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あなたの×××を吸いたい!  作者: ブーカン
第六章 分かたれて恋の迷宮
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第四十五話 零落の園――序章――

 土曜日。僕たち八人は、カルチャーランドの正門前に立っていた。


「わあ~っ! オメガッ! すごいすご~い」

「待ちな……アルファ。まずは……受付……」


 うんうん……。はしゃぐアルファに、それをなだめながらも嬉しそうなオメガさん……。これは正しい姿です。


「ひゃぁ……懐かしッ。あの門のかざりってあんなボロかったんだ~……」


 正門ゲートを見上げ、懐古かいこしながらちょっとディスる詩織しおり。まあ、これもなんとか……正しい姿です。


「企業努力が足りないんじゃないかな、あの装飾そうしょく。ほとんど取れかかってるよ。だから税金泥棒なんて呼ばれるんだよ」


 遊園地を前にして公共事業の批判ひはんを始める小学四年生……。拳一けんいち、お前は間違っている。


阿武隈あぶくま、お前にツヨポンはやる。だから俺と笹原をペアにしろ……」

切田きりた……おぬしもワルよのう……」


 すいと切田、意外な取り合わせがなぜか意気いき投合とうごうしてる……。その密談みつだん、まるこえ!


つよしく~ん……。あのしげみ、なんだか刺激的なアトラクションがありそうじゃない? ふたりで行ってみましょうよ」


 あるかッ! なんで入場前の丸っこい植木の中にアトラクションがあんだよっ! ロシアではジェットコースターが葉っぱに突っ込んだりすんのかッ?!


 ……ヤバい。

 当日、この場に至って気付いたぞ……。コレ、今日僕、ツッコミ過労死するんじゃないだろうか。


 ひとまずも僕たちは、受付を済ませることにした。それぞれ、正門横の受付ブースに向かう。


「いらっしゃいませッス~。回数券、何円分ッスか~?」


 このカルチャーランド、「入場料」という営業形態ではない。十枚つづりの「回数券」を購入し、それぞれのアトラクションでそれを必要な分だけ分割して使っていくのだ。このスタイルで遊園地というものを学んだ水無みずなしっ子の僕は、とある一大テーマパークの「パス」という概念がいねんに最初は戸惑ったものである。


「このチケット使いマース」

「うお、可愛いお嬢ちゃんッスね~。……はい、二人分。三千円分ずつっス。お兄ちゃんと遊びに来たんスか?」

「違う! みんな遊びにキタんだよ!」


 アルファの日本語も拳一の協力もあってか、日常会話はできるくらいまでになってきている。しかし、この子マジ天使だな。泣けてくるわ。


「うお~。これまた大勢ッスね。次のペアさん、どうぞ~」

「お願いします~」

「休日にも関わらずこの閑散かんさんとした客入り状況、スタッフとしてはどうお考え……イテェッ!」


 メモ帳片手にスタッフのお姉さんに詰め寄っていた拳一は、例のごとく、姉から鉄拳てっけんをお見舞いされた。


「いいから早くもらえ!」

「姉ちゃん……。ぼくは純粋に夏休みの宿題に取り組んでいるだけなのに……」

「たはは。面白い人たちッスね。次のペアさん~」


 すいと切田が並んで受付に立つ。まだその珍しい取り合わせなのか。


「……お姉さん、何て名前?」

「ウチっスか?」


 スタッフのお姉さんは胸元のプレートをかかげてみせた。


「『ひーみん』?」

「そうッス! ココ、カルチャーランドではスタッフは愛称で呼んでもらうッスよ! ゲストに親近感を持ってもらうッス!」


 なんだ? その「焼石やけいしに水」的な営業戦略は……。僕の記憶では、昔はそんなのなかったな。


「ひーみん! ひーみん!」


 すい、やっぱり、語感ごかんが気に入ったのね……。


「はいはい、なんでしょーッス!」

「人を連れ込める場所……ある?」

「誰にもバレずに……コッソリと、さ」


 急にあくどい顔をして、受付窓に顔を寄せるすいと切田。


「……はい。三千円分ずつお受け取りくださいッス。次のペアさん!」

「あ、ちょっと、ひーみん! ゲストが親近感もってたずねたっていうのに!」

「いいからどいて、すい。そういうのは親近感以前の問題……」


 僕はすいと切田をのけながら、ソフィーと受付前に並び立った。


「さて、お次の新婚さんは~と……ッ?!」

「おねがいしま~す」

「どの部屋にする? 強くん。天井が鏡のとこ?」

「元ネタが分かんねえよ!」

「はい、三千円ずつっス~……。お楽しみくださいっス~」


 僕は回数券を受け取ると、受付を離れた。僕たちの番になってお姉さん……「ひーみん」のテンションが下がっていたのが少しだけ気にかかったが、この珍客ちんきゃく万来ばんらいに疲れ切ったのだろう。何も言うまい。


