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あなたの×××を吸いたい!  作者: ブーカン
第六章 分かたれて恋の迷宮
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第四十四話 ちょっと成長が早すぎるんですけど、これが才能の差ってやつですか

「あ~……。逢瀬おうせくん、おかえり~。どうだった?」


 僕がワワフポ事務所内に入ると、みぽりんは迎えの言葉を……机に突っ伏しながらかけてきた。


「いや、どうって……恥ずかしさしかなかったですよ」


 今日の呿入きょにゅうけん鍛練たんれんの内容は、小学生みたいな半袖短パンでランニング二十キロ。いや、これ比喩ひゆとかじゃなくて、完全に小学生の半袖短パン。サイズも小学生サイズ。いくら小柄な僕でもピッチピチやぞ。


 これでワワフポ社から町に出て、市街地をぐるりと囲むように四時間ほどかけて走ってきたのだ。

 当然、道ゆく人はみんな僕を見る。運転中のおじさんおばさんも見る。散歩中の犬も見る。警察官に止められること三回。「ほどほどにしなよ」と、アドバイスもいただけました。


「楽しかったでしょ~?」

「楽しいわけあるか!」

「あれ~? スタミナ向上はもちろん、これは精神力が鍛えられるんだけどね~」

「鍛えられるかッ! 変なチカラは高まりそうだがなッ!」


「プッ……強さん……変態みたい……」


 オメガさぁぁぁぁん! 誤解だぁぁぁぁああ!


「強クン。変なカッコ~」


 ほら、みろぉ! アルファがこっち指差して屈託くったくなく笑ってんぞッ!

 これが日本の文化だと思われてみろ! 外交問題にどう責任取るつもりだ!


 僕はみぽりんのデスクに歩み寄ると、バンッ、と机をたたいた。


「みぽりん……あんまり言わないようにしてましたけど、僕、ホントにこれで強くなってます?」

「なってるよ~」

「ホントにッ?!」

「う~ん。自分じゃ判らないかな~……」

「こんなことばっかりやらされてたんじゃ判りませんよッ!」

「逢瀬くんって、二十キロも走れる人だった?」


 あ……。言われてみると、確かに……。

 今日の鍛練内容を聞いて、まず先に「なんでこの服装ッ!」と盛大にツッコみを入れていた僕。その距離数自体はさほど気にならなかった。

 今も、走りきって疲れは感じてるけど、体をほどよく動かした……心地よい疲れだ。

 僕は……一カ月前とは変わってきている……?


「まあ、でも体力的には高校生の運動部員レベルになったくらいだけどね~」

「人がッ! 感動してるのにッ! 余計なチャチャをッ! 入れるんじゃないよッ!」

「うぇへっへっ~。逢瀬くん、反応が面白いよね~」

「面白がらないでください!」

「もうそろそろ、行けるかと思うよ~」

「行ける……?」

「なんだっけ……。なんとかかんとか山。来週か……再来週くらいには~」


 そうだ。

 僕が呿入拳をみぽりんに師事しじすることになったキッカケ……。僕の父親、「ダイチ」を探る次の手がかり、「鳴らし山」。すいが屁吸へすいじゅつの修行をしながら育ったという場所……。

 現在、その山にはよこしまな人物や無関係の人間が入りこまないよう、すいの師匠の遺物いぶつとしての呪法じゅほう結界けっかいが張られているらしいのだ。その結界を突破するために、僕には精神力の向上が必要だったのだ。


「体力より、精神力の伸びが目覚ましいよね~。思春期だし、ガールフレンドたちのおかげかね~」

「う~ん……。精神力ですか……。そっちこそ自覚はないですけどね……」

「あ、そうだ。なんとかかんとか山に行くのは再来週ってことにして、来週の学校の休みの日、こんなの行ってきたら~?」


 そう言うと、みぽりんはまるでマジックのように、何もない手に突然、紙切れを出現させた。

 僕はそれが一体なんなのか、近づいてよく見てみる。


「カルチャーランドのチケット……ですか?」

「うん。四枚~。ワワフポ新聞勧誘のおまけのあまり~。期限近いからもう配れないんだよね~」

「カルチャーランド……」


 カルチャーランドとは、この水無みずなし市内にある市営の遊園地だ。

 これがまあ、レトロ感満載の遊園地で、お世辞せじにも人気のテーマパークというわけではない。だが、市内で育った人間はだいたい行ったことがあり、時々、懐かしい場所としてこの遊園地の話題に花が咲いたりする。

 なんていうんだろう……ノスタルジーの顕現けんげんとでもいうのか……。

 まあ、とにかく水無市の遊び場のひとつだ。かくいう僕も、回数は少ないけれど、小学生くらいに母さんや、詩織一家と遊びに行った思い出がある。


「一枚で二名分だから、八人だね~。オメガくんとアルファちゃんも一緒に行っておいでよ~」

「わぁ。アリガト、みぽりん」


 チケットを一枚受け取り、顔を輝かせるアルファ。オメガさんもそのガリガリの顔に嬉しそうな表情を浮かべている。

 チケットは、あと六人分か……。


------------------------------------------------


キーンコーンカーンコーン


 チャイムの音が一学期の期末テストの全行程こうていが終了したことを告げた。


「ひぇいぇ、ひえぇい!」

「解きッ! はなッ! たれたッ!」


 同時に、クラス内の一部の男子が発狂はっきょうの声をあげる。きっと、テスト内容がよろしくなかったんだろう。


「おいおい、お前ら。夏休みまではまだ早いぞ。はっちゃけすぎるなよ、ピピポーッ!」


 アンタが一番訳わからんはっちゃけ方してますよ、フクちゃん先生……。


「特に、カレシカノジョのみなさん方。はっちゃけすぎるなよ、クピポーッ!」


 先生の注意の声に、男子連中の怨嗟えんさのこもった視線が僕を襲う。


 そう。僕とすいが付き合っているなどというデマを、依然いぜんとして僕は放置中。もうね、説得力皆無かいむですよ。こう四六時中すいと一緒だと。

 一学期も終わろうとする中、実のところはクラス内でもちらほらとカップルが出来上がっているようなのだが、こういったやっかみを受けるのは、クラス内でも一番最初にウワサが確定された僕とすいなのであった。


