんは三穂田さんに詰め寄ります。三穂田さんもたじろぐくらい、押し迫ります。


「セナートスってとんでもなく強いんです! しかもソイツ、リーダー格なんですよッ! もしかしたら、強も、すいちゃんも……」

「大丈夫だよ~。最高のアドバイス、してきたから~」

「最高の……?」

「そうそ。それさえせば、彼らふたりにはボクも敵わない――最高のアドバイス」


 そう言って三穂田さんは姉ちゃんにウィンクをしました。不精ヒゲのおじさんのウィンク、キモチワルイですね。

 呆気にとられる姉ちゃんの身をゆっくりと離すと、三穂田さんは周りを見渡しました。


「でも、結界は破られちゃったみたいだね~……」


 「そうなのよね」と、ソフィーさんが言葉が引き継ぎます。


「さっき、林に赤毛ともつれこんだとき、呪法の効果範囲に入ったはずだったのに何も感じなかったわ。この山の結界は……すでに破られてる……」

「じゃあ、他のセナートスも……」

「強くんたちのところに、押し寄せるでしょうね……」


 姉ちゃんは目を大きくみはり、「早く行かないとッ!」と叫びました。場の全員がうなずきます。


永盛ながもりく~ん。いる?」

「はい、いるっス!」

「永……盛……?」


 三穂田さん以外の全員が、声のした方に目を向けます。そこには黒髪ショートカットの女性が、恐縮した様子で立っていました。忽然こつぜんと場に姿を現した彼女は、手にトンカチみたいなものを持っています。物騒ですね。


「ちゃんとお手伝いしてた~?」

「もちろんっスよ! こうね、気付かれないようにパンチやキックを逸らしたり、これで頭殴ったり……」


 頭上に疑問符を浮かべるメンツ、身振り手振りで「お手伝い」とやらの成果を熱く語る永盛さんを余所よそに、三穂田さんは「よし」と笑みを浮かべました。


「キミならセナートスに気づかれずに山頂に直行できる。先行して、逢瀬くんたちのフォローに入ってあげて~」

「了解っス~」


 そう言うと、永盛さんの姿はまた、現れたときのように忽然と消えました。それを見届けた三穂田さんは、姉ちゃんたちに目を配ります。


「では、ボクたちも山頂に向かいましょう~。ボクのアドバイスを逢瀬くんたちが実行しても、この山の広さでは取りこぼしもあるだろうから、減らせるだけ数を減らしながら、ね~」


――三穂田さんが……、強とすいちゃんをふたりきりにしても大丈夫と言いきる、「アドバイス」……?


 姉ちゃんは思わず、山頂の方へと目を向けていました。夜の闇の中、木々の葉に隠され、もちろん山頂の様子なんて見て取れるはずがありませんが、目を向けずにはいられなかったのです。

 ですが、ちょうどそのとき、まさに姉ちゃんの視界の真ん中一点で、強烈な金色の光が瞬きました。


「なに……、アレ? 電灯……? エッ?!」


 姉ちゃんが言葉をあげるとすぐ、その光は一気に光量を増しました。


「うゥッ?!」

「まぶしッ!」


 姉ちゃんの視界に映る色は、白と黒のみ。方向感覚さえも失いそうなまばゆい白の光と、それが作る影。影のおかげでようやく、ソフィーさんや三穂田さんの姿がそこにあると認識できるくらいです。

 あまりにまぶしい光に、みんなは顔を手で覆っているようです。


 ほんの少しの間、そうやって光にさらされていると不意に照射は止み、周囲に暗闇と静けさが戻ってきました。


「終わった……」


 そばで三穂田さんがつぶやく中、姉ちゃんはふと、後頭部に鈍い痛みを感じました。


「なに? ちょっと何か…‥、痛い?」


 何か石つぶてでもぶつけられでもしたのかと、姉ちゃんは背後に振り向きます。すると視線の先、林の中から、ガサガサと葉を鳴らして何かが近づいてくる気配を姉ちゃんは感じ取りました。