 さて、やっとこ、入場だ……。


「アルファ、アレ乗りたーい!」


 アルファは入園するなり、カルチャーランド内でも目立つアトラクション、観覧車を指差した。


「おおう……高そう……ですね……」

「オメガさん、高いところダメなの?」

「好きでは……ないです……」


 まあ、僕もそうだな。


「アルファ」

「ん、なーに? 強クン」

「あれは最後あたりに取っておいて、まずはあんなのどうかな?」


 そう言って僕は、正門から進んですぐ……目立つ位置にあるメリーゴーラウンドを見た。


「あ、あれは……」

「『ウマ』だよ。アルファちゃん。日本語であの動物は『ウマ』っていうんだ。馬車もあるから一緒に乗ろうか。お兄さんも一緒に、さあ」


 急に取り澄ました拳一が割り込んでくる。なんだこのガキ。

 ま、最初はオメガさんと、っていう僕の計らいもとりあえずは実現したからいいか。


「おぉ~っ! 馬がおるぞ!」

「よっしゃ! ツヨポン勝負だ!」


 えっ! 勝負って……?

 すいと切田に引きずられて、僕もメリーゴーラウンド内に入場した。


一枠いちわく一番~。キリタホマレ~」

二枠にわく二番~。サイレンスイスイ~」

「え……?」

「『え?』じゃないよ、ヨッシー! 馬の名前!」


 すいのやつ、変なこと覚えやがって……。テレビの競馬中継のせいか?


三枠さんわく……三番……。ツヨシオウセ~……」

「さあ、各馬いっせいに……」

『それでは、スタートですッ!』

「スタートぉ!!」

「おっしゃぁ!」


 スタッフ・アナウンスの声に、勢いづくすいと切田。


タタタンタラララ~


「パカラッ、パカラッ!」

「ドドドド! 捉えるッ!」


 ゆるやかなBGMが流れる中、その音楽にそぐわない馬のひづめの口マネをする、僕の前方のふたり。お前ら元気だな。


「や~。アホやってるな~」

「強く~ん。目線くださーい」


 外では詩織とソフィーがふたりしてスマホを構えている。高校生にもなってメリーゴーラウンドって、よく考えたらなんかちょっと恥ずかしいよ……。


「ヨッシー! 本気出して!」


 すいが腰を浮かせた本格スタイルのまま、振り返って僕に言う。なに? そんなに競馬好きなの?


「本気出してもどうにもならんたぐいだよ、これは! 馬の位置変わんねーからッ! 固定されてるからッ!」

「なん……だと……?!」

「今気付いたの?!」

「いや、でも願えば……きっとサイレンスイスイ号は……願いは叶うッ!」

「お前の願い、叶わねーからッ!」

「む、無念……」


 ドサリ、と腰を下ろすすい。


「キリタホマレの独走は揺るがない……。ふははは!」


 さらに前方で勝利の高笑いを寄越してくる切田。

 なんだコイツら。


『みなさん、楽しめましたか~? ゆっくり下りてくださいね~』

「グルグル楽しかった~。ね、オメガ」

「うん……そうだね……」

「乗り心地サイアクの馬車だったな……。もっとカスタマーサティスファクションを意識した内装に……」


 アルファとオメガさんの兄妹はメリーゴーラウンドを楽しんだ様子だ。拳一はもう知らん。


「俺、一位な」

「くそぅ……切田ごときが……」

「……君らアホだよね」


「やあ、お帰りみんな~」


 外で待っていた詩織とソフィーが迎えてくれる。


「いかがでしたか、強くん。馬乗りになった感想は」


 ちょっと鼻息荒く、マイクを向けるような仕草をしてくるソフィー。


「乗馬ね? 乗馬だよね?! もうソフィーそんなんばっかだね!」

「セクハラが今日の私のメインディッシュです」


 キミはいつでもセクハラ発言がメインディッシュでしょうが。


「せっかくなんだから、ソフィーも何か乗ったら?」

「う~ん……。私はあんまり、興味出ないわね。詩織さんは何かないんですか?」

「うっふっふ~」


 あ、詩織……なんか悪い顔してる。


「じゃあ次は、アレ乗ろうよっ!」


 そう言って彼女が指差したのは……ジェットコースターッ! こ、コレは……。

ご感想、ご罵倒、ご叱責、お待ちしております!

もちろん大好物は褒めコメです!

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