「今回はパーフェクトッ・ブルーッ! 確信あるね! やっぱ勝負すればよかったッ!」

「すいちゃん、警戒してまた『強をかけて勝負だ!』とか言わなかったもんね」

「私はもう死にそうでしたけどね……」


 帰宅間際、いつものメンバーは僕の机のまわりに集まってテストの感想やらを話しこんでいた。

 ソフィーのそのマメみたいな目、久しぶりに見たわ。


「じゃあさ、テストも終わったことだし……今度の土曜、これ行かない?」


 僕は三人に向かって、例のカルチャーランドのチケットをかかげる。


「あ、カルチャーランド?」


 真っ先にその紙切れの内容に気付いたのは、やっぱり生粋きっすいの水無っ子の詩織しおりである。


「いいね。ひさしぶりだな~……。このチケット、どうしたの?」

「みぽりんにもらった」

「え、カルチャーランドってなになに?」


 すいが興味津々(きょうみしんしん)といった様子で目を輝かせている。


「遊園地だよ~」

「おとなの……「言わせないよ?!」


 僕はソフィーの暴走をなんとか寸前で止めた……と思う。


「ゆうえんちって……面白い?」

「う~ん……どうだろう。子どもの頃はすっごい楽しかったけどね~」

「楽しいんじゃない? すいはああいうところ、多分行ったことないでしょ。ソフィーは?」

「私もテーマパークのたぐいは行ったことないわね」

「じゃあ、きっと楽しめるよ、それなりに。テストお疲れってことで、どうかな?」

「さんせーい」

「いょぉし! ヨッシーと遊園地デートじゃ!」

「ニェプ! 強くんと遊園地ふぁっ……「言わせないよ?!」


 詩織が僕の手から一枚、チケットを抜くと、それをシゲシゲと眺める。


「二名分……ってことは、三枚あるからあとふたり、行けるのかな?」

「うん。あ、これとは別に、オメガさんとアルファも行くと思うから」

「……ね。これって拳一けんいちも行っていいかな?」

「拳一?」


 僕がき返すと、詩織は「うん」とうなずいた。


「アイツ、なんかカルチャーランド行きたがってたんだよね」

「あの小憎こにくたらしい子がですか? 案外子どもっぽいところもあるんですね」

「いや、なんか『公営施設の零落れいらく現況げんきょうと税金のムダづかいについて』っていうテーマで夏休みの自由研究やりたいんだって」

「クソ小憎たらしいわね」

「それに、アルファちゃんいるならアイツも喜ぶだろうしね。なんだかんだ、この前は怖い思いさせちゃったわけだし……。私のチケットってわけじゃないけど、まあ、アイツの気晴らしにどうかなって」


 面倒見めんどうみいい姉だな。今、僕の中の姉ランキング一位は詩織だよ。

 あと、拳一は怖がってなかった。むしろ楽しんでたと思う。


「オッケー! ひとりは拳一くんで決定! あとひとり……」

「なになになに~?! もしかして……お呼びかな~?」


 僕たちに割り込んできたのは、切田きりただ。


「しおりん!」

「オッケー!」

「えっ?! えっ?!」

「らっ!」

「うぉう?!」


 詩織からこぶしを受けた切田はのけぞるが、その拳は早いだけで、彼にダメージの様子はない。

 その代わり……。


ゲェプ


 そう、ゲップです。


「あ、わりぃ。またもやレディたちの前……で……から……だが?」


 切田が立ったまま体を硬直させる。

 一方詩織は、キラキラと輝く赤い光を深く吸っている。


 可哀想かわいそうに切田はこのところ、こうやって度々(たびたび)、詩織の曖気道あいきどうの練習相手に(無断で無闇矢鱈むやみやたらに説明も受けずに)させられているのだ。「人のほうが実戦に近いしね」とは詩織の言葉。

 まあ、でもすいとは違って詩織がやっているのが丸わかりなのに、怒るどころか、ニヤニヤとした気味の悪い顔で毎回甘んじている切田も切田なのだけど。


「誘発打もだいぶ成功率上がってるね、しおりん!」

「うん、拓実たくみのおかげかな」


 ほら、また切田がニヤニヤしてる……。お前、オモチャにされてんだぞ……。


「最後のひとりは、切田を誘ってみようか」


 僕は、そんな彼を不憫ふびんに思って、そんなことを口にした。


「どう? 切田。土曜にカルチャーランドみんなで行くんだけど、お前も来る?」


 体を硬直させたまま、無言で小刻みに首を縦に振る切田。この顔は「ぜひとも!」と言っている……ような気がする。


「ええぇ、コイツがぁ?!」

「切田ごときがぁ?! この神聖なイベントに?!」


 すいとソフィーがあからさまな非難の声を上げる。


「ちょっと君ら、扱いひどすぎでしょ。日頃のおびだと思ってさ……」

「まあ……そうだね。すいちゃんも、アタシも、拓実にちょっとひどかったかな」

「プスープスー」


 すい、とぼけるな。あと、口笛ふけてないぞ。


 というわけで土曜、僕たちはカルチャーランドに遊びにいくことにした。

 図らずも男女四人ずつ……。あれ……グループデート? 的な?

ご感想、ご罵倒、ご叱責、お待ちしております!

もちろん大好物は褒めコメです!

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