「だ、誰ッ?!」


 姉ちゃんの問いに、「何か」は姿を現すことで答えました。


------------------------------------------------


「逢瀬くん、本当に大丈夫~?」

「もう、なにも、なにも……。うぇっ! 出ませんわッ! クッソぉ! 頭イタぁあァぁイッ!」

「まあこれは、ボクも結構キツイね~。うぉぇっへっへ~……」


 僕はみぽりんに小脇に抱え上げられながら、すいのところを目指していた。

 「鳴らし山」の結界呪法で僕は、とんでもない頭痛と吐き気に依然としてさいなまれている。でも、みぽりんの移動の速さは、すぐにでもすいのところに行けるのだと、僕の失いかけてしまいそうな意識を何度も取り直してくれた。


ババババ……


 頭痛がために頭を震わせていた僕は、はじめそれが耳鳴りか空耳の類かと思った。それほどに僕の感覚器官はしっちゃかめっちゃか進行中。けれどみぽりんが「ヘリだ」とつぶやいたことで、それが僕の幻聴でないことが判った。

 僕はもう一息、気を保つために強く頭を振って、上空を見上げる。


「目的地は、ボクたちと同じみたいだね~」


 夜空に溶けこむような真っ黒い影が、爆音と爆風を伴って僕たちの頭上に現れる。


「みぽりんッ! 飛んでッ!」

「えぇ~? どうして~?」

「いま、あんなもので山の上に行くのなんて、セナートス以外いないでしょッ! 飛び移ってくださいッ!」

「そんな、ボクだってなんでも出来るってわけじゃ……」


 そう言いながらもみぽりんは足を踏み切って、ロケットの打ち上げよろしく空へと飛び出した。もちろん、僕を伴って。

 まっすぐに空中を上っていくカウボーイハットのおじさんと僕。そこで僕は気が付いた――。


「あれ、頭痛……。痛くなくなってますッ!」

「ああ~……なるほど~。ドームか、スフィアタイプの領域なのね~」


 みぽりんの言葉に、頭がハッキリしてきた僕にも合点がいった。「鳴らし山」にかけられていた呪法は、なにも完全に山を――上空も含めて――覆っていたわけじゃないんだ。ソフィー兄にソフィーと詩織が作った呪法みたいに、ドーム型の効果範囲だったんだ。

 そして――。


 僕は最後の喝をいれるように頭をひと振りすると、目前に迫るヘリコプターの機体をニラみつけた。

 間違いない。ドーム型だと知ってて、こんなやり方で近づくこのヘリには、セナートスが乗っている!


「取りつくよ~」

「ハイッ!」


 みぽりんは僕を抱えたまま空いているほうの手を伸ばし、ヘリの「足」を掴んだ。少しだけヘリの機体が傾く。

 しかし……高い。夜とはいえ、月の明かりも星の光もある。それらが照らし上げる、鬱蒼うっそうと広がる眼下の山々の景色に、僕はひとつだけ身震いをした。


ガァンッ!


 頭上の音に、ヘリの機体に目を戻す。そこでは機体の横腹の扉が開かれ、ひとりの人物が僕とみぽりんを憎々し気に見下ろしていた。


「これはこれは、要らぬ来訪者ですねッ!」


 言葉の端々と口の動き、表情で、そんな風なことを言っているようだ。ヘリの音がうるさくて、すべてを聴き取ることは僕にはむずかしい。

 

「要らぬ来訪者なのは……お前の方だッ!」


 僕は叫んだ。男に向かって叫んだ。

 赤く、長い頭髪を風になびかせて僕たちを見下ろす男。その顔は以前に撃退した赤毛そのものだったが――、別人だ。この男から感じる威圧感はアイツをはるかに上回る。どういうわけだか知らないが、同じ顔をした別人だ。

 あと、すでに真っ裸。あの、不可思議なモザイクがテラテラと大事な部分でちらついている。こんな変態、セナートス以外に考えられない。

 男は僕を一瞥いちべつして、冷ややかな笑みを浮かべた。


「またキミか! 死に急ぐものだぞッ! 能無しの一般人の分際でッ!」


 僕は「うるっせぇッ!」と切り返した。


「ただの能無しじゃないぞ……。僕は『ダイチ』の――逢瀬愛の息子だッ! 能無し一般人だけど、お前なんかにはゼッタイに負けないッ!」

ご感想、ご罵倒、ご叱責、お待ちしております!

もちろん大好物は褒めコメです!

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